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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅳ(構造) 問27

問題・正答・学習用解説

問題

木材に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    木材のクリープによる変形は、一般に、気乾状態に比べて、湿潤状態のほうが大きい。
  2. (2)
    木材は樹種により腐朽菌に対する抵抗性が異なるので、腐朽しやすい土台などには、ひば、ひのきなどの耐朽性のある樹種を使用することが望ましい。
  3. (3)
    木材の含水率は、水分を含まない木材実質の質量に対する木材に含まれる水の質量の百分率として定義される。
  4. (4)
    木材の繊維方向の基準材料強度は、一般に、圧縮に比べて、引張のほうが大きい。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

木材は長い繊維が束になった材料です。繊維方向へ引っ張る場合と押し縮める場合では、壊れ方が違います。ここで重要なのは、問題が小さな欠点のない試料の強さではなく、構造設計に用いる「基準材料強度」を比較している点です。
(4)は一般的な大小関係が逆で、構造用木材の繊維方向の基準材料強度は、通常、引張りの方が圧縮より小さくなります。実際の製材には節や繊維の傾きなどがあり、引張りでは、その弱い部分が力の通り道を切って破断につながりやすいためです。欠点の少ない木材そのものの引張強さが高いことを、そのまま構造用製材の設計値へ当てはめることはできません。
例えば無等級のすぎ等の基準強度では、繊維方向の圧縮17.7 N/mm2\displaystyle 17.7\,\mathrm{N/mm^2}に対し、引張り13.5 N/mm2\displaystyle 13.5\,\mathrm{N/mm^2}という大小になります。これは樹種や等級を指定した設計値の例で、全ての木材が同じ数字という意味ではありません。他の肢は、湿った木材の長期変形、樹種による腐りにくさ、水分量の定義を正しく述べています。木材の評価では、方向・品質・水分・時間を分けて確認します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)クリープは、同じ荷重を載せ続けても変形が時間とともに増える現象です。気乾状態は周囲の空気となじんだ水分状態、湿潤状態はそれより水分が多い状態です。一般に湿った木材の方がクリープ変形は大きくなるため、記述は適切です。初めに荷重を載せた瞬間のたわみだけで、長く使った後のたわみを判断しないことが重要です。使用中の乾湿の変化も長期変形に影響します。

選択肢2

(2)土台は基礎の上に置かれ、柱などから力を受ける木材です。地面に近く水分の影響を受けやすいため、腐朽菌への抵抗性があるひば・ひのきなどを選ぶことは有効です。樹種によって耐朽性が異なるので、記述は適切です。ただし耐朽性のある樹種でも、長く湿った状態なら劣化し得ます。材料選びに加え、防腐処理の要否、雨水を入れない納まり、換気や点検も考えます。

選択肢3

(3)含水率の分母は、水を含んだ現在の木材質量ではなく、水を取り除いた木材実質の質量です。全乾の木材が100g、水が20gなら、含水率は20100×100=20%\displaystyle \frac{20}{100}\times100=20\%です。湿った全体120gで割って16.7%とする計算は定義と違います。水の質量が全乾質量より多い生材では100%を超えることもあります。全体に占める水の割合という通常の百分率の感覚と区別します。

選択肢4

(4)構造用木材の基準材料強度では、一般に引張りの方が圧縮より小さいので、記述は不適切です。引張りは節などで力の通り道が乱れる影響を強く受け、局所的な弱点から破断しやすくなります。欠点のない小試験体の材料特性と、実際の製材のばらつきを考えた設計値を混同しています。比較するときは繊維方向という条件も維持し、繊維直角方向のめり込み強さなどと入れ替えません。

周辺知識

木材は、水分の変化でも寸法や強さが変わります。細胞の壁に含まれる水が減ると収縮し、一般には強さや硬さも変化します。さらに木は方向による違いが大きく、繊維方向の長さの変化と、年輪に関係する方向の収縮は同じではありません。乾燥させると割れや反りが生じるのは、この収縮の不均一さにも関係します。
腐朽は、単に水を吸って柔らかくなることではなく、菌が木材の成分を分解して強さを失わせる現象です。水分、温度、酸素などの条件が関係します。腐りにくい樹種や処理材を選ぶとともに、長く湿らない構造にすることが大切です。
設計で使う強度は、材料試験の平均値をそのまま採るものではありません。樹種、等級、節などの欠点、ばらつきを踏まえた基準値を使い、さらに荷重の継続時間や使用環境に応じた許容値へつなげます。「木材は引張りに強い」という素材の特徴だけでは、実際の梁や筋かいの許容能力を決められないことを押さえましょう。