学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅳ(構造) 問28
問題・正答・学習用解説
問題
コンクリートの一般的な性質に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
スランプは、まだ固まらないコンクリートの軟らかさの指標です。所定の円すい台形の容器に詰め、容器を引き上げた後にコンクリートがどれだけ低くなったかを測ります。大きく下がればスランプが大きく、一般に流動しやすい状態です。単位水量は、コンクリートに含まれる水の質量をで表します。
(3)は大小関係が逆です。他の配合条件が同じなら、水が多いほど粒同士が動きやすくなり、一般にスランプは大きくなります。水を少なくすると普通は硬く、スランプは小さくなります。ただし、軟らかくしたいからと現場で水を追加すると、水セメント比などが変わり、硬化後の強度や耐久性を損なうおそれがあります。
減水剤や高性能AE減水剤などは、セメント粒子を分散させ、水をむやみに増やさず流動性を確保するために使います。そのため異なる混和剤・配合のコンクリート同士では、少ない水量でも大きいスランプを得られます。本問は一般的な性質を比べるもので、他条件をそろえたときの傾向を答えます。水量だけで全てのコンクリートのスランプを一意に決めるわけではありません。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)セメントは水との化学反応で硬化し、強度を発現します。養生中に必要な水が失われると反応が進みにくくなるため、同じ温度などの条件なら、水中で十分な水分を保った方が大気中で乾燥したものより圧縮強度は大きくなる傾向です。記述は適切です。水中養生と、練混ぜ時の水を増やすことは別です。前者は硬化反応を保つ管理、後者は配合そのものを変える操作です。
選択肢2
(2)ひずみは、元の長さに対する縮みや伸びの割合です。ここでいう圧縮強度時ひずみは、円柱試験体が最大の圧縮応力度へ達したときの縮みの割合です。一般に高強度のコンクリートほど、その最大点のひずみも大きくなる傾向です。ただし最大点を過ぎた後まで粘り強く変形できることを意味しません。高強度化すると、最大耐力後の低下が急になる性質との区別が必要です。
選択肢3
(3)単位水量が小さいほどスランプが大きくなる、という記述は逆です。他条件が同じなら、水を減らすほど一般に流動性が低下し、容器を外した後も形を保ちやすくなるためスランプは小さくなります。混和剤で粒子を分散させれば、水量を増やさず大きいスランプを得られる場合はあります。しかしそれは条件を変えた結果であり、本肢の水量とスランプの一般関係を正当化するものではありません。
選択肢4
(4)ヤング係数は応力に対する変形のしにくさです。同じ圧縮強度などの条件なら、一般に気乾単位体積重量が大きいコンクリートほどヤング係数も大きくなります。軽量骨材を用いたコンクリートと普通コンクリートでは、骨材の硬さや密度の違いも効きます。記述は適切です。ただし重量だけで決まる値ではなく、圧縮強度や骨材の性質などにも関係します。強度とヤング係数は別の指標です。
周辺知識
コンクリートの水については、練混ぜ時と養生時を分けて考えます。練混ぜ水が多すぎると、硬化後に余った水が占めていた空間が残り、組織が粗くなる方向です。一方、適切な配合で打ち込んだ後に表面を湿らせて養生するのは、セメントの反応に必要な水分を逃がさないためです。「水が多いと強度が下がる」と「湿った養生で強度が伸びる」は、対象が違うので矛盾しません。
応力度とひずみのグラフでは、最大の応力度が圧縮強度、最大点の横軸が圧縮強度時ひずみ、初期付近の傾きに関係する量がヤング係数です。高さ、最大点の位置、傾きは別々の性質なので、一つが大きいから他が同じ割合で変わるとは限りません。
スランプは施工時の軟らかさの指標で、硬化後の強度を直接測った値ではありません。同じスランプでも水セメント比や混和剤が違えば、強度や分離しやすさは変わります。流動性、材料分離への抵抗、強度、耐久性など、必要な性能を組み合わせて配合を決めます。