学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅰ(計画) 問9
問題・正答・学習用解説
問題
図は、高齢者、障害者等の利用に配慮した階段の計画案の模式図である。「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(国土交通省)」に照らして、最も不適当なものは、次のうちどれか。
選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。図のAは、階段の上端で斜めの手すりが水平になる部分の長さです。建築設計標準では、上端の手すりを水平に45cm以上延長する配慮が求められます。30cmとした本問は短すぎます。踊場へ連続させること自体は適切ですが、水平延長の長さという別の条件が不足しています。
階段を上り終えるときは、最後の段から平らな床へ足を移し、体勢を安定させるまで支えが必要です。下り始めるときは、段差へ踏み出す前に手すりをつかめることが重要です。段が始まる位置で手すりもすぐ斜めになったり終わったりすると、体を支えやすい位置へ手を置けない場合があります。
図にはAの延長、Bの下段手すりの高さ、Cの点状ブロック、Dの有効幅員が描かれています。いずれも階段を安全に使うための寸法ですが、測る向きと目的が異なります。Cの段差手前30cmという距離を、Aの手すりの水平延長へ取り違えないことが大切です。数字だけでなく、その場所で利用者がどのように足と手を動かすかを考えて判断します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。上端の水平延長Aは45cm以上とする配慮が必要で、30cmでは不足します。踊場まで手すりを連続させる計画はよいものの、最後の段の位置から十分な水平部分を確保することも必要です。上り終わりに体を支え、下り始める前に安定して握るための長さです。手すりが途中で途切れないという条件と、段の前後で握りやすい範囲を設けるという条件は、別々に確認します。
選択肢2
(2)適切です。二段手すりの下段の高さBを段鼻から60cmとすることは、低い位置で握る人に配慮した寸法です。段鼻は踏面の先端で、図ではそこから手すりまでの高さを測っています。上段だけでは握りにくい背の低い人や子ども等にも選択肢をつくります。階段の途中では床が斜めに続くので、踊場の床から一律に測るのではなく、段との位置関係に沿って高さを確保します。
選択肢3
(3)適切です。点状ブロックCは、前方に段差があることを足裏や白杖等で知らせるために設けます。階段の直前では、気付いたときには足が段へ近づきすぎるおそれがあるため、手前に30cm程度の余地を取ります。点状の突起は注意を促すもので、進行方向を案内する線状ブロックとは役割が違います。図の位置で段の存在を事前に知り、いったん体勢を整えてから階段へ進めるようにします。
選択肢4
(4)適切です。階段の有効幅員を算定するとき、手すりの突出幅は10cmを限度にないものとみなせる扱いがあります。本問はこの条件でDを140cmとしています。手すりを設けることにより身体を支えやすくしつつ、幅の算定では所定の範囲で調整する制度です。どんな大きな突出も無制限に無視できるわけではなく、10cmという限度があります。手すりの高さBや延長Aとは異なる、横幅の算定の話です。
周辺知識
階段は、単に段の寸法をそろえるだけでなく、近づく、段に気付く、手すりを握る、上り下りする、平らな床へ移るという一連の動作で考えます。途中の斜め部分が安全でも、始点や終点で支えがなくなったり、段差を見落としたりすれば転倒につながります。そのため点状ブロック、手すりの連続、水平延長を組み合わせます。
手すりは、人によって握りやすい高さが違います。二段にすると、身長や姿勢に応じて選びやすくなります。また、端部が衣服やかばんに引っ掛からない形、手が壁や金物にぶつからず連続して滑らせられる取付け、滑りにくく握りやすい太さなども重要です。一本の棒が付いているだけで、使いやすい手すりになるわけではありません。
建築設計標準の寸法は、法令の最低基準だけでなく、より円滑に利用するための望ましい配慮を含みます。本問はその標準に照らす問題なので、別の建物で最低限適法になる寸法だけでは判断できません。図のA・B・C・Dへ寸法の意味を書き込み、誰のどの動きを支える数値かを対応させると、近い数値でも混同しにくくなります。