学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問21
問題・正答・学習用解説
問題
建築士に関する次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は2です。工事施工者が設計図書どおりに工事するよう求めても従わない場合、建築士法に基づくこの報告先は『建築主』です。『特定行政庁』とした部分を訂正します。
工事監理は、工事を図面や仕様書と照らし合わせ、そのとおりに実施されているかを確認する仕事です。仕様書は、図だけでは伝えきれない材料や施工方法などを記した書類で、図面と合わせて設計図書と呼びます。工事監理を行う建築士は、違いを見つけたときに単に記録して終えるのではなく、まず施工者へその点を指摘し、設計図書どおりの工事を求めます。
それでも施工者が従わなければ、工事の注文者である建築主へ事実を報告します。建築主は工事を依頼し、その結果を受け取る立場なので、契約どおりでない工事を知り、対応を判断する必要があります。行政が違反を是正する制度は別にありますが、本問の工事監理者の報告義務の相手を置き換えることはできません。『監理者が確認→施工者へ是正要求→従わなければ建築主へ報告』という順番で、役割と報告先を結び付けて理解しましょう。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。工事監理を依頼する人は、担当者が正しい資格を持つ建築士かを確認する必要があります。そのため、委託者から求められたときは免許証又は免許証明書を提示します。また、監理終了時には、直ちに結果を文書で建築主へ報告します。資格を確認するための提示と、実施した仕事の結果を知らせる報告は、目的と時期が違います。免許証を見せたから結果報告が不要になることも、現場で口頭説明しただけで所定の工事監理報告が済むこともありません。
選択肢2
(2)不適当です。設計図書との不一致を認めたとき、施工者へ指摘し、図書どおりに実施するよう求めるところまでは正しい手順です。しかし、その要求に従わなかったときの報告先は建築主であり、特定行政庁ではありません。建築主は工事を依頼した人、特定行政庁は建築行政を担当する市町村長や都道府県知事です。建築士法上の工事監理の義務は、施工内容の問題を依頼者へ伝える役割を含みます。『問題があるから行政へ』という印象で、法定の報告先を変えないようにします。
選択肢3
(3)適当です。構造設計一級建築士は、一級建築士としての資格に加え、構造設計に関する専門資格を持つ人です。建築士事務所に所属する場合、一級建築士定期講習と構造設計一級建築士定期講習の両方を受けます。一般の建築実務・法令の知識を更新する必要と、構造の専門知識を更新する必要は別にあります。専門資格の講習だけ受ければ基礎となる資格の講習を自動的に済ませたことになる、という制度ではありません。資格の追加と定期的な学びの義務を分けて理解します。
選択肢4
(4)適当です。設備設計一級建築士は一級建築士でもあるため、設備以外を含む建物の設計を行うことができます。設備の専門資格は、一定の建築設備設計に関する追加の役割や能力を示すもので、元の一級建築士としての業務範囲を設備だけに縮めるものではありません。例えば、設備設計の資格を得たことで、建物の平面計画を行えなくなるわけではありません。一方、一定規模の建物では構造・設備の専門資格者による関与が必要になる別の規定があり、その条件は個別に確認します。
周辺知識
建築主、設計者、工事施工者、工事監理者の役割を整理しましょう。建築主は工事を注文する人、設計者は責任を持って設計図書を作る人、施工者は実際に工事をする人、工事監理者は工事が設計図書どおりかを確認する人です。同じ会社や人が複数の役割に関わることはありますが、法律の義務を読むときは役割を分けて考えます。
特に、工事監理と施工管理は違います。工事監理は図書と施工を照合する仕事です。施工管理は、施工者側で工程、作業、品質、安全などを管理し、工事を進める仕事です。監理者が施工者へ指摘するのは、工事が設計内容に合っているかを確認した結果に基づく行為で、現場の全作業を直接指揮することと同じではありません。
報告先を問う問題では、『誰の仕事の結果を、誰が知る必要があるか』を考えると理解が深まります。施工者が是正に応じない事実は、工事を注文した建築主に知らせる必要があります。監理終了後の報告も、建築主が仕事の結果を把握するためのものです。さらに資格の提示や定期講習は、業務を行う建築士の能力と信頼を確保する仕組みです。個々の義務を目的と結び付ければ、報告相手や講習名の取り違えを防げます。