学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅳ(構造) 問18
問題・正答・学習用解説
問題
鉄骨構造の耐震計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
冷間成形角形鋼管は、鋼板を常温で曲げて角形の管にした柱材です。BCRはロール成形、BCPはプレス成形で作ります。常温で曲げる加工は鋼材の性質を変えるため、製法の違いを無視して同じ耐震上の扱いにすることはできません。
(2)は割増し係数の大小が逆です。問題のルート1-2の設計では、BCRの地震時応力の割増し係数の方がBCPより大きくなります。BCRでは角部だけでなく平坦部も塑性加工の影響を受けるのに対し、BCPは主に角部が加工を受けるという違いがあります。柱や接合部の変形能力を踏まえ、計算で得た地震時の力を大きくして確認することで、柱が先に厳しい状態へ達することを抑えます。
割増しは、鋼材に実際の地震力が製法だけで大きく作用するという意味ではありません。安全を確認する設計上の扱いです。また係数は鋼種だけでなく柱梁の接合形式などにも関係するため、材名から一つの値を全ての条件へ当てはめないようにします。他の肢は、計算ルートが違っても必要な天井の安全確認、ルートの適用条件、局部崩壊時の柱耐力の評価です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)特定天井は、落下すると大きい危険を生じる規模・高さなどの条件に該当する吊り天井です。柱や梁の計算を比較的簡易なルート1-1で行う建物でも、天井の落下防止の確認がなくなるわけではありません。骨組が倒れないことと、頭上の天井が落ちないことは別の安全性です。該当する天井があれば、その支持や接合、揺れによる周囲との衝突などについて技術基準への適合を確かめます。
選択肢2
(2)BCPよりBCRの方が大きい地震時応力の割増しを受けるので、記述は逆です。両者とも角形鋼管ですが、BCRは平坦部にも成形加工の影響があり、BCPとは部材の性状が異なります。割増し係数が大きいほど、同じ計算応力でも厳しい力を受けるものとして断面を確認します。本問の厚さや計算ルートの条件を保って比較し、別の鋼種や他ルートの係数へ置き換えないことが大切です。
選択肢3
(3)塔状比は建物の高さと、その方向の幅の比で、細く高い建物かを表す指標です。鉄骨造のルート2では地上部分の塔状比が4を超えないことを確かめます。例えば高さ、幅なら比は3です。細く高い建物では、揺れによる転倒方向の作用や変形の影響が大きくなるため、ルートの適用に制限があります。比が4以下という一条件だけで、ルート2の全ての要件を満たすわけではありません。
選択肢4
(4)局部崩壊メカニズムは、変形が建物全体へ分散せず、特定の階などへ集中して崩れる形です。BCP柱がこの形に関係する場合、柱が十分に粘ると楽観的に見込まず、所定の耐力低減を行って保有水平耐力を算定します。その値が必要保有水平耐力以上か確認する記述は適切です。求めた必要耐力を小さくして合わせるのではなく、建物側の耐える能力を厳しく評価して比較します。
周辺知識
構造計算のルートは、安全確認の手順と適用条件の組合せです。ルート1は比較的規模などを限定し、許容応力度計算と構造上の条件で確認します。ルート2では、剛性や偏り、部材の変形能力に関わる条件などを確認します。ルート3では、大きく変形した建物が最終的にどの程度の水平力に耐えられるかを求めます。数字が大きいほど安全な建物という順位ではありません。
冷間成形角形鋼管では、柱が先に損傷して一つの階だけが大きくつぶれる形を避けることが大切です。梁などへ変形を分散できる全体崩壊型と、柱に厳しい変形が集中する局部崩壊型を区別し、柱の性質に応じた確認を行います。
「応力を割増す」と「耐力を低減する」は、どちらも安全側の評価ですが、変える側が逆です。作用する設計力を100から大きくするのが割増し、耐える能力を100から小さくするのが低減です。係数が大きいほど常に有利、常に不利と覚えず、何に掛ける係数かを先に確認しましょう。