学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅴ(施工) 問24
問題・正答・学習用解説
問題
建築工事に関する用語とその説明の組合せとして、最も不適当なものは、次のうちどれか。| 用語 | 説明 | |
|---|---|---|
| 1. | 歩掛り | 建築の各部分工事の原価計算における原単位的な概念で、部分工事量の1単位当たりの標準労働量、標準資材量等のこと |
| 2. | クリープ現象 | 材料や部材に一定の荷重が持続することによって時間とともにひずみが増大する現象 |
| 3. | スライディングフォーム工法 | 構造物を解体しないで、機械又は人力によって水平移動させ、あらかじめ造られた基礎の上に移す工法 |
| 4. | リフトアップ工法 | 地上等の低所であらかじめ組み立てた大スパン構造の屋根架構等をジャッキ又は吊上げ装置を用いて所定の位置まで上昇させ設置する工法 |
選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢3です。構造物を解体せず、水平に移動させて別の基礎へ移す説明は、曳家工法です。スライディングフォーム工法は、型枠を上へ滑動させながらコンクリートを連続して打ち込む工法で、動かしている対象が違います。
スライディングフォームでは、型枠内のコンクリートが形を保てる程度に硬化する進み方に合わせて型枠を上昇させます。新しいコンクリートを上から供給して、サイロや塔状の構造物などを連続的に構築します。すでに完成した建物全体を地面の上で滑らせる方法ではありません。
曳家は建物を一体として支持し、変形させすぎないように移動させる工法です。リフトアップは、低所で組み立てた屋根架構などを上へ持ち上げて設置します。名称に移動を連想する言葉があっても、型枠、既存建物、新しく組んだ架構のどれを動かすかを区別します。他の用語では、歩掛りは工事量当たりの標準的な資源量、クリープは荷重が持続することによる時間依存の変形を意味します。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:歩掛りを、工事量1単位当たりの標準労働量や資材量などとする本肢は適当です。例えばある工事を1m²施工するのに0.2人日の労働が必要なら、50m²では標準的に10人日と見積もれます。人日は、一人が一日働く量を単位にした表し方です。歩掛りへ工事数量と単価を組み合わせて費用を計算します。ただし、10人日が必ず10人で1日という工期になるわけではなく、作業の順序や同時に入れる人数などの条件も関係します。
選択肢2
選択肢2:一定の荷重が長くかかると、時間とともにひずみが増えるクリープ現象の説明は適当です。ひずみは、元の長さに対する伸び縮みの割合など、材料の変形の程度を表します。コンクリートの梁は、荷重をかけた直後のたわみに加えて、その後も変形が増えることがあります。荷重が増えたから変形した現象や、乾燥により縮む現象とは区別します。長期間使う建物では、直後の強度だけでなく、時間とともに増える変形も考慮します。
選択肢3
選択肢3:建物を解体せず水平に移す説明は曳家工法であり、スライディングフォームとの組合せが不適当です。スライディングフォームは、コンクリートを打ちながら型枠を連続的に上昇させる方法です。型枠を動かす速度は、コンクリートが形を保てる硬化の進み方に合わせます。速すぎれば形が崩れ、遅すぎても型枠との付着などが問題になるため、供給、養生、計測を連続して管理します。「滑らせるもの」が建物ではなく型枠であることを押さえます。
選択肢4
選択肢4:低い場所で組み立てた大スパンの屋根架構などを、ジャッキや吊上げ装置で所定の高さまで上げて設置する説明は、リフトアップ工法として適当です。高所で多数の部材を一つずつ組む作業を減らし、地上に近い場所で施工しやすくする利点があります。一方、持ち上げる途中は完成時と支持条件が違うため、架構の変形や装置の荷重分担を管理します。複数の点で持ち上げる場合は上昇量をそろえ、過大なねじれなどを起こさないようにします。
周辺知識
施工用語は、言葉の印象だけでなく、対象と手順へ置き換えると理解できます。曳家では既存建物を支えて横へ移し、スライディングフォームでは型枠を上へ動かしながら躯体をつくり、リフトアップでは低所で組んだ架構を持ち上げます。何が動き、何がその重さを受けるかを確かめます。
動かす途中の部材は、完成後と同じ状態ではありません。屋根架構を吊り上げている間は、最終的な柱の位置とは違う点で支えることがあり、移動する建物も仮設の支持を受けます。工法を選ぶ際は、完成形だけでなく途中の安全性と精度を計画する必要があります。
歩掛りは作業に必要な資源量を見積もるための指標、クリープは時間が経つことで増える変形です。前者は工事量と費用の計画、後者は材料・部材の長期的な挙動に関係します。用語がどの段階の何を説明するかを整理し、小さな数量例や動作の説明へ置き換えることで、自分の言葉で区別できるようになります。