学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅳ(構造) 問25
問題・正答・学習用解説
問題
免震構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
免震構造は、建物を支えながら水平方向には動きやすい層を設け、地盤の急な動きを上部へ伝えにくくする仕組みです。そのままでは免震層が大きく動きすぎるため、ダンパーでエネルギーを吸収して変位を抑えます。ただしダンパーの抵抗力も、免震層を介して上部構造へ伝わる力の一部です。
(1)は「減衰量をできるだけ大きく」としている点が不適切です。ダンパーを強くすると免震層の変位を抑えられる方向に働きますが、抵抗が大きすぎると上部へ伝える力が増え、応答せん断力を小さくする効果を損なう場合があります。代表的な粘性ダンパーなら、抵抗力は基本的にと表されます。は減衰係数、は相対速度で、同じ速度ならを大きくするほど抵抗力も増えます。
実際の応答では速度や変位も同時に変わるため、この式だけで最適値は決まりません。地震動を与えた解析などで、免震層の変位、装置の許容変形、上部の加速度・せん断力を一緒に確認します。目標は減衰の最大化ではなく、必要な変位の余裕と上部へ伝える力を両立させることです。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)減衰を増やせば、あらゆる応答が一律に小さくなるわけではありません。ダンパーは動きを妨げる力を発生してエネルギーを吸収するので、その抵抗が上部へ伝わる点も考える必要があります。強すぎるダンパーでは免震層が動きにくくなり、上部のせん断力がかえって増える場合があります。減衰量、免震装置の柔らかさ、必要な変位量を組み合わせて検討するのが正しい設計です。
選択肢2
(2)通常の耐震建物で用いる分布は、上階ほど層せん断力係数が増える傾向などを評価する分布です。免震建物では免震層が主に変形し、上部構造の揺れ方が通常の建物と異なるため、層せん断力係数も一般にそのまま分布とはなりません。上部全体が比較的一体で動く効果や高次の振動も考慮します。「免震だから全階で完全に同じ値」と置き換えるのも適切ではありません。
選択肢3
(3)オイルダンパーは油を流す抵抗によって運動を抑える装置です。平面の外周部に配置すると、建物がねじれたときの回転中心からの距離が大きくなり、その動きに対して有効に抵抗できます。抵抗力と回転中心からの距離の積が、ねじれを止めるモーメントになるためです。したがって記述は適切です。ただし一方の外周へ偏らせればよいのではなく、方向や配置のバランスも検討します。
選択肢4
(4)ここでいう通常の平面型のすべり支承は、滑る面の摩擦でエネルギーを吸収しますが、それだけでは元の位置へ引き戻すばねの働きを持ちません。そのため復元力を持つ他の装置などと組み合わせます。記述はこの基本形式について適切です。曲面の上を滑らせて重力で戻す形式や、復元機能を組み込んだ製品まで、全て復元力がないと一般化しないようにしてください。
周辺知識
免震層の装置には、建物の重さを支える、横へ動ける、元の位置へ戻す、エネルギーを吸収するという役割があります。一つの装置が複数の役割を担うこともあれば、支承とダンパーなどで分担することもあります。装置名だけでなく、どの役割が備わるかを整理すると理解しやすくなります。
例えば積層ゴムは、薄いゴムと鋼板を重ねることで縦にはつぶれにくく、横には変形しやすくします。横へずらすと戻ろうとする力が生じます。一方、平らなすべり面の摩擦は、動く向きと逆向きに抵抗しますが、ずれた位置で止まった後に中心へ戻す方向を自分で決める働きはありません。
ねじれを抑える装置の配置も、力の腕の長さで考えられます。同じ抵抗力なら回転中心から遠い方が大きい回転抵抗を得られます。ただし、偏った抵抗を配置すると別のねじれを誘発することもあります。装置単体の能力を足すだけでなく、平面全体の重さ、剛性、減衰の配置をそろえて検討します。