学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅰ(計画) 問14
問題・正答・学習用解説
問題
事務所ビルに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は3です。丸の内ビルディングの高層オフィスは、中央に大きなアトリウムを設け、その周囲の廊下から各所を見渡すという構成ではありません。高層部はエレベーター、階段、設備等を集めるコアを中心に、周辺へ執務空間を配置する構成です。低層部に吹抜けのある複合ビルだからといって、高層のオフィス階まで同じ構成とは限りません。
アトリウムは、複数階にわたる吹抜けをもつ大きな内部空間で、採光、交流、建物内の位置を分かりやすくすることなどに役立ちます。一方、コアは建物の各階をつなぐ移動や設備等の機能をまとめる部分です。どちらも平面の中央に置けますが、床を抜いて視線を通す空間と、必要な諸機能を収める部分では役割が違います。
本問の他の建物は、柱と上方の光で森のような空間をつくるジョンソン・ワックス、屋内庭園を囲むフォード財団、段状の床を大きな屋根で覆うROKIです。名称と外観だけで覚えず、床・柱・屋根の関係を断面で想像し、どこに光と人の視線が通るかを対応させます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適切です。ジョンソン・ワックス・ビルでは、上へ行くほど柱頭が円盤状に広がる柱が大きな執務空間を支えます。その上部や天井近くから光を導き、木々の間から光が届くような内部空間をつくります。ハイサイドライトは壁の高い位置に設ける採光用の窓です。『自然を再現』は室内に本物の森林を植えるという意味ではなく、柱の形と光の入り方によって自然を感じる空間を構成するという説明です。
選択肢2
(2)適切です。フォード財団本部は、植栽のある大きなアトリウムに対して、執務スペースがL字状に向き合う構成です。単に玄関に観葉植物を置くのではなく、屋内庭園が複数階の仕事場と関係する中心的な空間になっています。机のある室内と、その先に見える緑や大きな空間を組み合わせる計画です。外部の庭を建物が囲む中庭と違い、ここでは屋内の大きな吹抜けの中に庭を取り込む点が特徴です。
選択肢3
(3)不適当です。丸の内ビルディングの高層オフィスを、中央の吹抜けとそれに面する廊下で構成する説明は一致しません。中央部のコアにはエレベーター等の移動・設備機能をまとめ、その周辺にオフィスを置きます。窓側の使いやすい執務空間を確保する構成と、中央のアトリウムへ廊下を開く構成を区別します。また低層の商業・公共的な空間の特徴を、高層の基準階の特徴へ置き換えないことが大切です。
選択肢4
(4)適切です。ROKIでは床の高さを段状に変えた仕事場を、一つの大きな屋根の下にまとめます。トラスは三角形を基本に部材を組んで荷重を支える骨組みで、屋根では木と鉄を組み合わせています。ガラスから入る光を天幕で和らげ、時間による光の変化も感じられる空間とします。上下の階を壁と床で完全に切り離す構成とは異なり、段差を越えて人の気配や活動が見えることも計画の特徴です。
周辺知識
事務所の平面は、働く人が机を並べる場所だけで決まりません。エレベーターや階段、トイレ、配管等の位置をまとめるコアがあり、その周囲に移動経路や執務室を配置します。コアを中央に置くと窓側の周囲を仕事場として使いやすく、片側へ寄せれば別のまとまった平面をつくれます。中心にある空間をすべてアトリウムと呼ばないようにします。
大きな吹抜けは、離れた階の存在を感じたり、建物内の位置をつかんだりする助けになります。一方で、音や空調、日射の扱いも考える必要があります。ガラス屋根を大きくするだけでは、まぶしさや暑さの問題が生じ得るため、ROKIのような光を調整する要素と組み合わせます。
実例を学ぶ際は、ジョンソン・ワックスの柱と上部採光、フォード財団の庭園と執務室、丸ビルのコアと周辺オフィス、ROKIの段状床と屋根という組合せで覚えます。『自然を取り込む事務所』という共通点があっても、実際の植栽、光の表現、外の風景への視線など、実現する方法は一つではありません。