学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅴ(施工) 問22
問題・正答・学習用解説
問題
耐震改修工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢4です。金属系あと施工アンカーの締付け方式は、所定の締付けトルクで締めて固着させます。ナット回転法を用いるという説明が誤りです。打込み方式を所定の位置まで打ち込む前半の内容は適当なので、後半の締付け方法を分けて判定します。
金属系アンカーは、孔の中で金属部分を拡張させるなどしてコンクリートへ力を伝えます。トルクは回す力の作用の大きさで、所定の値まで締めることで必要な拡張・固着状態をつくります。ナット回転法は、主に高力ボルトの締付けで回転角度を管理する方法であり、見た目が似たアンカーへそのまま流用できません。
あと施工アンカーは、施工日、径、仕様ごとにロットを分け、所定の引張試験で確認します。既存建物の改修では、取付け機械を固定する仮設アンカーでも主要な柱・梁を不用意に傷めない配慮が必要です。一方、増設壁を既存柱へ定着するための所定のはつりやフックの施工は、構造上の接合をつくる計画に基づいて行います。作業の目的とアンカーの方式を確認する問題です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:スリット切断機を固定するアンカーを、柱・梁へ打ち込まず、垂れ壁・腰壁側へ設ける本肢は適当です。耐震スリットは、柱と壁の間を所定の位置で切り離し、柱が短く拘束されるなどの不利な状態を改善するために設けます。工事の機械を固定するためだけに、重要な柱や梁へ孔を増やして傷めることを避けます。仮設固定でも構造への影響は残り得るため、支持する場所、機械の安定、切断後の納まりまで含めて計画します。
選択肢2
選択肢2:特記がないあと施工アンカーの確認を引張試験とし、1日に施工した径・仕様ごとにロットを構成する本肢は適当です。同じ日でも径や方式が違えば施工条件が異なるため、適切な単位へ分けて評価します。引張試験では所定の荷重に対して固着が保たれるかを確認します。試験対象を都合よく選ぶのではなく、定められた方法で抜き取ります。不合格が出た場合は原因を調べ、残りの確認や再施工など、所定の措置へ進みます。
選択肢3
選択肢3:増打ち耐震壁の鉄筋を、既存柱の主筋へ135度フックを掛けて定着する本肢の所定の方法は適当です。既存柱を必要な範囲ではつり、露出した主筋との納まりをつくって、新設壁の鉄筋の力を既存骨組へ伝えます。ただし、普通の接合面の目荒しで柱主筋まで無条件に露出してよいという意味ではありません。本肢は鉄筋の定着をつくるための計画された処置です。既存主筋を傷めず、必要なフック形状と新しいコンクリートの充填を確保します。
選択肢4
選択肢4:締付け方式の金属系アンカーをナット回転法で固着させる点が不適当です。所定の締付けトルク値まで締め付けます。打込み方式は所定の位置まで打ち込むので、前半は適当です。方式ごとに必要な拡張状態を得る手順が違います。高力ボルトのナット回転法で覚えた角度を、あと施工アンカーへ流用してはいけません。適切な固着工具を使い、孔径・深さ・清掃状態を整えたうえで締め付け、施工後の目視や打音など所定の確認を行います。
周辺知識
耐震改修は、新しい部材を増やすだけでなく、既存建物との力の伝達を整える工事です。増設壁では新旧を適切につなぎ、耐震スリットでは不要な拘束を切り離します。つなぐことと離すことは逆の作業に見えますが、建物を計画どおり変形させて地震力へ抵抗させる目的があります。
あと施工アンカーは固まったコンクリートへ後から固定するため、孔の状態と固着の手順が性能を左右します。金属系でも、打込み方式と締付け方式で使う工具や管理する量が違います。接着系なら材料の混合や硬化養生が加わります。アンカーという共通名だけで、全製品を同じ施工にまとめません。
既存部材へ行う孔あけやはつりには、必要な接合をつくるためのものと、機器を仮止めするだけのものがあります。目的に見合う位置と範囲を計画し、主要な鉄筋や部材を不用意に損傷させないようにします。施工後の試験も含め、新しい補強が既存の骨組と適切に働くことを確認することが重要です。