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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅳ(構造) 問17

問題・正答・学習用解説

問題

鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    引張力を負担する筋かいを保有耐力接合とするためには、筋かい軸部の降伏耐力より、筋かい端部及び接合部の破断耐力を大きくする必要がある。
  2. (2)
    H形鋼等の開断面の梁が曲げを受けたとき、ねじれを伴って圧縮側のフランジが面外にはらみ出して座屈する現象を横座屈という。
  3. (3)
    ラーメン架構の柱及び梁に、建築構造用圧延鋼材SN400Bを用いる代わりに同一断面のSN490Bを用いることで、弾性変形を小さくすることができる。
  4. (4)
    H形鋼の梁の設計において、板要素の幅厚比を小さくすると、局部座屈が生じにくくなる。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

鋼材の「強い」と「硬い」は区別が必要です。強さは降伏や破断に至る応力度の大きさ、弾性範囲の硬さは、同じ応力度に対してどれだけ伸びにくいかを表すヤング係数E\displaystyle Eです。SN490BはSN400Bより高い強度区分の鋼材ですが、ヤング係数はほぼ同じです。
したがって(3)のように、柱と梁を同一断面のSN490Bへ替えるだけでは、同じ荷重に対する弾性変形を小さくできません。例えば単純梁の中央へ荷重P\displaystyle Pを加えたときのたわみはδ=PL348EI\displaystyle \delta=\frac{PL^3}{48EI}です。L\displaystyle Lは支点間距離、I\displaystyle Iは断面の曲がりにくさを表す断面二次モーメントです。同一断面ならI\displaystyle Iも同じで、式のP,L,E,I\displaystyle P,L,E,Iが変わらないのでδ\displaystyle \deltaも変わりません。ラーメンでも、各部材の弾性剛性が同じなら同じ考え方です。
高強度化の効果は、より大きい応力度まで弾性範囲を保てることなどに現れます。変形を減らしたいなら、梁せいを大きくする、柱断面を見直す、壁や筋かいを加えるなど、構造の剛性を変える対策を検討します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)保有耐力接合は、筋かい本体が降伏して粘りを発揮する前に、端部や接合部が破断しないようにする接合です。軸部の降伏耐力より端部・接合部の破断耐力を大きくする記述は適切です。ボルト孔で減った断面や、接合していない山形鋼の脚の影響も確認します。実際の設計では強度のばらつきなどを考慮した所定の余裕が必要で、計算上わずかに上回れば必ず十分という意味ではありません。

選択肢2

(2)H形鋼の上下の横板をフランジと呼びます。梁が曲がると一方のフランジが圧縮され、横へ逃げようとします。H形のように閉じていない断面はねじれに対して比較的弱いため、圧縮側が面外へはらみ、梁全体がねじれる横座屈が生じます。記述はその現象を正しく説明しています。梁の上下方向のたわみだけでなく、横方向の動きとねじれが組み合わさるのが特徴です。

選択肢3

(3)同一断面・同じ荷重・同じ支持条件なら、SN400BからSN490Bへ替えても弾性変形はほぼ同じです。鋼材名の400や490は引張強さの区分に関係し、ヤング係数が400から490へ増えることを示しません。引張試験の応力度とひずみのグラフでいうと、弾性部分の傾きはほぼ同じで、降伏する位置などが違います。強度を増した効果を、そのまま変形低減の効果とする点が誤りです。

選択肢4

(4)幅厚比は、フランジやウェブといった板部分の幅を厚さで割った値です。広く薄い板は、圧縮されると一部分だけ波打つように折れやすくなります。厚さを増すなどして幅厚比を小さくすると、この局部座屈が起こりにくくなります。梁全体が横へねじれる横座屈とは別の現象です。実際の幅の取り方や制限値は、板の支えられ方や鋼材強度などによって異なります。

周辺知識

弾性変形を小さくするには、まず変形の式で何が効くかを確認します。梁の曲げならEI\displaystyle EI、棒の軸方向の伸び縮みならEA\displaystyle EAが基本です。A\displaystyle Aは断面積です。部材の長さや支持条件も重要で、梁のたわみは代表的な条件で長さの3乗や4乗に関係します。わずかなスパンの変更でも変形が大きく変わる場合があります。
断面積を増やす方法も一様ではありません。曲げでは、材料を断面の中心から離して置くほど断面二次モーメントI\displaystyle Iを大きくしやすくなります。H形鋼の上下フランジが離れているのは、その効果を利用するためです。ただし薄い板を広げすぎると局部座屈に弱くなり、横補剛が不足すると横座屈も問題になります。
大地震で塑性変形を利用するには、降伏する部位と先に壊してはいけない部位を計画します。筋かい本体が伸びながら耐える前に接合部が切れれば、その後の力を伝えられません。材料強度、弾性剛性、座屈防止、接合部耐力はそれぞれ別に確認し、建物全体として必要な性能につなげます。