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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅴ(施工) 問12

問題・正答・学習用解説

問題

プレキャスト鉄筋コンクリート工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    プレキャスト部材の製造については、部材の大型化や輸送費の低減を図るために、工事現場に仮設の製造設備や品質管理体制を整え、第三者機関の認定を取得した仮設工場で行う計画とした。
  2. (2)
    プレキャスト部材に用いるコンクリートの空気量は、特記がなく、凍結融解作用を受けるおそれもなかったので、目標値を4.5%とした。
  3. (3)
    計画供用期間の級が「標準」の建築物において、耐久性上有効な仕上げを施すプレキャスト部材の屋外側の設計かぶり厚さは、特記がなかったので、柱・梁・耐力壁については35mm、床スラブ・屋根スラブについては25mmとした。
  4. (4)
    工事現場において、プレキャスト部材のエンクローズ溶接継手については、溶接後の鉄筋の残留応力が過大とならないように、同一接合部の鉄筋の溶接作業を連続して行った。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢2です。特記がなく、凍結融解作用を受けるおそれのないプレキャスト部材のコンクリートは、空気量を3.0%以下とします。本肢の目標4.5%は、この条件に合いません。現場打ちの一般的なAEコンクリートなどの空気量を、そのまま当てはめています。
微細な独立気泡は、コンクリート中の水が凍って膨張するとき、その圧力を逃がす空間として役立ちます。凍結と融解を繰り返す環境では重要ですが、空気の割合が増えると、同じ条件では強度に不利になる面もあります。使用環境と製造方法に合わせ、必要な性能を満たす空気量を選びます。
プレキャスト部材は、工場などで型枠、締固め、養生の条件を管理して製造します。本問は凍結融解のおそれがないという前提なので、3.0%以下の条件で判断します。工場製だから他の品質条件が不要になるわけではなく、製造体制、かぶり厚さ、現場での接合作業もそれぞれ確認します。材料の調合から部材製造、現場組立てまでの品質を一続きとして管理することが大切です。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:現場に仮設の製造設備と品質管理体制を整え、第三者機関の認定を得た仮設工場で製造する本肢は適当です。現場近くでつくれば長距離輸送の制限を減らし、大型部材の採用や輸送費の低減につながります。ただし、現場内でつくるというだけで工場と同じ品質を得られるわけではありません。型枠、材料、配筋、打込み、養生、検査などを管理できる体制が必要です。製造場所の利点と、必要な製造品質の確認を両立させます。

選択肢2

選択肢2:凍結融解のおそれがなく特記もない本問のプレキャスト部材では、空気量は3.0%以下です。4.5%を目標にする本肢は不適当です。空気量は、コンクリートの体積に対する空気の割合を示します。微細気泡には凍害への抵抗を高める効果がありますが、必要以上に増やせば強度へ影響します。一般の現場打ちコンクリートで覚えた目標を、工場製品へ一律に使わないようにします。部材の使用環境と適用する製造仕様を先に確認します。

選択肢3

選択肢3:標準の計画供用期間で、耐久性上有効な仕上げを施す本問のPC部材について、屋外側の設計かぶりを柱・梁・耐力壁35mm、床・屋根スラブ25mmとする本肢は適当です。かぶりは鉄筋表面からコンクリート表面までの距離で、鉄筋の腐食や火熱などから守る役割があります。設計かぶりには製造誤差への余裕も含めて計画します。部位、屋内外、仕上げの有無、供用期間で条件が変わるため、35mmや25mmを全ての部材へ流用しません。

選択肢4

選択肢4:エンクローズ溶接継手で、同一接合部の鉄筋を連続して溶接し、残留応力が過大にならないようにする本肢は適当です。エンクローズ溶接は、鉄筋端部の周囲を当て材などで囲って溶接する方式です。溶接した鉄筋は冷えると縮もうとし、その変形が周囲に拘束されると応力が残ります。同じ接合部で一部だけを溶接して長く中断すると、温度や拘束の状態が不均一になりやすいため、定めた順序と手順で接合部を施工します。

周辺知識

プレキャスト工法は、あらかじめつくったコンクリート部材を現場で組み立てる方法です。製造段階で品質を管理しやすい一方、輸送可能な大きさ、吊上げ、接合部の施工など、現場打ちとは別の条件を考えます。現場の仮設工場も、品質管理の体制を備えた製造場所として計画します。
空気量とかぶり厚さは、どちらも耐久性に関係しますが、働きは異なります。微細気泡は凍結時の圧力を緩和し、かぶりコンクリートは鉄筋を外部の影響から保護します。凍害の有無や仕上げの効果など、環境条件を踏まえて必要な値を選びます。
現場の接合では、工場で正しく製作された部材同士へ、力を伝えられる継手をつくる必要があります。溶接は局部を高温にして接合するため、冷却と収縮の影響も施工手順に関係します。製品検査に合格したことだけで完成建物の品質が決まるのではなく、運搬、建込み、接合まで適切に行うことが重要です。