学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅴ(施工) 問14
問題・正答・学習用解説
問題
鉄骨工事に関する次の記述のうち、監理者の行為として、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢2です。高力ボルト用の孔あけは、板厚にかかわらずドリル加工とします。板厚13mmを理由にせん断孔あけとし、ばりを除去しただけでは適切ではありません。13mm以下でせん断孔あけを認める扱いは、普通ボルトやアンカーボルト、鉄筋貫通孔などの所定の区分です。
せん断孔あけは、刃物やパンチで材料を押し抜くように孔をあける加工です。ドリル孔あけとは、孔の周囲に生じる変形や加工面の状態が異なります。高力ボルトの接合では、孔径や位置の精度、部材の適合が重要なため、所定の加工方法を守ります。表面のばりがなくなれば、加工方法の違いまで解消するわけではありません。
監理者は、完成した表面がきれいかだけでなく、必要な材料と工程が守られているかを確認します。塗装前に実物を検査すれば、後で隠れる鋼材や溶接部の状態を直接調べられます。ボルトを交換する場合も、接合部に合う種類と締付け方法で必要な張力を確保します。書類、実物、加工方法、接合状態を対応させて確認することが品質管理の基本です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:鉄骨製作工場で、施工者の受入検査時に監理者が実際に使用する製品を塗装前に直接検査する本肢は適当です。塗装後には、表面の細かな状態や溶接部の一部が見えにくくなります。必要な段階で実物を調べれば、寸法や接合部の状態を確認し、不適合があれば次の工程へ進む前に対応できます。別の見本製品が良好であることや、写真があることだけで、納入する全ての対象製品の確認を置き換えるわけではありません。検査時期と対象を明確にします。
選択肢2
選択肢2:高力ボルト孔を、板厚13mmを理由にせん断孔あけとする点が不適当です。高力ボルト用はドリル孔あけが基本です。普通ボルトなどの薄板に認めるせん断孔あけの条件を、別用途の孔へ広げてはいけません。ばりは加工で生じる端の突出物で、除去は必要ですが、それによって孔の加工精度や周囲の状態が全てドリル加工と同じになるわけではありません。孔径、位置、縁端距離、加工方法など、所定の条件をそれぞれ確認します。
選択肢3
選択肢3:専用締付け機を使用できないトルシア形高力ボルトの箇所を、適切な高力六角ボルトへ交換し、所定のナット回転法で必要な張力を確認する本肢は適当です。ナット回転法は、一次締付け後の回転量を管理してボルトを締める方法です。交換するボルトの種類と、その方法を適用できる条件を確認します。普通の六角ボルトへ変えればよいという意味でも、トルシア形を任意の工具で締めればよいという意味でもありません。接合性能が確保される方法を採ります。
選択肢4
選択肢4:所定の記載事項と押印を備えた原本相当規格品証明書で、鋼材の種類、形状、寸法を確認する本肢は適当です。原本相当とするための条件を満たした証明書によって、規格への適合と供給された材料の対応を確認します。単に出所の分からないコピーがあればよいわけではありません。また、証明書は材料の規格情報であり、工場加工後の寸法誤差や輸送中の損傷を全て確認するものではありません。書類と実物を照合し、必要な製品検査も行います。
周辺知識
鉄骨の品質確認では、材料が正しいことと、その材料が正しく加工されたことを分けます。規格品証明書は鋼材の情報を示しますが、孔の位置や溶接の出来栄えは加工後に確認する必要があります。正しい材料からつくっても、加工が違えば接合部の性能に影響します。
高力ボルト接合は、強い締付けで接触面に力を伝えさせる接合です。ボルトの種類、長さ、孔、摩擦面、締付け方法が一体で機能します。使う機械が入らない場合は、必要な性能を得られる所定の代替方法を選び、交換した部品に合う管理を行います。
加工の表面をきれいに整えることは大切ですが、それだけで必要な工程を省略できません。塗装も不良を隠すためのものではないので、所定の検査を先に行います。監理では、書類に規格が書いてあるか、実物がそれに対応するか、見えなくなる前に確認できたかをつなげて、設計図書への適合を判断します。