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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問26

問題・正答・学習用解説

問題

次の記述のうち、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」上、誤っているものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    認定特定建築物の建築物特定施設の床面積のうち、移動等円滑化の措置をとることにより通常の建築物の建築物特定施設の床面積を超えることとなる部分については、認定特定建築物の延べ面積の\(\frac{1}{10}\)を限度として、容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入しないものとする。
  2. (2)
    この法律の施行の際現に存する特定建築物に、専ら車椅子を使用している者の利用に供するエレベーターを設置する場合において、当該エレベーターが所定の基準に適合し、所管行政庁が防火上及び避難上支障がないと認めたときは、建築基準法の一部の規定の適用については、当該エレベーターの構造は耐火構造とみなす。
  3. (3)
    建築主等は、特定建築物(特別特定建築物を除く。)の建築をしようとするときは、当該特定建築物を「建築物移動等円滑化基準」に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
  4. (4)
    「建築物移動等円滑化誘導基準」においては、多数の者が利用する主たる階段は、回り階段以外の階段を設ける空間を確保することが困難であるときは、回り階段とすることができる。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は4です。建築物移動等円滑化『誘導基準』では、多数の人が使う主たる階段を回り階段にはできません。空間確保が難しい場合の例外を、通常の円滑化基準から誘導基準へ持ち込んでいる点が誤りです。
回り階段は、上り下りしながら向きが変わり、踏面が扇形などになって内側の足を置く部分が狭くなる階段です。視覚障害のある人や歩行が不安定な人にとって、段の奥行きが変化すると足の置き方を判断しにくくなります。
バリアフリー法には、一定の建物が満たすべき基準としての建築物移動等円滑化基準と、より利用しやすい建物へ導くための建築物移動等円滑化誘導基準があります。通常の基準にある例外が、より高い水準の誘導基準にも当然に認められるわけではありません。(4)は『誘導基準』と明記しているので、主たる階段について空間不足を理由とする回り階段の例外は使えません。正しくは、誘導基準では主たる階段を回り階段以外とします。似た名前の二つの基準を、どちらの水準を問うているかから読み分ける問題です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。認定特定建築物では、移動を円滑にする措置によって通常より増えた特定施設の床面積について、延べ面積の10分の1を上限に容積率の計算から除ける特例があります。例えば、通路などを利用しやすく広げたため床面積が増えると、容積率の制限が改善の妨げになる場合があるためです。ただし、建物のどの床でも自由に10%を差し引ける制度ではありません。円滑化のために通常より増えた部分という対象条件を満たし、そのうえで10分の1という上限を確認します。

選択肢2

(2)適当です。既存の特定建築物へ車椅子使用者専用のエレベーターを後付けする場合、既存建物の条件から通常の基準をそのまま満たすことが難しい場合があります。そこで本肢のように、所定の構造基準を満たし、所管行政庁が防火・避難上支障がないと認めた場合には、建築基準法の一部の適用上、その構造を耐火構造とみなす特例があります。車椅子用という名称だけで使えるのではなく、既存建物、専用設備、技術基準、行政の判断という条件をそろえて用います。

選択肢3

(3)適当です。特定建築物のうち、本肢の特別特定建築物を除くものを建築する場合にも、円滑化基準へ適合させるため必要な措置を講じる努力義務があります。努力義務は、特定の適合を直接義務付ける規定とは表現が違いますが、何も配慮しなくてよいという意味ではありません。多数の人が利用する建物を、できるだけ移動しやすくする方向を求めています。義務の対象規模に届かないから法律上の考慮が一切なくなるとせず、義務・努力義務・任意の認定を区別して読む必要があります。

選択肢4

(4)不適当です。誘導基準は通常の円滑化基準より利用しやすい水準を目指すもので、多数の人が使う主たる階段に回り階段を認める扱いではありません。回り階段では歩く位置により踏面の奥行きが変わり、特に狭い内側で足を踏み外しやすくなります。本肢の『空間確保が困難なら可能』という例外は、通常の基準の扱いを移したものです。図面上で収まるかどうかだけではなく、どの水準の基準を満たす設計かを確認し、誘導基準の主階段は回り階段以外で計画します。

周辺知識

バリアフリーは、車椅子使用者だけのための特別な設備を作ることに限りません。段差を減らす、通路を広げる、滑りにくい床とする、視覚や聴覚に頼り過ぎない案内を用意するなど、年齢や身体の状態が違う人でも建物を利用しやすくする考え方です。出入口だけ整えても、その先の廊下や便所へ行けなければ十分ではなく、利用する経路全体をつなげて考えます。
法令には複数の水準があります。一定の特別特定建築物等に適合を義務付ける円滑化基準、その他の建物に必要な措置を促す努力義務、より高い誘導基準に適合する計画の認定などです。認定には容積率特例などが関係しますが、基準への適合義務と同じ制度ではありません。本問は誘導基準の階段へ、通常の基準の例外を誤って使っています。
既存の建物の改善には、限られた空間や既存構造を考慮する特例もあります。ただし、改善を進めるための特例は安全性の確認を前提とします。行政が防火・避難上支障なしと認める条件や、通常より増えた床だけが対象になる条件などを省略して覚えないことが重要です。誰が使いやすくなる措置かと、そのための安全確認を組み合わせて理解しましょう。