学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅰ(計画) 問10
問題・正答・学習用解説
問題
交通手段を考慮した都市計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。一般車両の乗り入れを禁止し、歩行者の空間にバスや路面電車などの公共交通を通すものは『トランジットモール』です。選択肢はこれを『セミモール』と呼んでいるため、用語の対応が不適当です。
モールは歩行者が歩いたり買物をしたりする空間を充実させた道路等を指します。セミモールでは一般の車の通行を残しつつ、車道を狭くするなどして歩道を広げ、歩行者の使いやすさを高めます。対してトランジットモールでは一般車を除き、公共交通の便利さと歩行者中心の街路を両立させます。
例えば駅前の商店街で、自家用車は入れないものの、バスが街路内に停留所を持ち、歩いて店へ行きやすくした計画はトランジットモールです。一般車が一車線を通り、残りを広い歩道へ変えた計画ならセミモールの考え方です。『車が少ない』という印象だけでは両者を区別できません。通行を認める交通手段は何か、歩行者空間をどう増やすかを確認することが、本問を解く手掛かりです。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。一般車を禁止し、バスや路面電車を通すのはトランジットモールです。セミモールは一般車の通行を残しながら歩行者空間を広げます。『公共交通だけを通す』という条件が名称を決める手掛かりです。車をすべて排除した歩行者専用のモールとも異なります。買物や歩行をしやすくするという共通目的はあっても、どの車両を通すかによって運営や街路の設計が変わります。
選択肢2
(2)適切です。キスアンドライドは、駅やバス停まで家族等が車で送迎し、そこから本人が公共交通へ乗り換える形態です。送迎車は本人を降ろした後、そのまま帰るなどします。本人が自分で運転して駅の駐車場へ置くパークアンドライドとは違います。計画では長時間の駐車区画だけでなく、安全に乗降できる停車場所や車の待機・回転の空間が必要です。乗り換えまで誰が運転し、車が残るかを考えると区別できます。
選択肢3
(3)適切です。BRTはバス高速輸送システムのことで、専用の走行空間、車両、停留所や運行方法を工夫し、時間どおりに多くの人を運びます。専用道路等は一般車の渋滞の影響を減らし、連節車両は一度に乗せる人数を増やします。乗降や料金支払の方法を工夫して停車時間を短くすることも効果があります。単に速度の出るバスを導入する名称ではなく、道路から運行までを組み合わせた交通システムです。
選択肢4
(4)適切です。フリンジパーキングは、中心部の周辺に車を止め、公共交通等で中心部へ移る仕組みです。フリンジは周辺という意味で、都心へ車が集中するのを抑え、歩行環境や交通の混雑を改善する狙いがあります。目的地の真前まで車で行く方式とは異なります。駐車場を造るだけでは使われにくいため、乗換先のバス等の頻度、料金、案内、歩く経路なども一体で計画することが重要です。
周辺知識
交通を考慮した都市計画では、道路を広げて車を多く流すことだけが解決方法ではありません。限られた道路空間を、歩く人、自転車、公共交通、自家用車にどのように配分するかを考えます。多くの人が一台のバスに乗れば、一人ずつ車に乗る場合より少ない道路空間で移動できることがあり、歩行者空間の確保にもつながります。
本問の用語は、街路そのものの使い方と、交通手段の乗換え方に分けて整理できます。セミモール・トランジットモールは街路に誰を通すか、キスアンドライドは駅等までの送迎、フリンジパーキングは都心周辺での駐車と乗換え、BRTはバスの走行・運行全体の性能を高める仕組みです。
乗換えを促すには、手段の境目を使いやすくする必要があります。例えば駐車場からバス停まで遠く、雨にぬれ、時刻表も分からなければ、自家用車で中心部へ向かいたくなります。距離、待ち時間、案内、料金、バリアフリーを一緒に整えることが、交通政策を実際に使われる仕組みにします。用語を具体的な一日の移動に置き換えると、それぞれの役割がつながります。