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学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅰ(計画) 問16

問題・正答・学習用解説

問題

医療施設等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    病棟の患者用トイレの計画においては、トイレを分散して配置するなど、病室とトイレの距離を短くする工夫が必要である。
  2. (2)
    LDRとは、陣痛・分娩・回復と出産の過程に応じてそれぞれに必要な設備が整った専用の部屋を設ける方式である。
  3. (3)
    4床病室の計画において、隣り合うベッドとベッドとの間に幅1 m以上のスペースを確保するためには、病室面積は32 m2\displaystyle m^{2}以上が目安となる。
  4. (4)
    回復期リハビリテーションは、疾患に応じ90 日から180 日をかけて身体の機能や日常生活動作(ADL)の改善を図ることを目的としている。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

正解は2です。LDRは、陣痛を意味するLabor、分娩のDelivery、回復のRecoveryを、同じ部屋で連続して行う方式です。選択肢のように、過程ごとに別々の専用室を設けて移動する方式ではありません。三つの英単語に対して三つの部屋を用意すると覚えると、意味が逆になります。
従来のように陣痛室から分娩室へ移る場合、強い陣痛のある時期に体を動かし、場所や周囲の環境も変える負担が生じます。LDRでは必要な設備を一つの室にまとめ、通常の出産の過程をその場で支えられるようにします。家族がそばで過ごす場所や、医療者が処置をする余地も含めて計画するため、普通の個室に名称だけを付けたものではありません。
医療施設の計画では、患者がどの程度動けるかを前提に、移動を減らす工夫と、支援する人が動ける空間を両立させます。病室に近いトイレ、ベッド間の余裕、生活動作の回復を支える病棟は、その具体例です。同じ部屋で行うことの意味も、施設全体の効率だけでなく、そこで過ごす人の負担から考えると理解できます。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適切です。患者は健康なときと同じ速さや安定性で歩けるとは限りません。病室からトイレまで遠いと移動の負担が大きく、介助を受ける場合も往復の距離が増えます。分散配置や病室との近接によって、日常的に繰り返す移動を短くします。そのうえで車椅子等が使える広さや手すり、見つけやすい案内も必要です。一か所に集めると設備をまとめやすくても、患者の使いやすさは別に確かめます。

選択肢2

(2)不適当です。LDRの三段階は同じ部屋で過ごすのが特徴です。陣痛の部屋、分娩の部屋、回復の部屋と分ける説明を、『陣痛・分娩・回復に必要な機能を一室にまとめる』へ直します。場所の移動を減らすことで出産時の身体的・心理的な負担を軽くします。必要な処置を行える設備や医療者の動く余地は確保するため、家庭の寝室のような雰囲気と、医療を支える機能を両方考える計画になります。

選択肢3

(3)適切です。本問の32 m2\displaystyle 32\,\mathrm{m^2}は4床病室の計画の目安で、一人当たりにすると8 m2\displaystyle 8\,\mathrm{m^2}です。ベッド間を1m以上確保するには、ベッド本体だけでなく、患者が立つ、介助者が入る、機器を置くための余地が必要になります。ただし面積が同じでも、細長すぎる室や扉の位置が悪い室では必要な間隔を確保できません。32 m2\displaystyle 32\,\mathrm{m^2}をすべての病室に一律の法定最低面積と考えず、配置と併せて確かめる計画上の目安として捉えます。

選択肢4

(4)適切です。回復期リハビリテーションは、病状が落ち着いた後に、歩く、着替える、食事をするなど生活に必要な機能や動作の改善を目指します。ADLはこうした日常生活動作です。本問の90~180日は疾患等による代表的な期間の説明で、全員が同じ日数で回復するという意味ではありません。制度上の算定上限にも状態ごとの区分があり、60日の区分もあります。期間の暗記だけでなく、生活へ戻るための支援という目的を理解します。

周辺知識

病院には、症状を診断・治療する場所だけでなく、入院中の生活を支える場所があります。トイレへ行く、体を起こす、着替えるといった動作は、健康な人には小さな動きでも、病気やけがのある人には大きな負担になり得ます。病棟の計画では、患者が実際に行う一日の行動を追うと、必要な距離や空間が見えてきます。
ベッドの周りは、患者だけの場所ではありません。看護や介助を行う人、診察に来る人、車椅子や医療機器も使います。病室面積を人数で割るだけでなく、ベッドの横と足元の余地、出入口までの経路、カーテンによるプライバシー等を確認します。十分な総面積があっても、使いたい場所に余白がなければ機能しません。
リハビリテーションでは、練習室で運動できることと、実生活で動作を行えることを結び付けます。例えば歩く力が改善しても、自宅の段差や狭いトイレでは助けが必要な場合があります。病棟での生活や退院後の環境も視野に入れ、本人に必要な動作を支えることが重要です。建築計画は、このような治療・生活・支援の関係を空間として整える仕事です。