学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅴ(施工) 問25
問題・正答・学習用解説
問題
建築物の工事請負契約に関する次の記述のうち、民間(七会)連合協定「工事請負契約約款」に照らして、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢1です。天災による損害について、発注者と受注者が協議して重大と認め、受注者が善良な管理者として注意を尽くしていたという本問の条件では、発注者が負担します。発注者と受注者の共同負担とする説明が不適切です。
工事中は、未完成の部分や現場へ搬入した材料が存在し、台風などの影響を受ける場合があります。受注者に管理上の落ち度がある場合と、必要な注意をしても避けられない重大な損害の場合を、同じように扱うわけではありません。約款は、原因、損害の程度、受注者の管理状態などの条件に応じて負担を定めています。
善良な管理者としての注意とは、その仕事を担う者として通常求められる注意を尽くすことです。単に本人が気を付けたつもりという意味ではありません。保険による填補がある場合なども、約款の定めに従って処理します。他の肢は、施工中の保険、著しく短い工期の禁止、工事の大幅減少による受注者の解除権を述べています。災害という一語だけでなく、文章に示された条件と負担者を対応させる問題です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:本肢の条件を満たす重大な天災損害は、発注者が負担するため、発注者と受注者が負担するとする点が不適当です。受注者が必要な管理上の注意を尽くしていたことが前提であり、保護措置を怠った損害まで同じ扱いとは限りません。また、重大と認めるための協議など、約款の手順も必要です。双方が原因をつくっていないから自動的に半分ずつという推測をせず、この契約でどの条件の損害を誰が負担すると定めているかを確認します。
選択肢2
選択肢2:施工中の出来形部分と現場へ搬入した材料・機器等に火災保険または建設工事保険を付し、証券の写しを発注者へ提出する本肢は適当です。出来形部分は、工事のうち既に施工された部分です。完成前でも事故によって損害が生じるため、保険の対象と期間を確保します。保険を付けることは、現場の防火や保管の注意を不要にするものではありません。加入内容を示す書類を提出し、契約で求める対象が保険でカバーされているかを確認します。
選択肢3
選択肢3:工期を変更する場合も、通常必要な施工期間に比べて著しく短くしてはならないとする本肢は適当です。工事には、材料の製作、施工順序、コンクリートの養生、検査など、単純に人員を増やしても短縮できない時間があります。変更後の内容に対して無理な工期を設定すると、安全や品質、労働環境へ悪影響を及ぼします。着工時だけ適切ならよいのではなく、工事内容の変更や進捗に応じた工期の見直しでも、必要な期間を確保します。
選択肢4
選択肢4:発注者による著しい工事減少で請負代金額が3分の2以上減少した場合、受注者が書面通知により直ちに解除できる本肢は適当です。例えば当初9,000万円から3,000万円へ減れば、減少は6,000万円で、当初の3分の2に当たります。「代金が3分の2残る」ことと混同しません。大幅に仕事が減れば、当初予定した人員や機材などの前提が変わるため、約款は所定の解除権を認めています。自動的に契約が消えるのではなく、必要な通知を行います。
周辺知識
工事請負契約は、何をいくらでいつまでに完成させるかに加え、途中で事情が変わったときの取扱いも定めます。天災による損害、保険、工期の変更、工事量の減少などは、長い施工期間中に起こり得るため、あらかじめ責任と手続を整理します。
不可抗力の損害を判断するときは、原因だけでなく、受注者が求められる注意をしていたか、損害がどの程度か、保険で補われる部分があるかなどを確認します。災害があれば全て発注者負担、または常に折半という単純なルールへ置き換えないことが大切です。
変更の数値条件は、元の金額を基準に計算します。3分の2以上減少なら、残る額は当初の3分の1以下です。また、解除できる権利があることと、通知不要で自動的に終了することは違います。約款の文章では、誰が、どの条件で、どの手続により何をできるかを読み分けると、責任や権利の内容を理解しやすくなります。