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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅴ(施工) 問7

問題・正答・学習用解説

問題

杭地業工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    セメントミルク工法による既製コンクリート杭工事において、掘削時の支持層への到達確認については、掘削機の積分電流計の値から算出したN値によることとした。
  2. (2)
    セメントミルク工法による既製コンクリート杭工事において、掘削時に支持層への到達確認の記録が取得できない杭については、施工前にあらかじめ定めた代替の手法による記録を到達確認の記録とした。
  3. (3)
    アースドリル工法による場所打ちコンクリート杭工事において、安定液は、ベントナイトを主体として、分散剤や変質防止剤等を加え、できる限り低粘性・低比重となるように配合した。
  4. (4)
    オールケーシング工法による場所打ちコンクリート杭工事において、トレミー管及びケーシングチューブの先端は、コンクリート中に2m以上入っていることを確認した。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢1です。杭が支持層へ達したかどうかを、掘削機の積分電流値から単純に算出したN値だけで判断する方法は適切ではありません。掘削時の電流値などの変化を、試験杭の施工状況や地盤調査結果、掘削土などと照合して確認します。
N値は標準貫入試験で得られる指標で、所定の器具を土へ30cm打ち込むのに必要な打撃回数です。一方、掘削機の電流は、回転するオーガーを動かす際の抵抗などに関係します。土の硬さ以外にも、機械や掘削速度、施工条件に左右されるため、電流を一定の換算だけでN値へ置き換えることはできません。
試験杭などで、予定の支持層へ近づいたときの電流変化や掘削土を地盤調査と対応させ、本杭の管理基準を定めます。記録が取れない場合の代替方法も、施工後に都合よく考えるのではなく事前に定めます。杭工事は完成後に地中を直接見にくいため、その場で深さや状態を確かめ、後から検証できる記録を残すことが大切です。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:積分電流値からN値を算出して支持層到達を判断する点が不適当です。N値は標準貫入試験の打撃回数であり、掘削機の電流と同じ測定値ではありません。電流値や積分電流値は掘削抵抗の変化を知る資料として使い、地盤調査や試験杭の記録、掘削土などと照合します。例えば電流が増えても、それだけで設計が求める厚さの支持層へ入ったと確定するわけではありません。深さと土質を含め、事前に定めた基準で総合的に確認します。

選択肢2

選択肢2:支持層到達の通常の記録が取得できない場合に、あらかじめ定めた代替手法による記録を使う本肢は適当です。機器の不具合などを想定し、支持層を確認するために必要な情報を別の方法で残せるよう計画します。記録がない杭へ、別の杭のデータをそのまま転用することとは違います。施工した杭について確認できる妥当な方法が必要です。現場で問題が起きた後に、合格に都合のよい代替記録をつくるのではなく、事前の計画とその手順に従います。

選択肢3

選択肢3:アースドリル工法の安定液を、必要な孔壁保護性能を確保しつつ、できる限り低粘性・低比重に調整する本肢は適当です。ベントナイトは水と混ぜると安定液の性質をつくる粘土質の材料です。孔壁を支えるために使いますが、過度に粘く重い液は、土砂の沈降やコンクリートとの置換えを妨げることがあります。低ければ無条件によいのではなく、孔壁が崩れない性能との両立が前提です。施工中も土砂の混入などで性質が変わるため管理します。

選択肢4

選択肢4:オールケーシング工法で、トレミー管とケーシングチューブの先端がコンクリートへ2m以上入っていることを確認する本肢は適当です。トレミー管は孔内へコンクリートを送る管で、先端が抜けると水や土砂を巻き込み、品質を損なうおそれがあります。ケーシングは孔壁を保護する管で、引抜き時にも杭体を連続して形成する管理が必要です。打ち上がったコンクリートの高さを測り、管の位置と関係を確認しながら打込みと引抜きを進めます。

周辺知識

杭は、建物の荷重を深い地盤へ伝える部材です。必要な支持層へ十分に届くこと、途中の杭体が連続して健全であること、杭頭が建物と適切につながることが必要です。長さだけが設計値に合えば、支持性能が自動的に確認できるわけではありません。
既製杭を埋め込む工法では、掘削時の地盤の抵抗や根固めの施工を管理します。場所打ち杭では、掘った孔が崩れないこと、孔底の土砂を処理すること、水や安定液を巻き込まずにコンクリートを打つことが重要です。同じ杭工事でも、工法によって直接確認する項目が変わります。
電流値、N値、掘削深さ、コンクリートの打上り高さなどは、測っている対象が異なります。一つの数値を万能な合否判定にせず、何を示す情報かを理解して組み合わせます。地中に隠れる工事だからこそ、施工前の基準づくり、施工中の計測、施工後に追跡できる記録の三つをつなげることが大切です。