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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問20

問題・正答・学習用解説

問題

共同住宅に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    共同住宅の地階に設ける居室においては、採光のための窓その他の開口部の採光に有効な部分の面積を、その居室の床面積に対して\(\frac{1}{7}\)以上としないことができる。
  2. (2)
    階段の幅が3mを超える共同住宅の階段で、蹴上げが15cm以下、かつ、踏面が30cm以上のものにあっては、その中間に手すりを設けないことができる。
  3. (3)
    非常用エレベーターを設置している共同住宅であっても、3階以上の階には、非常用の進入口を設けなければならない。
  4. (4)
    地方公共団体は、共同住宅の規模により、条例で、建築物の敷地、構造又は建築設備に関して安全上、防火上又は衛生上必要な制限を附加することができる。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は3です。非常用エレベーターを設置している建築物は、非常用進入口を設ける規定の適用除外に当たります。そのため、設置していても3階以上には必ず進入口が必要とする記述が誤りです。
非常用進入口は、火災時に消防隊がはしごなどを使って屋外から建物へ入るための入口です。通常は高さ31m以下の部分にある3階以上の階などを対象に、進入できる位置や寸法を確保します。一方、非常用エレベーターは、消防隊が建物の中を上階へ移動して消火・救助活動を行うための設備です。一般の乗用エレベーターとは、火災時に活動を支えるための条件が違います。
法令は、非常用エレベーターがある建物については、非常用進入口の設置を省ける扱いを定めています。本肢はその設備を設置していると明記しているので、進入口を必ず要求することはできません。二つとも消防活動に関係する設備ですが、それぞれを無条件に重ねて設置する制度ではないのです。なお、普通のエレベーターがあるだけでは、この例外を使えません。『非常用』という設備の種類まで含めて確認します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。住宅の居室は通常、床面積の7分の1以上の採光に有効な窓面積を求めます。しかし、住宅の地階の居室については、地下居室の衛生上の安全などに関する所定の技術基準に適合させる方法で、この通常の採光面積によらない扱いができます。地階は床が地盤面より下にある階で、地上と同じ窓の取り方が難しい場合があります。だからといって暗さや湿気を放置してよいのではなく、別の基準で安全な居室とする必要があります。『7分の1でなくてもよい』と『条件なしで窓不要』を区別します。

選択肢2

(2)適当です。幅3mを超える階段には原則として中間手すりを設けますが、蹴上げ15cm以下・踏面30cm以上の緩やかな階段には例外があります。蹴上げは一段の高さ、踏面は足を置く奥行きです。本肢は段が低く踏む面も広いため、この条件を満たして中間手すりを省略できます。中間手すりは幅の広い階段の中央付近に設ける手すりであり、階段の他の位置に求められる手すりの基準とは別です。全ての手すりを外してよいという意味に広げないことがポイントです。

選択肢3

(3)不適当です。非常用エレベーターを設けている建築物には、非常用進入口の設置規定を適用しない扱いがあります。本肢はこの設備があると明記しているので、『設置している共同住宅であっても、3階以上には設けなければならない』とはいえません。消防隊が屋外から入る進入口と、内部を上階へ移動する非常用エレベーターには、設置要否上の関係があります。一般用エレベーターを非常用と読み替えたり、3階以上という条件だけで例外を無視したりしないようにします。

選択肢4

(4)適当です。建築基準法は全国に共通する最低基準を定めていますが、地域の事情や建物の規模に応じた追加規制を地方公共団体の条例で定められる場合があります。共同住宅についても、安全・防火・衛生上必要な敷地、構造、設備の制限を附加できます。多数の住民が生活し、同じ避難経路や設備を使うため、規模によって地域で補う必要が生じることがあります。国の法令を満たせば条例を確認しなくてよいわけではなく、法律が認めた範囲で追加された条件も守ります。

周辺知識

共同住宅は、一棟の中に複数の独立した住戸がある建物です。住戸の内部と、住民が共に使う廊下や階段では、規定の対象が異なることがあります。また、地階の居室、高い階、広い階段など、場所や寸法によって別の条件が加わります。共同住宅という用途名だけで全ての設備の要否を一度に決めることはできません。
本問は、原則を知ったうえで例外の条件を確認する練習になります。地階居室では通常の採光割合に代わる基準、緩やかな階段では中間手すりの例外、非常用エレベーターがある場合には進入口の省略があります。例外は規制の目的を捨てるものではなく、限定された条件や別の手段を前提にしています。例えば、7分の1の窓を要求しない場合でも、健康に暮らせるための基準は残ります。
消防用の設備名も整理しましょう。非常用照明は停電時の明るさを保ち、誘導灯は出口の方向や位置を示します。非常用進入口は外から消防隊が入る場所、非常用エレベーターは消防活動のために上階へ移動する設備です。全てに非常時の役割があっても、働きは同じではありません。名称の一部だけで関連を推測せず、誰が何のために使うかで覚えると混同しにくくなります。