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学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅰ(計画) 問2

問題・正答・学習用解説

問題

日本の歴史的な建築物に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    東三条殿(平安時代)などの寝殿造りは、柱は丸柱とし、寝殿の周囲には蔀戸を吊り、床は板敷きであったといわれている。
  2. (2)
    鹿苑寺金閣(室町時代)は、最上層を禅宗様仏堂風、中間層を和様仏堂風、初層を住宅風とした三層の建築物である。
  3. (3)
    光浄院客殿(安土桃山時代)は、欄間や長押をはじめ、建具や金具、釘隠や引手などに技巧を凝らし、様々な意匠が施された数寄屋風の建築物である。
  4. (4)
    旧開智学校校舎(明治時代)は、アーチや隅石等の洋風の意匠と唐破風等の和風の意匠が混在した擬洋風の建築物である。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は3です。光浄院客殿は、格式のある接客空間を備えた書院造の代表的な建物です。数寄屋風の建物とした記述が不適当です。建物の様式を、装飾に手が込んでいるかどうかだけで分類してはいけません。
書院造では、畳を敷いた室や建具による間仕切り、客を迎える座敷の構成などが発達しました。床の間は掛け軸や花などを飾る場所、違棚は高さをずらした棚、付書院は窓辺の書き物をする台の形式を受け継ぐ座敷飾りです。光浄院客殿では、こうした要素や室の配置から、主客の位置や格式を意識した書院造の性格を読み取ります。
数寄屋風は、茶室に通じる好みや材料の扱いを取り入れた、比較的自由な意匠の考え方です。選択肢に出る欄間は天井と建具の間の部分、長押は柱に沿って水平に回す部材、釘隠や引手は金具などです。これらに工夫があること自体は、直ちに数寄屋風とする根拠にはなりません。用途、平面の秩序、座敷の構成を建物名と結び付けて覚えることが重要です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適切です。寝殿造は平安時代の貴族住宅の形式で、丸柱や板敷きの床、周囲に吊るす蔀戸などを特徴とします。蔀戸は格子などを備えた戸を上へ開いて留める形式で、開けると外部と室内がつながります。板床の上に必要に応じて敷物や家具を置く生活を想像すると、後の畳を敷き詰めた部屋との違いが分かります。東三条殿は、この寝殿造を理解する代表的な事例として位置付けられます。

選択肢2

(2)適切です。金閣は、最上層の禅宗様仏堂風、中間層の和様仏堂風、初層の住宅風というように、異なる性格を三層に重ねた建物として読み取れます。禅宗様は禅宗寺院に関係する建築様式、和様は日本で受け継がれた仏堂の様式です。寺院の案内等では中層を武家造や書院造と説明する場合もありますが、本問は各層で性格が異なるという対応を確認します。金色の外観だけでなく、層ごとの構成が手掛かりです。

選択肢3

(3)不適当です。光浄院客殿は数寄屋風ではなく、書院造の代表例です。書院造では客を迎える場の格式や室の序列、床の間・違棚・付書院などの座敷飾りが重要です。欄間や金具が工夫されているという一部の印象だけで、茶室風の自由な意匠を持つ数寄屋へ分類することはできません。誤っているのは建物と様式の対応なので、まず『光浄院客殿―書院造』を確かめ、その室内構成の意味まで結び付けます。

選択肢4

(4)適切です。旧開智学校校舎は、日本の大工の技術に西洋風の形を取り入れた擬洋風建築です。アーチは曲線を描く開口等の形式、隅石は建物の角を石で強調する意匠、唐破風は日本建築で使う曲線形の破風です。洋風の形と和風の装飾が一つの建物に共存します。西洋の構法をそのまま移した建物と考えるのでなく、明治初期に新しい建築の姿を日本の技術で受け止めた例として理解します。

周辺知識

日本の住宅史は、部屋の使い方と境界のつくり方に着目すると理解しやすくなります。寝殿造では、柱で支えた開放的な空間を、屏風や御簾などの移動できる道具で使い分けました。書院造では畳や建具、座敷飾りなどが整い、室の構成と接客の秩序がよりはっきりします。数寄屋風では茶の湯に関わる好みや材料の表情などが設計に取り入れられます。
ただし、歴史的な様式は、すべての建物が同じ姿へ一斉に変わるというものではありません。金閣のように一つの建物に複数の様式が組み合わされる例もあります。どの部分を何と呼ぶかに説明の違いがあることもあるので、建物全体を一つの単語で断定するより、各階や室内の具体的な特徴を見ることが大切です。
擬洋風建築も、和と洋のどちらかに完全に分かれるわけではありません。旧開智学校では伝統的な曲線屋根と洋風の塔屋や意匠が共存します。時代名、建物名、様式名だけを丸暗記するのでなく、『誰が何に使い、どの技術で、どのような室や外観を造ったか』を短い物語としてつなげると、事例の取り違えを防ぎやすくなります。