学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問18
問題・正答・学習用解説
問題
防火地域及び準防火地域内の建築物の新築に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。準防火地域内の平家・延べ400m²の事務所について、耐火建築物又は準耐火建築物等に必ずしなければならないとした点が誤りです。本問の用途と規模は、この一律の要求を受ける範囲に入りません。
防火地域と準防火地域は、市街地で一つの建物の火災が周囲へ広がるのを抑えるための区域です。防火地域の方が厳しい性能を求め、準防火地域では建物の階数や延べ面積に応じて必要な性能が変わります。建物が大きいほど燃える量や影響範囲が増え、高いほど消火・避難も難しくなることを考慮します。
準防火地域で延べ面積が500m²を超える場合などには、耐火又は準耐火等の性能を求める区分に入りますが、本問は400m²の平家事務所です。3階建てや4階以上などの階数条件にも該当しません。そのため、(1)の断定はできません。ただし、防火の規制が全くないわけではありません。木造であれば外壁や軒裏などに別の防火上の措置が必要になる場合があります。『耐火・準耐火等にする義務がない』ことと『何の防火措置も不要』という意味を混同しないようにしましょう。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。準防火地域で耐火又は準耐火等の建物を要求する区分は、階数と延べ面積などで決まります。本肢の事務所は平家で400m²なので、500m²超という面積条件や、3階以上に関係する階数条件には該当しません。したがって、区域名だけで耐火建築物等を必須とすることはできません。構造方法に応じた外壁・軒裏・屋根・開口部などの防火措置は別に検討します。準防火地域では小さな建物まで全て同じ耐火性能を求める、という読み方を訂正する肢です。
選択肢2
(2)適当です。防火地域は準防火地域より厳しく、本問の2階建て・延べ80m²の一戸建て住宅にも耐火又は準耐火等の性能を求めます。2階以下で100m²以下という小規模側の区分ですが、普通の木造住宅のままでよいという意味ではありません。住まいであることや80m²という小ささだけで、防火地域の指定を無視することはできません。区域の違いが結論を変えるため、(1)の準防火地域の400m²と、数字の大小だけを比べて判断しないことが大切です。
選択肢3
(3)適当です。防火地域の建物の屋上に設ける広告塔などは、主要部分を不燃材料で造るか、不燃材料で覆う必要があります。屋上設置のものについて、地上から立つ広告塔と同じ高さ条件を当てはめてはいけません。本肢は高さ2mでも、屋上に設けるという条件で対象になります。広告塔が燃えると周囲への延焼や燃えた部分の落下につながるおそれがあります。『3m以下だから対象外』のように高さだけを取り出さず、設置位置と高さの条件の組合せで読みます。
選択肢4
(4)適当です。一つの建物が防火地域の内外にまたがると、原則として建物全体へ厳しい防火地域の規定を適用します。ただし、防火地域の外側で防火壁によって区画した場合、その壁より外側の部分には防火地域の規定を適用しない扱いがあります。防火壁は、火災が建物の別の部分へ広がるのを抑えるため、法令が定める性能を備えた壁です。地域の境界線だけで火を止めることはできませんが、実際に火を遮る区画を設ければ分けて扱える、という例外です。
周辺知識
用途地域は何に使う建物を建てられるか、防火地域・準防火地域は市街地の火災拡大を防ぐためにどんな防火性能を求めるかを決めます。この二つの指定は重なることがあり、例えば商業地域であると同時に防火地域である敷地もあります。用途が建てられることと、その建物に必要な防火構造を満たすことは別の確認です。
耐火建築物や準耐火建築物は、建物全体の主要構造部や外壁開口部などに必要な性能を備えた建物をいいます。不燃材料は材料が所定の条件で燃焼しにくい性能を持つという区分です。建物全体を準耐火にすることと、広告塔の主要部分を不燃材料で造ることは、対象と求める性能が違います。言葉の『火に強い』という印象だけで同じものとして扱わないようにしましょう。
区域をまたぐ場合にも、用途制限の過半による扱い、建蔽率の面積配分、防火地域の厳しい規定の全体適用など、規定ごとに方法が違います。本問では建物が防火地域をまたぐかを見たうえで、防火地域外の防火壁による例外を確認します。どちらの区域の土地が広いかだけで建物全体の防火性能を決めることはできません。