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学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅰ(計画) 問13

問題・正答・学習用解説

問題

集合住宅・住宅団地の改修の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    北側に階段室をもつ階段室型の5 階建て集合住宅において、バリアフリー改修のため、北側に廊下棟を増築し、ここに着床するエレベーターを設置するとともに増築した廊下に面して各住戸の新しい玄関を設置した。
  2. (2)
    既存の集合住宅をサービス付き高齢者向け住宅とするため、バリアフリー改修を施し、各住戸専用部分の床面積が25 m2\displaystyle m^{2}以上となるようにした。
  3. (3)
    分譲集合住宅の共用部分において、形状の著しい変更を伴わない大規模修繕工事について、区分所有者数及び議決権の各過半数の決議を経て行うこととした。
  4. (4)
    住宅団地内の道路の改修において、歩車共存を目的として、車の通行部分を蛇行させスピードを落とさせるラドバーン方式を採用した。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は4です。車の通行部分を曲げて速度を落とし、歩行者と車が同じ道路空間を安全に使えるようにする手法は『ボンエルフ』です。『ラドバーン方式』は歩行者と車の通る経路を分離する考え方なので、目指す交通の関係が違います。
ボンエルフでは、車が一直線に速く走り抜けにくい形をつくります。例えば車の通る部分を蛇行させ、植栽や滞留空間を組み合わせることで、運転者が周囲に注意し、速度を抑えて通る道路とします。一方、ラドバーン方式では、住宅へ入る車の道路と、緑地等を通る歩行者の経路を分け、両者の交錯そのものを減らします。
集合住宅の改修では、建物の中の段差だけでなく、敷地内の道路、生活支援の仕組み、所有者の合意まで考える必要があります。選択肢1は玄関まで連続した段差のない経路、2は高齢者住宅としての面積と設備、3は共用部分を修繕する意思決定の問題です。改修は新しい設備を付けるだけでなく、実際の暮らしの困り事をどこまで解消できるかで評価します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適切です。階段室型住宅では、エレベーターを付けても、停止する床と住戸玄関の間に階段が残れば段差は解消しません。本問は北側に廊下棟を増築し、その床へエレベーターを着床させ、新しい玄関まで廊下で結びます。着床はエレベーターがその階の床位置に停止することです。機械の追加だけで終わらず、道路から住戸に入るまでの経路をつなぎ直す点が、バリアフリー改修として重要です。

選択肢2

(2)適切です。サービス付き高齢者向け住宅では、住戸の専用部分は原則25 m2\displaystyle 25\,\mathrm{m^2}以上とし、段差解消や手すり等のバリアフリーの基準も満たします。専用部分は、その住戸の入居者が使う部分で、皆で使う廊下を各戸の面積へ自由に足せるという意味ではありません。さらに安否確認と生活相談のサービスも必要です。本問の改修は住宅側の条件に対応しており、面積を確保するだけですべての登録条件を満たすとは考えません。

選択肢3

(3)適切です。令和2年の制度では、共用部分の形状や効用の著しい変更を伴わない修繕は、原則として区分所有者数と議決権の各過半数で決議します。大規模修繕という工事名や金額だけで、特別多数決になるわけではありません。外壁の補修等で既存の性能を維持する工事と、建物の姿や使い方を大きく変える工事を区別します。所有者の人数と持分等に応じた議決権の両方を数える点にも注意します。

選択肢4

(4)不適当です。蛇行によって車の速度を抑える歩車共存はボンエルフです。ラドバーン方式では歩行者と自動車の経路を分離し、例えば車は住宅へ接続する袋小路、歩行者は連続する緑地内の道を使う構成とします。どちらも安全を目指しますが、共存と分離では手段が違います。道路を曲げたという形だけでなく、最終的に歩く人と車が同じ空間を使うのか、別々の経路を使うのかで名称を判断します。

周辺知識

住宅改修の計画は、身体の動き、生活のサービス、権利関係の三つを重ねて考えます。車椅子で各階に上がれても、玄関まで数段の階段があれば一人では入れません。廊下や玄関まで含めて段差のない経路をつくり、扉の開閉や方向転換の余地も確認することで、改修が日常生活に役立ちます。
サービス付き高齢者向け住宅では、住まいとしての使いやすさと、生活を支える体制を組み合わせます。安否確認は普段と違う状態等を把握すること、生活相談は困り事を相談できることです。病院のように治療をする施設と同じではなく、すべての介護サービスが家賃に当然含まれるという制度でもありません。
分譲住宅の廊下、外壁等は複数の所有者に関わる共用部分なので、工事の内容に応じた合意が必要です。大規模という日常語と、法律上の著しい変更を区別します。本問は令和2年の決議の仕組みを前提とし、その後の法改正による要件をさかのぼって当てはめません。交通計画でも同様に、名前の印象より実際の使い方と制度の条件を確かめることが大切です。