学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問22
問題・正答・学習用解説
問題
建築士事務所に関する次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。管理建築士であるという理由だけで、別の建築士が作成した設計図書に、管理建築士として追加の記名押印をする義務はありません。設計の責任を示す表示と、事務所全体を管理する役割を取り違えています。
管理建築士は、事務所に専任で置かれ、所属する建築士の監督や、受託する業務量・担当者など、技術的な事項を総括する建築士です。総括は、事務所の仕事が適切に行われるよう全体をまとめることを意味します。しかし、それだけで所属建築士が行った全ての設計について自分が設計者になるわけではありません。
令和2年度の本問で、設計図書に資格の種類を表示して記名押印する義務を負うのは、その設計を行った建築士です。図書の一部を変更した場合にも、その変更を行った設計者としての表示が問題になります。(4)の『設計者の記名押印に加えて、管理建築士も必ず』という二重の義務は定められていません。管理建築士自身が設計を行った場合には、管理者だからではなく設計を行った建築士としての義務を負います。立場の名称ではなく、実際に行った業務との関係で判断しましょう。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。保存対象と定められた設計図書や工事監理報告書は、作成日から15年間保存します。建物は長期間使うため、後に不具合や改修が生じた際、どのように設計・監理されたかを確認できる記録が必要です。配置図は敷地内の建物の位置、平面図は各階の部屋などの配置を示す図です。ただし、事務所で作成する全ての紙を一律に15年保存するという意味ではなく、法令が対象として定めた図書等を保存します。保存の義務者は事務所の開設者である点も確認します。
選択肢2
(2)適当です。管理建築士は、建築士事務所の規模にかかわらず専任である必要があります。専任とは、その事務所の管理の仕事を責任を持って行う立場として置かれることで、名前だけを貸して複数の事務所の管理責任を曖昧にする扱いはできません。小さな事務所でも、受けた仕事の量と能力の釣合い、担当者の配置、技術的な業務の適正を確保する必要があります。所属する建築士が少ないから管理の義務自体がなくなる、という例外を考えず、各事務所の管理責任を明確にします。
選択肢3
(3)適当です。設計の受託契約を結んだ事務所開設者には、作成する設計図書の種類、報酬、支払時期など、法定事項を書面で委託者へ示す義務があります。委託者が一般の建築主ではなく別の建築士事務所でも、設計業務の一部を受託する契約であれば対象です。例えば、元の事務所から構造設計部分だけを依頼された場合でも、どこまで担当し、いくらでいつ支払うかを明確にする必要があります。専門家同士だから口約束でよい、又は建築主との直接契約だけが対象という考えは誤りです。
選択肢4
(4)不適当です。設計図書に設計者としての責任を示す表示を行う義務と、管理建築士が事務所の技術的事項を総括する義務は別です。令和2年度の規定では、設計を行った建築士が資格を表示して記名押印しますが、管理建築士が他の所属建築士の設計図書へ必ず追加の記名押印をする義務はありません。事務所内の管理責任があることを、全ての図書の共同設計者であることと混同しないようにします。管理建築士が自分で設計した場合は、当然その設計者としての表示義務を負います。
周辺知識
建築士個人の資格と、建築士事務所の登録は別の制度です。一級建築士などの資格は誰が設計・工事監理をできるかに関係し、事務所登録は他人から報酬を受けて業務を営む組織の責任体制を明らかにします。事務所の開設者は運営する側、管理建築士は技術的な業務をまとめる側、設計者は実際の設計図書に責任を持つ側です。同じ人が兼ねる場合があっても、法律上の役割は分けます。
書面も目的で区別すると整理できます。設計図書は何を造るかを示し、契約に関する書面はどの業務をいくらで行うかを明確にし、工事監理報告書は図書と施工を照合した結果を伝えます。保存義務は、これらの記録を後から確認できるようにするためのものです。作成した人、交付する相手、保存する責任者が全て同じとは限りません。
管理建築士の役割を、会社の代表者や全ての仕事の設計者と同じものとして考えると誤りやすくなります。本問では、規模を問わない専任義務はありますが、他の建築士の図書への一律の追加表示義務はありません。また、記名押印の表記は令和2年度の指定法令に沿って説明しています。後の押印見直しを古い問題文へ混ぜず、当時どの立場に義務があったかを理解しましょう。