学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問23
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は3です。設計図書の保存義務や、業務実績等の書類を閲覧させる義務への違反は、本問の規定では『30万円以下の罰金』の対象です。『10万円以下の過料』とした種類と金額の両方が誤りです。
設計図書は、どのような建物をどの材料・方法で造る計画だったかを示す大切な記録です。建物は長く使うため、後に改修や不具合の調査をするときにも必要になります。また、仕事を依頼しようとする人が事務所の実績等を閲覧できることは、依頼先を適切に選ぶための情報になります。これらは事務所の任意サービスではなく、法律が定める義務です。
罰金と過料は、どちらもお金を納めさせる措置ですが、罰金は刑罰で、過料は刑罰ではない金銭的な制裁です。したがって『金額が少し違うだけ』と理解してはいけません。本肢の義務違反には、上限30万円の罰金を定める罰則が関係します。30万円が全ての事例で自動的に科される意味ではなく、法定の上限です。保存や閲覧という情報管理の義務が、建築主の保護や業務の信頼に結び付くため、違反への罰則も設けられています。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。建築士会は、建築士の品位を保ち、業務をよりよくするため、必要な知識や技能を高める研修を実施する役割を法律で定められています。建築技術や法令は変わるため、資格取得時の知識だけで仕事を続けることはできません。ここでは個人の建築士に求める研さんとは別に、団体が学習の機会を提供する義務を述べています。研修を行う団体側の義務と、事務所所属者などに適用される定期講習の受講義務を、同じものとして混同しないことが大切です。
選択肢2
(2)適当です。建築士事務所協会は、建築主等から事務所の業務について苦情の解決を求められたとき、相談、必要な助言、事情の調査を行い、事務所開設者へ内容を知らせて迅速な処理を求めます。例えば、依頼した業務の進め方や説明について、当事者だけでは話が進まない場合に、情報を整理して解決を支える役割です。協会が裁判所と同じように強制的な判決を出すという規定ではありません。相談への対応と事務所側への働きかけという、条文に書かれた役割を確認します。
選択肢3
(3)不適当です。法定の設計図書を保存しないことや、依頼しようとする人へ業務実績等の書類を閲覧させないことは、30万円以下の罰金の対象です。本肢の10万円以下の過料ではありません。罰金は刑罰、過料は刑罰ではない金銭制裁なので、名前も金額も正確に区別する必要があります。記録を保存することや情報を開示することは、後の検証と依頼者の判断を支える義務です。図書を失くしても小さな事務上の不備だけで終わると考えず、法定義務違反として扱われることを理解します。
選択肢4
(4)適当です。建築士事務所の開設者が建築基準法違反によって建築士免許を取り消された場合には、事務所登録に関する欠格事由に該当し、その事務所の登録も取り消されます。欠格事由は、その登録や地位を維持するための条件を満たさない事由です。建築士免許は個人の資格、事務所登録は業務を営む組織の登録で、制度は別ですが、運営者の重大な違反などで連動する場面があります。『別の登録だから影響しない』とはいえず、開設者に関する取消しの条件を確認します。
周辺知識
建築士法は、資格を持つ人の仕事の範囲だけでなく、依頼者が安心して仕事を頼めるようにする仕組みも定めています。事務所の情報を閲覧できること、設計や監理の記録を保存すること、苦情の相談に応じることは、その一部です。良い図面を作る技術だけでなく、後から内容を確かめられる記録や、問題が起きたときの対応も業務の信頼を支えます。
建築士会は主に建築士個人の品位や業務の向上を目的とする団体、建築士事務所協会は事務所業務の適正などに関係する団体です。名称が似ていますが、本問では研修の実施と苦情への対応という違う役割を尋ねています。どの団体が何をするかを、保護する相手や目的と合わせて整理しましょう。
違反への措置も分けて理解します。免許や登録を取り消すことは資格・営業に関する行政上の措置、罰金は刑罰、過料は刑罰ではない金銭制裁です。同じ違反から複数の制度上の問題が生じる場合もあります。金額の数字だけで覚えるより、義務の内容、違反した人、措置の種類を対応させることが大切です。本問では設計図書の不保存等について、罰金を過料へ弱めて書き換えた部分を見抜きます。