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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅴ(施工) 問5

問題・正答・学習用解説

問題

仮設工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    建築物の改修工事のための枠組足場を設置する計画において、高さ12mの枠組足場の組立てから解体までの期間が49日であったので、その計画を労働基準監督署長に届け出なかった。
  2. (2)
    工事用の資材を上階に運搬するために鉄筋コンクリートの床スラブに設ける仮設用の開口については、補強や復旧等を含む計画書を作成し、監理者の承認を受けた。
  3. (3)
    ベンチマークから引き出した「各階の通り心と高さの基準になる基準墨」について、監理者の検査を受けた。
  4. (4)
    移動式クレーンによる荷の吊り上げ作業において、送電電圧6,600Vの絶縁防護のない配電線からの最小離隔距離(安全距離)については、1.0mを確保した。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢4です。絶縁防護のない6,600Vの配電線付近で移動式クレーンを使う場合、本問の安全距離は2m以上を確保します。1mでは不足します。電力会社が示す安全距離は、電線への接近だけでなく、作業中の揺れや目測誤差なども考慮した目安です。
高い電圧の電線では、直接触れなくても、近接による放電などで感電事故を起こすおそれがあります。クレーンのジブだけでなく、ワイヤロープや吊り荷も電線に近づく可能性があります。地上から見て離れているつもりでも、旋回や荷の振れによって最接近位置が変わるため、作業範囲全体を確認します。
事前に電力会社と協議し、電線の電圧や位置、必要な防護・停電などの措置を検討します。単に操作員へ注意するよう伝えるだけで済ませず、接近しない配置や作業手順を計画することが必要です。他の肢の足場の計画届は設置期間の条件で判断し、床の仮設開口は構造への影響を確認し、基準墨は後続工事の位置と高さの誤りを防ぐために検査します。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:高さ12mの枠組足場でも、組立てから解体までが49日で60日未満なので、本問の計画届を提出しない取扱いは適当です。届出対象の判断は、高さだけでなく存置する期間も関係します。ただし、届出が不要であることと、安全基準や点検を省略できることは違います。短期間の足場でも、適切な組立計画、墜落防止、壁つなぎなどの安全措置は必要です。工事が延びて期間条件が変わる場合も含め、予定と実際の使用状況を管理します。

選択肢2

選択肢2:資材運搬のため床スラブへ仮設開口を設ける場合、補強と復旧を含めた計画書を作成して監理者の承認を受ける本肢は適当です。仮設用でも、構造体のコンクリートや鉄筋を変更すれば、施工中と完成後の安全性へ影響します。必要な大きさや位置、周囲の補強、閉鎖時の鉄筋とコンクリートの納まりを検討します。使用中には人や物の転落防止も必要です。「後で埋めるから自由にあけてよい」と考えず、開口を設けて使い、復旧するまでを計画します。

選択肢3

選択肢3:各階の通り心と高さの基準になる基準墨について、監理者の検査を受ける本肢は適当です。通り心は柱や壁などの位置を決める基準線で、高さの基準は床面や部材の取付け高さを決めます。ベンチマークは高さの基準点であり、各階へ基準を移す際に誤ると、多数の後続工事へ影響が広がります。墨を出したという作業完了だけでなく、その位置と高さが正しいことを確認します。一つの誤った線を全ての工事が共通に使っても、建物として正しくなるわけではありません。

選択肢4

選択肢4:絶縁防護のない6,600Vの配電線から1mしか離していない点が不適当です。本問の安全距離は2m以上です。これは電線に触れなければよいという最小限の考えではなく、吊り荷の振れや操作・目測の誤差も考慮して確保します。ジブ先端だけでなく、ワイヤロープや荷が最も近づく位置を確認します。電圧が違えば必要な距離も変わるため、現場で外観だけから判断せず、電力会社との事前協議で条件と必要な防護措置を確認します。

周辺知識

仮設工事は、本体が完成するまでの一時的な設備や作業の計画です。一時的でも、人が作業し、重量物を運び、完成途中の構造体へ力が加わります。完成後に撤去するから安全や品質の検討を簡単にしてよいということではありません。
電線への接近では、目で見える接触の危険だけでなく、高電圧による放電や、作業中に距離が変わることを考えます。クレーンは旋回し、荷は揺れるため、静止した位置で一度測るだけでは不足します。最も近づく範囲を予測し、接近を防ぐ作業計画と必要な防護を組み合わせます。
床開口と基準墨は、その後の本体工事にも関係します。開口は構造上必要な力の流れを損なわずに復旧できること、基準墨は各部の位置と高さを正しく伝えることが必要です。仮設の手続、電気的な安全、構造への影響、寸法の基準という異なる観点を、工事の前に整理しておくことが、施工中の事故と完成後の不具合の両方を防ぎます。