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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問28

問題・正答・学習用解説

問題

以下の条件の建築物に関する次の記述のうち、建築基準法又は建築士法上、誤っているものはどれか。【条件】立地:防火地域及び準防火地域以外の地域用途:物品販売業を営む店舗(各階に当該用途を有するもの)規模:地上4階建て(避難階は1階)、高さ15m、延べ面積2,000m²構造:木造(主要構造部に木材を用いたもの)所有者等:民間事業者

選択肢

  1. (1)
    時刻歴応答解析により安全性の確認を行う場合を除き、許容応力度等計算、保有水平耐力計算、限界耐力計算又はこれらと同等以上に安全性を確かめることができるものとして国土交通大臣が定める基準に従った構造計算のいずれかによって、自重、積載荷重、地震等に対する安全性を有することを確かめなければならない。
  2. (2)
    当該建築物の通常火災終了時間及び特定避難時間が75分であった場合、その柱及びはりについて、耐火構造とする場合を除き、通常の火災による75分間の火熱を受けている間は構造耐力上支障のある損傷を生じないものとする性能を確保しなければならない。
  3. (3)
    当該建築物を新築する場合において、構造設計一級建築士及び設備設計一級建築士以外の一級建築士が設計を行ったときは、構造設計一級建築士に構造関係規定に適合するかどうかの確認を求め、かつ、設備設計一級建築士に設備関係規定に適合するかどうかの確認を求めなければならない。
  4. (4)
    所有者等は、必要に応じて建築物の維持保全に関する準則又は計画を作成して常時適法な状態に維持するための措置を講じ、かつ、定期に、一級建築士等にその状況の調査をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は3です。本問では構造設計一級建築士の関与が必要ですが、設備設計一級建築士の関与まで必要とした点が誤りです。設備設計一級建築士の関与が義務となる建物は、原則として階数3以上、かつ、床面積の合計が5,000m²を超えるものです。4階建ては階数条件を満たしますが、2,000m²は面積条件を満たしません。
一級建築士は建築物の設計を行う資格ですが、その中でも大規模で複雑な構造や設備には、さらに専門的な判断が必要になります。構造は柱・はりなどが荷重や地震に耐える仕組み、設備は空調・給排水・電気など建物の機能を支える仕組みです。それぞれの専門資格が必要になる範囲は、別々の条件で定められています。
本問の木造4階建て、高さ15m、延べ面積2,000m²という規模は、高度な構造計算を要する建物です。そのため、構造設計一級建築士以外の一級建築士が設計した場合には、構造関係規定への適合確認を専門資格者に求めます。一方、設備については5,000m²超という条件に届きません。『構造の専門資格者が必要なら設備の専門資格者も必要』と、二つの制度をまとめて判定しないことが要点です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。木造でも4階建て、高さ15mという規模では、小規模な木造住宅のように必要な壁の量を調べるだけでは安全性を判断できません。自重は建物自身の重さ、積載荷重は人や商品など載せる物の重さです。これらに地震などの作用を加え、建物全体や各部材が耐えられるかを、設問に挙げた所定の構造計算で確かめます。時刻歴応答解析は、地震の揺れを時間の変化として追う高度な解析であり、本肢ではそれを用いる場合を別扱いにしています。

選択肢2

(2)適当です。通常火災終了時間は、想定する通常の火災が終わるまでの時間、特定避難時間は、法令の方法で見積もる利用者の避難等に必要な時間です。本問では両方が75分です。柱やはりは建物を支える骨組みなので、その間に建物を支えられなくなるような損傷が生じてはいけません。耐火構造とする場合を除き、75分間の火熱に対する非損傷性能を確保する、という記述は妥当です。木を使っているかだけでなく、必要な時間の性能を確保できるかで判断しています。

選択肢3

(3)誤りです。設備設計一級建築士の関与の原則的な規模は『3階以上かつ5,000m²超』です。二つの条件を両方満たす必要があり、本問の2,000m²では該当しません。構造は本問の木造4階建て等の条件から専門資格者の確認が必要ですが、設備は別に判定します。例えば同じ4階建てでも、2,000m²と6,000m²では設備の専門資格者の関与の要否が変わります。なお、義務対象外であることは、給排水や電気の設計に基準がないことを意味しません。

選択肢4

(4)適当です。各階に売場を持つ4階建ての店舗は、多数の来店客が使い、避難階より上の階からの避難も必要となる建物です。所有者等には、常時適法な状態を保つため、必要に応じた維持保全の計画等と、資格者による定期調査・行政への報告が求められます。例えば避難通路に商品を置く、防火戸が閉まらなくなるといった変化は、完成時の検査だけでは防げません。民間の所有だから定期報告を免れるのではなく、用途や規模によって対象を判断します。

周辺知識

一つの建物には、構造、防火、資格、維持管理という複数の制度が同時に関係します。構造規定は地震や重さに耐えること、防火規定は火災中の倒壊や延焼を防いで逃げる時間を確保すること、建築士法の資格制度は専門性のある人が設計を担うこと、定期報告は完成後も安全を保つことを目的としています。同じ面積を使っていても、制度ごとに境目の数値は異なります。
本問では、まず『木造・4階・15m・2,000m²・各階が店舗』と条件を書き出すと、どこに注目するかが明確になります。木造と高さ・階数は構造計算、店舗用途と上階の存在は避難や定期報告、階数と5,000m²超という組合せは設備設計の専門資格、というように、条文の条件に一つずつ対応させます。
『以上』は境目の数値を含み、『超える』は含みません。また『かつ』は両方が必要で、『又は』はいずれかの条件で該当します。設備の条件でいえば、4階であっても面積2,000m²なら義務対象外です。法規の数字は単独で暗記するよりも、何の安全性を確認する制度の、どの条件なのかとセットにすると、別制度の数字を混ぜる間違いを減らせます。