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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅴ(施工) 問13

問題・正答・学習用解説

問題

鉄骨工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    トルシア形高力ボルトによる本接合において、一次締付後に、ボルト・ナット・座金及び母材にわたりマークを施し、専用のレンチを用いてピンテールが破断するまで締付けを行った。
  2. (2)
    サブマージアーク溶接による完全溶込み溶接において、あらかじめ行った溶接施工試験により十分な溶込みが得られることを確認できたので、監理者の承認を得て、裏はつりを省略した。
  3. (3)
    受入検査における溶接部の外観検査は、特記がなかったので、表面欠陥及び精度に対する目視検査とし、基準を逸脱していると思われる箇所に対してのみ、適正な器具により測定した。
  4. (4)
    やむを得ず横向き姿勢で行う軸径16mmのスタッド溶接については、実際の施工条件に合わせた技量付加試験を実施できなかったので、スタッド溶接技能者の資格種別A級の資格を有する者が行った。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢4です。軸径16mmのスタッドを横向きに溶接する本問では、下向きを対象とするA級の資格だけでは対応できません。実際の条件で技量を確認できないままA級技能者へ任せるのではなく、横向き16mm以下を作業範囲に含むB級など、所定の資格・技量条件を満たす技能者が行います。
スタッドは、鋼材へ溶接して取り付ける棒状の部品で、鋼材とコンクリートの間の力の伝達などに使います。下向きでは溶けた金属が支持面上に収まりやすいのに対し、横向きでは重力で下へ流れようとします。機械の位置や溶融部の状態も変わるため、溶接姿勢は品質に直接関わります。
資格のA、Bという文字を一般的な成績の上下と考えず、それぞれの作業範囲を確認することが重要です。A級を持っているから全ての姿勢を施工できるとはいえません。技量付加試験や資格確認は、その工事の条件で健全な溶接を行えるかを確かめるものです。他の肢は、ボルトの締付け手順、試験に基づく溶接工程の省略、外観検査の方法として適切です。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:トルシア形高力ボルトを一次締付けし、各部にまたがるマークを付けた後、専用レンチでピンテールが破断するまで締める本肢は適当です。マークは、ナットの回転やボルトの共回りなど、締付け中に各部がどう動いたかを確認するために付けます。ピンテールはボルト先端の施工管理用の部分です。破断した事実だけに頼らず、マークの状態や余長など所定の検査も行います。一次締付け、マーキング、本締めという順番にそれぞれ意味があります。

選択肢2

選択肢2:サブマージアーク溶接で事前の施工試験により十分な溶込みを確認し、監理者の承認を得て裏はつりを省略する本肢は適当です。裏はつりは、裏側から不良になりやすい部分を除いて、裏溶接で健全な接合をつくるための処置です。本肢は、別の確認によって必要な溶込みが得られることを示した条件付きの省略です。機械溶接だからいつも省略できる、または見た目がよいから省略できるという意味ではありません。確認した施工条件を守って実施します。

選択肢3

選択肢3:受入れ時の溶接外観検査をまず目視で行い、基準を外れていると思われる箇所を適切な器具で測る本肢は適当です。表面の割れ、形状、余盛り、アンダーカットなどを確認し、必要な部分ではゲージ等で寸法を確かめます。外観検査は表面の状態を調べるもので、溶接内部に欠陥がないことまで全て分かるわけではありません。超音波探傷など、別に指定された内部の検査はその目的に応じて実施します。目視と測定を適切に組み合わせる取扱いです。

選択肢4

選択肢4:横向きの軸径16mmスタッド溶接を、技量付加試験を行わずA級資格者に任せる点が不適当です。A級は基本級で下向き、B級は横向き・上向きの16mm以下などを含む専門級です。本問の姿勢に対応する資格・技量条件を満たす技能者が施工します。横向きでは溶けた金属の流れ方が違い、下向きの施工実績だけでは同じ品質を保証できません。資格名の有無だけでなく、軸径と姿勢が資格の作業範囲に入ることを確認します。

周辺知識

鉄骨接合の品質は、適切な材料、施工方法、技能、検査によって確保します。高力ボルトは必要な締付け力、溶接は健全な溶込みと接合形状、スタッドは径や姿勢に合う施工能力が必要です。それぞれの接合が何によって力を伝えるかを考えると、管理項目の理由が分かります。
資格や事前試験は、ある条件で施工能力や工法の適合性を確認するものです。材質、径、溶接姿勢などが範囲外なら、以前の確認がそのまま使えるとは限りません。特に資格の級は、単純に文字の早い順に万能になるわけではなく、対応する作業範囲が定められています。
検査にも表面、内部、締付け状態などの違いがあります。マークは部品の回転を、外観は目に見える欠陥を、探傷試験は内部などの欠陥を調べます。一つの確認を通ったから他の確認が全て不要になるのではありません。省略が認められる場合は、その前提となる試験と承認を含めて理解することが大切です。