資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅴ(施工) 問21

問題・正答・学習用解説

問題

各部工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    銅板葺屋根に取り付ける軒樋については、耐候性を考慮して、銅との電位差が大きい溶融亜鉛めっき鋼板製のものとした。
  2. (2)
    防火区画の壁を貫通するダクトにおいて、防火区画に近接して防火ダンパーを設けるに当たり、当該防火ダンパーと当該防火区画との間のダクトは、厚さ1.6mmの鉄板で造られたものとした。
  3. (3)
    金属板による折板葺において、タイトフレームと受け梁との接合については、風による繰返し荷重による緩みを防止するため、ボルト接合とせずにすみ肉溶接とした。
  4. (4)
    軽量鉄骨間仕切壁内に配管する合成樹脂製可とう電線管(PF管)については、バインド線を用いて支持し、その支持間隔を1.5m以下とした。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢1です。銅板屋根の軒樋へ、銅との電位差が大きい溶融亜鉛めっき鋼板を選ぶことは、腐食を防ぐ考え方と逆です。異なる金属が水分のある環境で組み合わされると、電池のような作用によって、一方の腐食が促進されるおそれがあります。
銅と亜鉛では、亜鉛側が腐食しやすくなります。また、屋根と樋が直接接触していなくても、銅板上を流れた雨水が銅成分を運び、下流側の亜鉛めっきへ影響する場合があります。材料単体で耐候性があることだけでなく、接する材料と水の流れまで考えて組合せを選びます。
亜鉛めっきは、通常は鋼材を腐食から守るために使います。しかし、どんな金属と組み合わせても耐久性が向上するわけではありません。銅板屋根と軒樋には、腐食上適切な材料構成を採用します。他の肢は、防火区画とダンパーの間のダクトを所定の厚さとすること、折板支持部を溶接すること、壁内の電線管を必要な間隔で支持することを述べています。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:銅との電位差が大きいことを耐候性向上の理由にして、亜鉛めっき鋼板の軒樋を選ぶ点が不適当です。雨水が関わる環境では、銅との組合せによって亜鉛側の腐食が進むおそれがあります。屋根と樋の直接接触を避けるだけでも十分とは限らず、銅板を流れた水が下流の金属へ与える影響も考えます。めっき材だから常に腐食しないということではありません。屋根材、樋、留付け金物の組合せと雨水の流れを確認し、適切な材質を選びます。

選択肢2

選択肢2:防火ダンパーを防火区画の近くへ設け、その間のダクトを厚さ1.6mmの鉄板で造る本肢は適当です。防火ダンパーは火災時にダクトを閉じ、火炎などが区画を越えて広がるのを抑える装置です。ダンパーと区画の間が火災で簡単に破損すると、閉鎖しても区画の性能を保てないおそれがあります。その短い接続部分にも所定の構造が必要です。ダンパーが設置されているかだけでなく、位置、ダクトの材質・厚さ、周囲の貫通処理を一緒に確認します。

選択肢3

選択肢3:折板屋根のタイトフレームを受け梁へすみ肉溶接する本肢は適当です。タイトフレームは、折板の山形に対応して屋根板を支える部品で、風による吸上げなどの力を受け梁へ伝えます。繰り返しの風荷重に対して、接合が緩まないよう所定の溶接で固定します。すみ肉溶接は部材の交わる隅に溶接金属を設ける接合です。単に一部が付いていればよいのではなく、必要な溶接寸法と長さ、母材の状態、施工後の防錆処理などを確認します。

選択肢4

選択肢4:軽量鉄骨間仕切壁内のPF管を、バインド線で1.5m以下の間隔で支持する本肢は適当です。PF管は柔軟に曲げられる電線管ですが、支持しないままでは垂れたり動いたりして、配線時や壁の施工時に不具合を生じます。バインド線は固定に用いる線材で、管をつぶしたり傷付けたりしないように取り付けます。必要な曲げ半径やボックスへの接続も確認します。電線を通せる空間があることに加えて、その経路が安定して保持されることが必要です。

周辺知識

異種金属の腐食は、材料同士の組合せと水分によって生じる電気化学的な現象です。二種類の金属が電気的につながり、水が関係すると、片方が優先して溶けることがあります。屋根では雨水が上流から下流へ流れるので、接触部分だけでなく水が運ぶ成分の影響も考えます。
鋼材の亜鉛めっきは、鋼材を保護する有効な方法ですが、その効果は周囲の条件から独立しているわけではありません。銅などとの不適切な組合せでは、亜鉛が早く消耗する可能性があります。金属の種類、絶縁する納まり、水の排出経路を含めて耐久性を計画します。
各部工事では、一つの製品だけで性能が完成しない点も共通します。防火ダンパーは区画との間のダクトまで、折板はタイトフレームから受け梁まで、電線管は支持と接続まで確認します。材料が本来の役割を果たせるよう、その前後につながる部材との関係を追うことで、見えにくい弱点を防ぐことができます。