学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅳ(構造) 問26
問題・正答・学習用解説
問題
建築物の構造設計及び耐震補強に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
CFTは、鋼管の中へコンクリートを密に詰めた柱です。鋼管とコンクリートは、それぞれ単独で力を負担するだけでなく、互いの弱点を抑える働きがあります。鋼管は圧縮されると薄い壁の一部が内側へ折れ込む局部座屈を起こしやすく、コンクリートは強く押されると横へ広がって壊れようとします。
(2)の「塑性変形性能は低い」は誤りです。充填コンクリートは鋼管が内側へ折れるのを支え、鋼管はコンクリートの横への広がりを囲んで抑えます。この相互作用により、中空の同じ鋼管と比較して剛性・耐力に加え、一般に水平力に対する塑性変形性能も向上します。曲げられた柱が急に力を失わず、変形を続けやすくなる方向です。
ただし、断面寸法、鋼管の厚さ、コンクリート強度、柱が受ける軸圧縮力などによって性能は変わります。充填さえすれば全ての座屈や破断がなくなるわけではありません。他の肢は、プレストレスが時間とともに減る傾向、露出柱脚のせん断抵抗の評価、炭素繊維を横巻きする補強の役割を述べています。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)クリープは一定の圧縮力を受け続けるコンクリートが時間とともに縮む現象で、PC鋼材の緊張力を減らす原因になります。ポストテンションは一般に、プレテンションよりコンクリートの材齢が進んでから圧縮力を導入するため、その後のクリープなどによる減少率が小さくなる傾向です。記述は適切です。摩擦や定着時のずれなど、他の損失まで全て必ず小さいとする比較ではありません。
選択肢2
(2)中へコンクリートを詰めると、鋼管の内向きの局部座屈が抑えられます。同時に鋼管がコンクリートを囲み、圧縮されて横へ広がるのを拘束します。このため一般には塑性変形性能も高くなるので、「低い」は逆です。硬いコンクリートを入れると全体が必ず脆くなる、という単純な足し算ではありません。異なる材料が相手の壊れ方を抑える複合効果を考えます。
選択肢3
(3)露出柱脚では、柱底のベースプレートと下のコンクリート等の接触面の摩擦、アンカーボルトのせん断抵抗が水平力を受ける仕組みになります。最大せん断耐力を、これらの大きい方として評価する記述は適切です。二つの最大抵抗が同じ変位で同時に発揮されるとは限らないため、単純に最大値を足しません。柱の引抜きなどで接触圧が変わることや、ボルトの他の破壊条件も確認します。
選択肢4
(4)柱の周囲へ炭素繊維を横方向に巻く補強は、斜めのひび割れを抑えるせん断補強や、コンクリートを囲んで変形能力を高める働きが中心です。柱の長手方向の引張力を受ける主筋を増やす補強ではないため、一般に曲げ耐力を大きくする効果は期待しません。記述は適切です。炭素繊維そのものが引張りに強くても、その繊維の向きと端部の力の伝達が目的の作用に対応する必要があります。
周辺知識
複合材料の効果は、何を足したかだけでなく、どの方向の変形を止めるかで考えます。CFTの充填コンクリートは、鋼管壁が内側へ折れようとする変形を止めます。横巻きの炭素繊維は、柱の周囲が広がる変形や斜めひび割れの開きを抑えます。同じ「コンクリートを補強する」方法でも、主筋を増やす曲げ補強とは働きが違います。
プレストレスの損失には、導入時に生じるものと、時間とともに生じるものがあります。コンクリートのクリープ・乾燥収縮や鋼材のリラクセーションは時間に関係します。リラクセーションは、鋼材の伸びを保っても引張応力が徐々に減る性質です。方式の比較では、どの損失の話かを限定することが必要です。
柱脚の抵抗のように複数の仕組みがある場合も、必ず足し合わせられるとは限りません。同時に働くか、同じ変位まで能力を保つか、片方が働く前に別の部分が壊れないかを確認します。耐力を加える、最小を選ぶ、最大を選ぶという規則は、力の伝わり方と破壊の順序に基づいて使い分けます。