学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅴ(施工) 問20
問題・正答・学習用解説
問題
設備工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢2です。蒸気給気管の勾配は、原則として先下りが、先上りがです。本肢は二つを逆にしています。先上りでは、蒸気の流れと反対方向へ凝縮水を戻すため、先下りより急な勾配を確保します。
蒸気は配管内で熱を失うと水に戻ります。この水をドレンといいます。先下り配管は蒸気が進む方向へ管が下がり、ドレンも同じ方向へ流れやすくなります。先上り配管は蒸気が進む方向へ管が上がるため、水は重力によって逆向きに流れます。蒸気の流れに逆らって排水できるよう、より大きな高低差が必要です。
分数の勾配は、同じ水平距離なら分母が小さいほど急になります。水平8mなら、は100mm、は32mmの高低差です。ドレンが滞留すると、蒸気に押されて衝撃や騒音を生じる原因になります。他の肢は、梁の構造を損なわない配管位置、ラックの支持、雨水管への臭気逆流を防ぐトラップについて、目的に合う施工を述べています。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:梁を横断するPF管を多数まとめず、柱際から梁せい以内の範囲を避ける本肢は適当です。PF管は可とう性のある合成樹脂製電線管ですが、埋設すればその部分のコンクリートがなくなるため、構造への影響を考えます。柱に近い梁端には大きな力が作用しやすく、配管を集中させると必要な断面や充填性を損なうおそれがあります。電気的に適切な管を選ぶだけでなく、構造図や配筋と調整し、重要な部分を不用意に弱めない計画にします。
選択肢2
選択肢2:蒸気給気管の先上りを、先下りをとする本肢は逆です。先上りが、先下りがです。先上りでは、凝縮したドレンが蒸気と逆方向へ下り戻るので、急な勾配を設けます。例えば水平8mでなら、つまり100mmの高低差です。先下りなら同じ距離で32mmです。分母の250の方が数字として大きくても勾配は緩いことに注意し、蒸気と水がどちらへ進むかを考えて覚えます。
選択肢3
選択肢3:鋼製ケーブルラックの水平支持間隔を2m以内とし、直線部と曲り部などの接続部や端部に近い位置でも支持する本肢は適当です。ラックはケーブルの重さを受けるため、長い区間を支えずに置くとたわみます。曲りや分岐、端部は形状が切り替わり、局部的に不安定になりやすいので、等間隔の支持だけでなく必要な位置へ支持を追加します。通常の荷重を支える間隔と、地震時に横揺れを抑える耐震支持の区分は別に確認します。
選択肢4
選択肢4:屋外で雨水排水横主管を汚水排水横主管へ接続する本問では、雨水側へトラップますを設ける本肢は適当です。トラップは水をためた部分で気体の通り道を遮り、汚水側の臭気が雨水管を通って屋根などへ出ることを防ぎます。接続部の排水ますは点検や流れの切替えのためのもので、水封を持つトラップますと必ずしも同じではありません。実際の接続は地域の排水方式などの条件に従いますが、本問では接続する前提で臭気対策を判断します。
周辺知識
蒸気設備では、気体としての蒸気と、冷えて生じた液体の水を同時に扱います。蒸気を送ることだけを考えて配管すると、途中へドレンがたまり、衝撃や熱の伝わり方の不具合につながります。勾配とドレンを取り出す設備を組み合わせて、水を滞留させないことが必要です。
勾配は、水平距離nに対して高さが1変わることを表します。分母が小さいほど急で、先上りは先下りより大きく上下します。数字だけでなく、蒸気は進む方向へ、水は低い方へ流れるという関係を重ねて考えると、向きと勾配の組合せを理解できます。
設備工事は、建物本体との調整も必要です。電線管は構造部材の重要な断面を避け、ラックは重さと形状に応じて支持し、排水管は水を流しながら臭気の通り道を遮ります。空間に管が収まるだけでは完成ではなく、構造への影響、支持、水や気体の流れまで整えて施工することが大切です。