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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅳ(構造) 問23

問題・正答・学習用解説

問題

各種建築構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    プレストレストコンクリート構造におけるポストテンション方式は、PC鋼材の周りに直接コンクリートを打設し、コンクリートが所定の強度に達した後にPC鋼材の緊張を行って、PC鋼材とコンクリートとの付着力により、コンクリートにプレストレスを導入するものである。
  2. (2)
    プレキャストプレストレストコンクリート造の床版では、周囲の梁との接合部を、長期及び短期に生じる応力を相互に伝達できるように設計する。
  3. (3)
    鉄骨鉄筋コンクリート構造の架構応力の計算では、鋼材の影響が小さい場合には、全断面についてコンクリートのヤング係数を用いて部材剛性を評価することができる。
  4. (4)
    コンクリート充填鋼管(CFT)造の柱では、梁から伝達されるせん断力の一部を充填コンクリートに負担させる場合、鋼管と充填コンクリートとの間で応力伝達ができるように設計する。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

プレストレスは、後で荷重による引張りが生じてもひび割れにくいよう、あらかじめコンクリートに与える圧縮の力です。強く引き伸ばしたPC鋼材が元へ縮もうとする力を使い、コンクリートを締め付けます。その力をいつ、どの部分から伝えるかで、プレテンションとポストテンションを区別します。
(1)のポストテンションの説明は、施工順序と力の伝達を混同しています。ポストテンションはコンクリートが所定の強度になった後、シースなどでコンクリートから分離されたPC鋼材を緊張し、端部の定着具を介してコンクリートへ圧縮力を導入します。付着させる方式では、その後にシース内へグラウトを注入します。緊張前から鋼材を直接付着させてしまうと、鋼材を自由に引き伸ばせません。
鋼材の周りへ直接コンクリートを打ち、付着によって導入するのはプレテンションの仕組みです。ただし、こちらは打設前に鋼材を緊張しておき、硬化後に外部の固定を解放します。本肢を「プレテンション」と読み替えるだけでは、緊張の時期がまだ誤りのままになる点にも注意してください。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)ポストテンションでは、硬化した部材を反力としてPC鋼材を引き、端部の定着具で力をコンクリートへ渡します。鋼材の周囲に直接打設して付着で導入する、という部分が合いません。直接打設と付着を使うプレテンションなら、鋼材を先に緊張しておく必要があります。したがって、この文章には方式だけでなく工程の混同があります。緊張の時期と力を渡す場所の両方を修正します。

選択肢2

(2)プレキャストはあらかじめ製造した部材を現場で組み立てることです。床版自体にプレストレスがあっても、周囲の梁との継ぎ目で力が切れれば建物全体として働けません。長期の自重・積載荷重だけでなく、地震時など短期の力も相互に伝えられる接合が必要です。床は鉛直荷重を梁へ渡すほか、水平方向の力を壁や骨組へ配る役割もあるため、単に載せるだけでよいとは限りません。

選択肢3

(3)SRCは鉄骨を鉄筋コンクリートで包んだ構造です。架構の応力計算で部材の硬さを評価するとき、鋼材による影響が小さい場合には、全断面をコンクリートのヤング係数で扱う簡略化が可能です。記述はこの条件付きの剛性評価を述べています。鋼材の影響が大きい断面まで常に無視できるのではありません。また、部材の耐力を確認する際に鉄骨や鉄筋を無かったことにする意味でもありません。

選択肢4

(4)CFTは鋼管の内部へコンクリートを詰めた柱です。梁が鋼管へつながっていても、梁から入った力が自動的に全て内部のコンクリートへ伝わるとは限りません。せん断力の一部を充填コンクリートに負担させる設計なら、鋼管との間の付着や支圧、必要な応力伝達の仕組みを確保します。材料が隣り合うことと、設計で見込む力を受け渡せることを区別する適切な記述です。

周辺知識

プレテンションは「先に引く」と覚え、外部の強い固定台でPC鋼材を引いておき、その周囲へコンクリートを打設します。硬化してから固定を解くと、鋼材が縮もうとし、付着によって部材を圧縮します。ポストテンションは「後で引く」で、硬化後に鋼材を緊張し、端部の定着具が部材を押す力を伝えます。
ポストテンションでも、完成後に付着を持たせる方式と、付着を持たせないアンボンド方式があります。「ポストテンションは付着が永久にない」とは限りません。導入時に何で力を渡すかと、完成後に鋼材とコンクリートが局所的に一緒に変形するかは、別の分類です。
SRCやCFTでも、材料の協力を成立させる接続が重要です。例えば二枚の板を重ねるだけの場合と、ずれないようにつなぐ場合では、同じ材料量でも曲げに対する働きが変わります。複合構造では、それぞれの材料の強さを足す前に、想定した変形と力の受渡しが実際に成立するかを確認します。