学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅰ(計画) 問4
問題・正答・学習用解説
問題
高齢者、障害者等に配慮した屋内競技場の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。輝度は、ある方向から見た面の明るさを表す量です。階段の踏面は足を載せる水平な面、段鼻はその先端で次の段との境になる部分です。この二つの輝度比を1.0にすることは、見かけの明るさを同じにすることを意味します。
例えば踏面の輝度が20、段鼻も20なら、比はです。境界の明暗差がないため、視力やコントラストを見分ける力が低下した人には段の端が分かりにくくなります。そこで、踏面と段鼻に明るさ等の差を設け、段の位置を認識しやすくする配慮が必要です。『1.0』にそろえるという計画は、その目的と反対です。
色名が異なれば必ず見分けやすいとも限りません。例えば異なる色でも同程度の明るさなら、照明や見え方によって境界が曖昧になります。段鼻の識別は手すりや滑りにくい床と合わせて転倒防止を支えます。屋内競技場では多様な人が利用するため、入口の幅や便所、観覧席だけでなく、階段の情報が見て分かることも重要な計画条件です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適切です。幅150cmの廊下に面する居室の出入口を有効幅90cmとすることは、車椅子使用者などの通過を考えた寸法です。有効幅は、戸を開けたときに実際に通れる幅で、枠や戸などが占める部分を除いて考えます。図面上で開口を90cm取っても、戸が出っ張って通行幅が狭ければ同じ条件にはなりません。また、廊下から曲がって入る動きもあるため、出入口と廊下の幅を一緒に検討します。
選択肢2
(2)適切です。オストメイトは人工肛門や人工膀胱を造設した人を指し、排せつ物をためる装具の交換や洗浄などを行う設備が必要です。汚物流しの近くに着替え台があると、汚れた衣服の交換などを立ったまま不安定な姿勢で行う負担を減らせます。便器だけを設ければ同じように利用できるわけではありません。器具の配置は、排せつ、洗浄、装具交換、着替えという具体的な動作をたどって計画します。
選択肢3
(3)適切です。車椅子で観覧できる場所を一か所だけに固定するのでなく、複数人が利用できるスペースを異なる位置に分散することは、観覧する位置の選択肢を確保する計画です。同行者との観覧や入退場の経路、前の観客が立った場合の見え方なども考えます。床に車椅子が置ける面積があるだけでなく、競技が見え、安全に到達・避難できることが必要です。本問の分散配置はその方向に合っています。
選択肢4
(4)不適当です。踏面と段鼻の輝度比1.0は、両方の見かけの明るさが同じ状態です。高齢者等が段の境を知覚しやすくするには、明暗等の差を確保する必要があります。例えば暗めの踏面に明るい段鼻を設けるなど、実際の照明下で端が分かるよう計画します。ただし光沢の強い材料でまぶしさを生じさせる方法では、かえって見づらくなります。明るさの差と反射、照明を合わせて確認します。
周辺知識
バリアフリーの計画では、通れる寸法を確保するだけでなく、必要な情報を認識でき、無理なく操作できることも考えます。車椅子使用者には出入口の有効幅や方向転換の空間、視覚に不自由がある人には段の位置の分かりやすさ、オストメイトには排せつ後の処理や着替えを行える設備が重要です。利用者の条件ごとに困る場面が異なります。
階段では、段の先端がどこか分からないと足を置く位置を誤ります。段鼻を目立たせることは、その位置情報を視覚で伝える工夫です。色の違いだけでなく明暗差を考えるのは、加齢や照明条件等によって色や細かな模様の見え方が変わるためです。逆に床へ強い模様を付けすぎると、模様を段差と取り違える可能性もあります。
観覧席も『専用場所を一つ作る』だけで終わりません。どこで見るかを選べること、同行者と一緒に過ごせること、避難時にも取り残されないことが大切です。問題の設備名や寸法を暗記するときは、利用者が入口から移動し、競技を見て、便所を使い、帰るまでの具体的な場面に置き換えると、その計画の意味が理解できます。