学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅰ(計画) 問5
問題・正答・学習用解説
問題
建築物の外壁に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は2です。目地は外壁のパネルなどの部材どうしの継ぎ目で、雨水が入りやすい部分です。内外の圧力差を小さくし、入った水を重力で排出するという説明は『オープンジョイント』の考え方です。目地を材料で充填して水を止める『フィルドジョイント』と取り違えています。
外から風が当たると外壁の外側の圧力が高まり、小さなすき間から空気とともに雨水が押し込まれることがあります。オープンジョイントでは、外側の雨を切る部分と、内側の気密を確保する部分を分け、その間の空間を外気に通じさせて圧力差を小さくします。さらに、その空間に入った水を屋外へ排出する経路を設けます。
ここで『内外を等圧』とは、外気と目地内の所定の空間との圧力を近づけることで、室内を雨風に開放する意味ではありません。対してフィルドジョイントは、シーリング材などを目地へ詰めて連続した防水線をつくる方法です。雨を入れない材料に主に頼る方法と、圧力差と排水経路を管理する方法を区別すると、選択肢の名称の誤りが分かります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適切です。外壁を貫通する給気・排気ダクトは、開口の周囲から雨が入る可能性を考えて、屋外側へ下がる勾配を設けます。入り込んだ水が重力で外へ戻り、室内へ流れにくくするためです。逆に室内側へ下がっていると、開口に入った水を室内へ案内してしまいます。外側のフードや周囲の防水も必要ですが、それだけに頼らず、入った水の行き先を計画することが耐久性につながります。
選択肢2
(2)不適当です。圧力差を抑えて雨水を入りにくくし、入った水を排出する構成はオープンジョイントです。フィルドジョイントは目地をシーリング材などで充填する方式です。説明の中身と方式名が対応していません。オープンという名称でも壁に単純な穴を開ける意味ではなく、雨を切る部分、気密を確保する部分、その間の等圧空間と排水の組合せが必要です。名前だけで防水性が低いと判断しないようにします。
選択肢3
(3)適切です。地震では上下の床が同じだけ横へ動くとは限らず、階と階の間に相対的なずれが生じます。これが層間変位です。ファスナーは外壁パネルを躯体へ留める金物で、所定の部分をスライドさせることで、骨組の変形にパネルが追従できるようにします。すべてを硬く固定して変形を押し付けると、パネルや取付部を損傷させるおそれがあります。必要な力を支えつつ、必要な動きを許す接合です。
選択肢4
(4)適切です。シーリング材は目地をふさぐ弾性のある材料ですが、日射、温度変化、繰返しの変形などで劣化します。外壁パネルがまだ使える期間でも、先に補修や交換が必要となる場合があります。そのためシーリング材だけを唯一の防水手段とせず、雨水が入った場合に外へ抜ける経路を用意することは合理的です。排水機構があるから点検不要なのではなく、点検・交換と組み合わせて長期の防水性能を保ちます。
周辺知識
カーテンウォールは、建物の主な重さを支える骨組から分けて取り付ける外周の壁です。カーテンという名前でも布ではなく、ガラス、金属、コンクリートなどのパネルを用います。骨組が地震や温度で動くため、壁の取付部と目地には、その変形を安全に受け流す働きが必要です。
防水を考える際は、水があること、水の通り道があること、水を動かす力があることを分けます。雨水を外側で切る、すき間をふさぐ、圧力差を減らす、入った水を外へ排出する、といった対策は別の要素を扱います。すべてを一つのシーリング材で永久に解決できると考えるより、複数の対策を重ねることが重要です。
水は低い方へ流れるので、ダクトの外下がりや排水経路の勾配には意味があります。ただし、排水口を設けても途中が塞がったり、逆勾配になったりすれば機能しません。設計では雨水が入り得る位置から出口までの経路を追い、施工ではその形を確実につくり、維持管理では詰まりや劣化を点検します。外壁は完成時の見た目だけでなく、動きと水の行き先まで考える部位です。