学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅴ(施工) 問6
問題・正答・学習用解説
問題
土工事及び山留め工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢1です。ウェルポイントへつなぐライザーパイプには、穴のない管を使って気密を確保します。スリットのあるストレーナーは地下水を取り入れる先端部の役割であり、水を吸い上げて運ぶ途中の管へ用いるものではありません。
ウェルポイント工法は、小さな集水部を地中へ多数設置し、管でポンプへつないで地下水位を下げる方法です。ライザーパイプは先端のウェルポイントから地上側へ水を運ぶ管です。吸引経路の途中から空気を吸うと、先端から水を吸い上げる働きが弱くなります。穴のあいたストローで飲み物を吸いにくくなる様子を考えると、気密が必要な理由を理解できます。
地下水を取り入れる場所と、空気を入れずに吸引を伝える場所を分けて施工します。他の肢では、山留め壁の背面の土の重さを減らすヒービング対策、揚水した水を戻すリチャージの水量計画、切ばりへ軸方向の力を適切に伝える直線的な配置を述べています。土工事では、水の流れと土の力の流れの両方を考える必要があります。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:ライザーパイプへスリット形ストレーナー管を使う点が不適当です。ライザーパイプは穴のない管として、継手も含めた気密を確保します。地下水を取り入れる先端部には水を通す部分が必要ですが、吸引する途中の管に穴があると、空気を吸って揚水能力を失うおそれがあります。水の取入口と水を運ぶ管は、同じパイプ状でも役割が違います。ポンプの能力を大きくするだけでは、途中の空気漏れを適切に補えないので、施工時に吸引経路を確認します。
選択肢2
選択肢2:掘削外周に余裕がある場合、山留め壁の背面側の地盤をすき取るヒービング対策は適当です。ヒービングは、軟弱な粘性土地盤などで背面の土の重さに押され、掘削底が盛り上がる現象です。背面の土を減らすと、掘削底へ土を押し出そうとする荷重を小さくできます。周囲の建物や道路、埋設物への影響を確認したうえで行います。地下水が砂を噴き上げるボイリングとは主な仕組みが違うため、水位対策だけを全ての底面破壊へ一律に使わないようにします。
選択肢3
選択肢3:揚水した地下水を同じ帯水層へ戻すリチャージ工法で、復水しない場合より必要揚水量を多く計画する本肢は適当です。帯水層は地下水が流れやすい地層で、復水はくみ上げた水を戻すことです。戻した水の一部が揚水側へ流れ込むため、掘削部分の必要な水位低下を保つには、その影響を見込む必要があります。リチャージには周囲の地下水位低下を抑える目的がありますが、水を戻す位置や量によって掘削側への流入も変わるため、一体で計画します。
選択肢4
選択肢4:切ばりと支柱が干渉する場合、支柱の一部を切り欠いて必要な補強を行い、切ばりをまっすぐ設置する本肢は適当です。切ばりは、山留め壁から受ける圧縮力を主に軸方向へ伝える部材です。障害を避けて無理に曲げたりずらしたりすると、想定しない曲げや不安定さが生じます。一方、支柱を削ればその耐力へ影響するので、補強と検討が前提です。干渉箇所を現場の独断で切り取ればよいのではなく、両部材の力の伝わり方を確保する処置を行います。
周辺知識
地下工事では、掘削によって土の釣合いと地下水の流れが変わります。土を取り除いた内側と、土が残る外側の間で力の差が生じるため、山留め壁や切ばりで支えます。同時に、地下水が掘削部分へ入る場合には、排水や止水の方法を計画します。
ウェルポイントは吸引する管の気密が重要で、ディープウェルは井戸から地下水をくみ上げます。周囲の地下水位を下げすぎると沈下などへ影響することがあるため、必要に応じてリチャージで水を戻します。ただし、周囲を守るために戻した水は、掘削側の揚水にも影響するので、別々の設備として切り離して考えません。
ヒービングでは、掘削外側の土の重さが軟らかい土を動かすことが問題になります。切ばりでは、その力を部材の軸に沿って伝えることが基本です。水をどこから取り入れてどこへ流すか、土圧をどの部材へ伝えるかという二つの流れを思い描くと、管の穴や部材の配置の意味を理解しやすくなります。