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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問27

問題・正答・学習用解説

問題

防火地域及び準防火地域以外の地域における建築物の用途の変更に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。ただし、増築、大規模の修繕又は大規模の模様替を伴わないものとする。

選択肢

  1. (1)
    延べ面積150m²、高さ15m、地上3階建ての「一戸建ての住宅(耐火建築物及び準耐火建築物以外の建築物)」を「旅館」に用途変更しようとする場合、有効かつ速やかに火災の発生を感知して報知できるものとする技術的基準に従って警報設備を設置すれば、主要構造部を耐火構造とする必要はない。
  2. (2)
    延べ面積150m²の「一戸建ての住宅」を「物品販売業を営む店舗」に用途変更しようとする場合、所定の基準に適合させる必要があるが、用途変更に伴う確認済証の交付を受ける必要はない。
  3. (3)
    建築基準法第3条第2項の規定により排煙設備の規定の適用を受けない「事務所」について、2以上の工事に分けて「飲食店」とするための用途変更に伴う工事を行う場合、特定行政庁による工事に係る全体計画の認定を受けていれば、いずれの工事の完了後であっても、現行基準に適合するように排煙設備を設置するための改修を行う必要はない。
  4. (4)
    既存建築物の用途を変更して、国際的な規模の競技会を行うための「特別興行場等」として利用する場合、特定行政庁の許可を受けることにより、建築基準法第21条及び第27条の規定に基づく主要構造部に対する規制等を受けることなく、一年を超えて使用することができる。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は3です。全体計画の認定は、最後の工事が終わる時点までに現行基準へ適合させる計画を認める制度です。排煙設備の改修を、最後まで不要にする制度ではありません。『いずれの工事の完了後であっても』不要とした部分が誤っています。
排煙設備とは、火災時の煙を建物の外へ出し、人が逃げられる環境を保つ設備です。建物を建てた後に基準が変わった場合、建築時には適法だった建物に、新しい規定を直ちに全て適用しないことがあります。この状態が既存不適格です。しかし、事務所を飲食店へ変えると、火を使う状況や利用者の性質も変わるため、用途変更に合わせて新用途の基準に適合させる必要が生じます。
営業しながら複数回に分けて改修する事情もあるので、認定された全体計画に従う場合には、途中の段階で全ての改修を終えていなくてもよい扱いがあります。例えば第1期に一部を飲食店へ変え、第2期に残りと排煙設備を整える計画なら、最後の第2期完了時が適合を実現する期限です。認定が与えるのは適合に至る段取りの柔軟性であり、安全設備を永久に省く権利ではありません。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。3階建てで延べ面積200m²未満という小規模な建物については、火災を早く発見して知らせる所定の警報設備を設けるなどの方法で、旅館への用途変更を可能にする仕組みがあります。本問は150m²なので、その面積条件に入ります。旅館は宿泊者が就寝中に火災に気付きにくい用途ですが、小規模な建物では早期の報知で避難時間を確保する考え方です。高さ15mや3階建てという数字だけで、必ず主要構造部を耐火構造にしなければならないと判断してはいけません。

選択肢2

(2)適当です。用途変更に伴う確認の対象となるのは、店舗など所定の特殊建築物に変える部分の床面積が200m²を超える場合です。150m²の住宅全体を店舗にしても、その面積には達しません。ただし、確認は計画を事前に審査する手続であり、基準そのものとは別です。申請が不要でも、店舗として必要な避難や衛生などの基準は守ります。『行政へ確認申請を出さなくてよい』ことを『住宅の仕様のまま自由に店を始められる』ことに置き換えないようにします。

選択肢3

(3)誤りです。全体計画認定を受けても、最後の工事の完了時には排煙設備を現行基準へ適合させなければなりません。途中の工事終了時に一定の不適合が残ることと、全工事終了後も改修不要であることは異なります。例えば2期に分けた工事なら、第1期終了後に設備工事が残る計画はあり得ても、第2期終了後にも必要な排煙設備がない状態を認定だけで正当化することはできません。正しくは『認定された全体計画に従い、最後の工事までに適合させる』です。

選択肢4

(4)適当です。国際規模の競技会などで一時的に必要となる特別興行場等には、通常の用途変更とは別の特例があります。特定行政庁が安全・防火・衛生などの条件を確認して許可することにより、使用上必要な期間を定め、1年を超える使用も可能です。本肢は許可を受けるという条件を明記しているため正しい記述です。国際大会に使うという名称だけで自動的に規制が外れるわけではなく、期間を限った利用と行政による安全性の判断を組み合わせる制度です。

周辺知識

用途変更とは、建物の使い道を変えることです。柱や床を大きく造り替えなくても、住宅を旅館にする、事務所を飲食店にする、といった変更により必要な安全対策が変わります。住人だけが使う住宅と、建物に不慣れな宿泊客が眠る旅館では、火災時に人が置かれる状況が違うからです。工事の有無だけを見て、法律の確認を省くことはできません。
検討は、まず変更後の用途に必要な実体的な基準を調べ、次に確認申請の要否を面積等から判断し、最後に既存建物や一時利用の特例を確認する順序にすると整理できます。基準に適合する義務、行政の審査を受ける手続、段階的な工事を認める特例は、それぞれ別の役割を持っています。
既存不適格は、違法に建てた建物を意味しません。建築時には適法でも、その後の改正により新しい基準に合わなくなった状態です。ただし、用途変更などを機会に改修を求める場合があります。全体計画認定では、完成後に達成すべき安全性を保ちながら、工事の順序を調整します。『今すぐ全て適合させなくてよい』と『今後も適合させなくてよい』の違いを、この制度の中心として理解しましょう。