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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅳ(構造) 問4

問題・正答・学習用解説

問題

図-1のような水平荷重Pを受けるラーメンにおいて、Pを増大させたとき、そのラーメンは、図-2のような崩壊機構を示した。ラーメンの崩壊荷重Pu\displaystyle P_uの値として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、柱、梁の全塑性モーメントの値は、それぞれ400kN・m、200kN・mとする。問4の図1

選択肢

  1. (1)
    200kN
  2. (2)
    300kN
  3. (3)
    400kN
  4. (4)
    600kN

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

図-2の四つの塑性ヒンジが行う仕事を、荷重Pu\displaystyle P_uが行う仕事と等しくすると、崩壊荷重は300 kN\displaystyle 300\,\mathrm{kN}です。左柱の高さは3 m\displaystyle 3\,\mathrm{m}、右柱は6 m\displaystyle 6\,\mathrm{m}であり、両柱の回転角を同じにしてはいけません。梁が水平に微小量δ\displaystyle \deltaだけ動くと考えます。
左柱は脚を中心にθL=δ3\displaystyle \theta_L=\frac{\delta}{3}、右柱はθR=δ6\displaystyle \theta_R=\frac{\delta}{6}だけ回転します。梁は図の機構では微小変形の範囲で水平を保つため、各梁端の相対回転もそれぞれδ3\displaystyle \frac{\delta}{3}とδ6\displaystyle \frac{\delta}{6}です。柱脚の全塑性モーメントは400 kN⋅m\displaystyle 400\,\mathrm{kN\cdot m}、梁端は200 kN⋅m\displaystyle 200\,\mathrm{kN\cdot m}なので、内部仕事は(400+200)δ3+(400+200)δ6\displaystyle \frac{(400+200)\delta}{3}+\frac{(400+200)\delta}{6}となります。
外力仕事はPuδ\displaystyle P_u\deltaです。従ってPuδ=200δ+100δ=300δ\displaystyle P_u\delta=200\delta+100\delta=300\deltaより、Pu=300 kN\displaystyle P_u=300\,\mathrm{kN}です。柱の高さでモーメントを割っているので、単位もkN m/m=kN\displaystyle \mathrm{kN\,m/m}=\mathrm{kN}となります。
梁スパン8 m\displaystyle 8\,\mathrm{m}は、この機構の仕事式には直接現れません。梁が回転せず並進するため、荷重点の変位を決めるのは柱高さです。図にある全ての寸法を無理に使うのではなく、各ヒンジがどの部材に属し、どれだけ相対回転するかを図から読むことが重要です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)200 kN\displaystyle 200\,\mathrm{kN}は、左側の柱脚と梁端の仕事(400+200)δ3=200δ\displaystyle \frac{(400+200)\delta}{3}=200\deltaだけを数えた値に相当します。右側も固定柱脚と梁端に塑性ヒンジがあり、(400+200)δ6=100δ\displaystyle \frac{(400+200)\delta}{6}=100\deltaの仕事を消費します。両側を足さなければ全体の機構を動かす仕事になりません。右柱は長いため回転が半分ですが、0ではありません。図の黒丸を一つずつ確認し、全塑性モーメントと相対回転の組を漏れなく数える必要があります。

選択肢2

(2)左側の二つのヒンジの仕事は600δ3=200δ\displaystyle \frac{600\delta}{3}=200\delta、右側は600δ6=100δ\displaystyle \frac{600\delta}{6}=100\deltaで、全体は300δ\displaystyle 300\deltaです。これを荷重点の外力仕事Puδ\displaystyle P_u\deltaと等しくすると300 kN\displaystyle 300\,\mathrm{kN}となり、図の条件に一致します。梁端の200と柱脚の400を区別し、左右で異なる回転角を使っています。任意に仮定した小さな変位δ\displaystyle \deltaが最後に消えるのは、崩壊荷重がその仮定した移動量の大きさによらず決まるためです。

選択肢3

(3)400 kN\displaystyle 400\,\mathrm{kN}は、梁端も柱脚と同じ400 kN⋅m\displaystyle 400\,\mathrm{kN\cdot m}として計算すると出る値です。しかし問題では梁の全塑性モーメントは200 kN⋅m\displaystyle 200\,\mathrm{kN\cdot m}と指定されています。黒丸が接合部付近に描かれていても、梁端の塑性ヒンジには梁の耐力を使い、柱脚には柱の耐力を使います。正しくは左側6003=200\displaystyle \frac{600}{3}=200、右側6006=100\displaystyle \frac{600}{6}=100の合計300 kN\displaystyle 300\,\mathrm{kN}です。塑性ヒンジの位置だけでなく、どちらの部材が塑性化したかを読み分ける必要があります。

選択肢4

(4)600という数は柱と梁の全塑性モーメント400+200\displaystyle 400+200の和ですが、その単位はkN⋅m\displaystyle \mathrm{kN\cdot m}であり、水平荷重kN\displaystyle \mathrm{kN}ではありません。荷重へ換算するには、各ヒンジの回転と荷重点の移動との関係を使います。本図では左右の柱高さ3 m\displaystyle 3\,\mathrm{m}、6 m\displaystyle 6\,\mathrm{m}でそれぞれ割り、
6003+6006=300 kN\frac{600}{3}+\frac{600}{6}=300\,\mathrm{kN}
となります。モーメントを単に足して答えにせず、力×移動量\displaystyle \text{力}\times\text{移動量}とモーメント×回転角\displaystyle \text{モーメント}\times\text{回転角}という仕事の単位をそろえてつり合わせます。

周辺知識

全塑性モーメントは、断面全体が曲げに対して降伏した状態で抵抗するモーメントです。塑性ヒンジはその値をおおむね保ちながら回転するというモデルで、曲げを伝えない普通のピンとは違います。図の機構ができると、各部材は主としてヒンジの回転で大きく動ける状態になります。
仮想仕事では、図の機構をわずかに動かし、外力が供給する仕事と塑性ヒンジが消費する仕事を等しくします。微小な回転角なら、柱の横移動は高さ×回転角\displaystyle \text{高さ}\times\text{回転角}なので、同じ移動量なら短い柱ほど大きく回転します。本問の左柱は右柱の半分の高さなので、ヒンジの回転は2倍です。
梁の傾きが変わる機構では、梁端の回転は柱の回転だけでなく梁の回転との差で求めます。本問では微小変形の範囲で梁が水平を保つため、その差が柱の回転に一致します。荷重点の変位、各部材の回転、ヒンジでの相対回転を分けて整理し、最後に単位が荷重へ戻ることを確認すると、機構の形が違う問題にも対応できます。