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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問29

問題・正答・学習用解説

問題

次の記述のうち、関係法令上、誤っているものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    「景観法」に基づき、景観計画区域内において、建築物の外観を変更することとなる模様替をしようとする者は、あらかじめ、行為の種類、場所、設計又は施行方法等について、景観行政団体の長の許可を受けなければならない。
  2. (2)
    「労働安全衛生法」に基づき、事業者は、高さが5m以上のコンクリート造の工作物の解体の作業については、作業主任者を選任しなければならない。
  3. (3)
    「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」に基づき、解体工事業を営もうとする者は、建設業法に基づく土木工事業、建築工事業又は解体工事業に係る建設業の許可を受けている場合を除き、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。
  4. (4)
    「労働安全衛生法」に基づく石綿障害予防規則により、事業者は、建築物の解体の作業を行うときは、あらかじめ、当該建築物について、石綿等の使用の有無を目視、設計図書等により調査し、その結果を記録しておかなければならない。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は1です。景観計画区域内で建物の外観を変更する模様替をする際の原則的な手続は、景観行政団体の長への『届出』です。『許可を受けなければならない』とした点が誤っています。景観行政団体とは、地域の景観を守り育てる計画や事務を担う自治体です。
景観は建物一棟だけで決まりません。周辺の建物と大きく異なる色や形へ変更すると、街並み全体に影響します。そのため景観法は、外観を変更する工事等を事前に行政へ知らせ、景観計画との関係を確認できるようにしています。模様替とは材料や仕様などを変える工事で、ここでは建物の外から見える姿が変わることが重要です。
届出と許可は、どちらも行政への手続ですが、法的な意味が異なります。届出は所定の事項を行政へ通知する仕組みです。許可は、一般には制限されている行為について、申請を審査したうえで行えるようにする判断です。景観の届出にも着手時期の制限や勧告等の仕組みがあるので、単に知らせれば何でもできるわけではありませんが、制度名を許可に置き換えることはできません。まず問題が『景観計画区域』を述べている点を確認して判断します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)誤りです。景観法第16条の原則的な手続は届出で、建築物の外観を変える修繕・模様替や色彩の変更等が対象となります。例えば外壁の材料と色を大きく変更する計画を、場所や設計内容とともに自治体へ届け出ます。景観計画区域にはこの届出制度がありますが、景観地区には建築物の形態意匠の認定など別の仕組みもあります。似た名称の区域を一括して『行政の許可が必要』と覚えず、区域名と手続の組合せで確認することが大切です。

選択肢2

(2)適当です。高さ5m以上のコンクリート造工作物の解体等は、作業主任者を選任する対象です。作業主任者は、危険な作業を適切な方法と順序で行わせるため、必要な資格を持って作業を直接指揮する人です。コンクリートの部材は重く、支えている部分を先に壊すと、予想しない方向に崩れるおそれがあります。5m以上という条件には、ちょうど5mも含まれます。解体業者として営業できる資格の話とは別に、その現場の危険な作業を誰が指揮するかを定めています。

選択肢3

(3)適当です。解体工事業を営むには、原則として営業する区域の都道府県知事の登録が必要です。ただし、建設業法による土木工事業・建築工事業・解体工事業の許可を受けている者は、ここで述べる解体工事業登録を別に受ける必要がありません。既に一定の審査を経た許可業者について、同じ目的の資格確認を重ね過ぎない扱いです。例外は列挙された業種の許可に限られるので、例えば建設業の何らかの許可を一つ持っていれば全て免除される、と広げてはいけません。

選択肢4

(4)適当です。石綿は非常に細い繊維を持つ物質で、建材に含まれている場合、解体で粉じんとなって飛散し、吸い込んだ人の健康を長期にわたり損なうおそれがあります。そのため解体前に、設計図書等の記録と現物の目視などから使用の有無を調査し、結果を記録します。令和2年度の本問は、この事前調査と記録の原則を問うています。見た目だけで安全と決めるのではなく、材料の情報を調べ、使用状況に応じた作業方法を準備することが必要です。

周辺知識

建築工事には、完成する建物の基準だけでなく、街並み、働く人の安全、廃棄物、営業資格に関する法律も関係します。景観法は地域から見える外観、労働安全衛生法は作業する人の危険や健康、建設リサイクル法は解体等に伴う分別や資材の再利用と解体業者の登録を扱います。問題文の行為が何に影響するかを考えると、法律の役割を整理できます。
手続の言葉も区別しましょう。届出は行政へ必要事項を知らせること、許可は行政の審査を経て行為を認めてもらうこと、登録は業者等の情報を所定の要件のもとで公的な名簿に載せることです。いずれも申請書のような書類を使うため似て見えますが、必要となる条件や行政の判断の仕方は異なります。
また、事業者として仕事を受けられることと、現場を安全に進められることも別です。解体工事業の登録や建設業許可があっても、対象作業には作業主任者が必要ですし、石綿の事前調査も省けません。営業の資格、現場の指揮、材料に応じた危険対策という三つの段階が重なって安全を支えている、と考えると各肢がつながります。