資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅰ(計画) 問15

問題・正答・学習用解説

問題

図書館等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    金沢市立玉川図書館(石川県、1979 年)は、東側の開架部門と、中庭を挟んで西側にある学習・管理部門を分けることによって、開架部門を気軽に立ち寄り利用できる空間とした図書館である。
  2. (2)
    朝霞市立図書館本館(埼玉県、1987 年)は、成人開架と児童開架をL字型平面に振り分け、自習室を設けず、閲覧席を少数にするなど、貸出を重視した図書館である。
  3. (3)
    苅田町立図書館本館(福岡県、1990 年)は、多様な閲覧席と豊富な資料を備え、開架書架群に沿ってベンチ、和室、屋外読書スペースなどを設けることで、来館者が長い時間を過ごせるように計画した図書館である。
  4. (4)
    ぎふメディアコスモス(岐阜県、2015 年)は、木造格子屋根をもつ市立中央図書館や、市民活動交流センター、多文化交流プラザ及び展示ギャラリー等からなる複合施設である。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

正解は2です。成人向けと児童向けの開架をL字形に振り分け、貸出を重視した説明は、日野市立中央図書館の当初の計画に対応します。朝霞市立図書館本館は、館内で本を読み、調べ物をし、長く利用する機能も備える図書館であり、この説明との組合せが不適当です。
開架とは、利用者が本棚の間に入り、自分で本を手に取れる方式です。日野ではL字の交わる位置に入口やカウンターを置き、一般開架と児童開架を同じ階に設けます。親子がそれぞれ本を選びながら互いの気配を感じやすい関係です。本を利用者へ届け、家庭でも読んでもらう貸出サービスの重視が、当初の空間構成にも表れています。
対して、館内で過ごすことを重視する計画では、資料を置く面積だけでなく、落ち着いて読む席や調べる席等を充実させます。本問の苅田はベンチ、和室、屋外の場所まで読書の居場所を用意し、ぎふは図書館に交流・展示等を組み合わせています。図書館という同じ用途の中でも、『資料を選ぶ』『借りて持ち帰る』『その場で使う』のどこを特に支える計画かを読み分けます。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適切です。玉川図書館では中庭を挟んで、東側の開架部門と西側の学習・管理部門を分けます。開架は利用者が直接本を選ぶ部分、管理は職員の仕事や運営に関する部分です。目的の違う部門を整理することで、少しだけ本を見たい人も開架へ気軽に入りやすくなります。中庭は棟を隔てるだけでなく、光や緑、外への視線を与える空間でもあり、部門の分け方と居心地を同時に考えた構成です。

選択肢2

(2)不適当です。このL字形の一般・児童開架と貸出重視の説明は、日野市立中央図書館の当初の計画に対応します。朝霞本館は館内読書や調査の機能等も備えており、少ない閲覧席で貸出に重点を置く事例としての対応が誤っています。貸出重視は、本を図書館に置いたまま読ませることより、利用者が選んで借り、生活の中で読む機会を広げる考え方です。現在の運用変更と当初の建築計画は分けて理解します。

選択肢3

(3)適切です。苅田町立図書館では、本棚の近くのベンチ、和室、屋外の読書空間など、多様な居場所を用意します。机と椅子を一種類だけ並べるのではなく、短く座って本を選ぶ、ゆっくり読む、外の空気を感じて読むといった過ごし方を選べます。資料の充実に加え、それを使う時間を支える空間を整えることで、来館者が長く滞在しやすくなります。滞在型という特徴を具体的な居場所へ結び付けます。

選択肢4

(4)適切です。ぎふメディアコスモスは、木の格子状の屋根をもつ図書館に、市民活動、多文化交流、展示等の機能を組み合わせた施設です。多文化交流は言語や文化の背景が違う人々の交流を支えること、市民活動は地域の人々の様々な取組を指します。本を借りる用事だけでなく、展示を見る、活動に参加するなどの入口が生まれます。複合施設の意味を、異なる用途がただ隣にあることだけでなく、利用のつながりとして捉えます。

周辺知識

図書館では、資料を保存することと、利用者が見つけて使えることを両立させます。開架は自分で棚を見て選べる方式、閉架は一般の利用者が自由に入らない書庫等から職員に資料を出してもらう方式です。閲覧席は資料を読む場所で、レファレンスは調べ物について資料の探し方等を支援するサービスです。単に本棚の数だけでは図書館の機能は分かりません。
貸出中心の計画では、本を選ぶ流れやカウンターの位置、子ども連れの利用等が重要になります。滞在を重視すると、長く座っても過ごしやすい席、静かに調べる場所、休息や屋外との関係も重要です。ただし貸出と滞在は完全に二者択一ではなく、図書館ごとに重点と組合せが異なります。
図書館に交流や展示を組み合わせる場合は、話し声の出る活動と静かな読書の距離、閉館時刻が異なる部門の出入口、職員が見守れる範囲などを考えます。利用者を建物に長く留めることだけが目的ではありません。本を通して学び、必要な情報へ到達し、自分に合う場所を選べることを、平面や家具、運営の方法で支えます。