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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問12

問題・正答・学習用解説

問題

構造耐力の規定に適合していない部分を有し、建築基準法第3条第2項の規定の適用を受けている既存建築物に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    基準時における延べ面積が800m²の既存建築物に床面積50m²の増築をする場合においては、増築に係る部分が現行の構造耐力の規定に適合し、既存建築物の部分の構造耐力上の危険性が増大しない構造方法とすれば、既存建築物の部分には現行の構造耐力の規定は適用されない。
  2. (2)
    基準時における延べ面積が800m²の既存建築物に床面積400m²の増築をする場合においては、増築後の建築物の構造方法が、耐久性等関係規定に適合し、かつ、所定の基準に適合するものとすれば、既存建築物の部分には現行の構造耐力の規定は適用されない。
  3. (3)
    増築をするに当たって、既存の建築物に対する制限の緩和を受ける場合においては、建築確認の申請書に、既存建築物の基準時及びその状況に関する事項を明示した既存不適格調書を添えなければならない。
  4. (4)
    柱について過半の修繕を行う場合においては、当該建築物の構造耐力上の危険性が増大しない修繕とすれば、現行の構造耐力の規定は適用されない。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は1です。本肢の50m²の増築は、既存部分について記載の条件だけで緩和を使える小規模増築の上限を超えています。『50m²以下ならよい』と、もう一つの面積条件を落としているのが誤りです。
既存不適格は、建てた当時は適法だった建物が、その後の基準の変更により現在の基準に合わなくなった状態です。一定の増築などを行う場合には、新しい規定への対応が原則として必要になりますが、増築の規模や安全性に応じた緩和も設けられています。
本肢で使おうとしている小規模増築の範囲は、基準時の延べ面積の20分の1と50m²のうち小さい方です。基準時800m²なら、次のように計算します。
80020=40 m2\frac{800}{20}=40\,\mathrm{m}^{2}
50m²と比較して40m²を採用します。実際の増築50m²はこれを10m²上回るので、増築部分を現行規定に適合させ、既存部分の危険性を増大させないという条件だけでは足りません。別の緩和を使える可能性はありますが、その場合は別の構造基準も確認します。本問は増築が一切できないという意味ではなく、挙げた条件による緩和の適用が誤っているのです。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)不適当です。この小規模増築の基準は、増築面積が『基準時延べ面積の20分の1』と『50m²』の小さい方を超えないことです。800m²の20分の1は40m²なので、本問の上限は40m²です。50m²の増築はその範囲に入りません。50という固定の数値だけを見ず、既存建物に対する割合も計算する必要があります。記載の二つの安全条件を満たしたことだけで、この小規模増築の緩和を適用することはできず、規模に対応する別の条件の確認が必要です。

選択肢2

(2)適当です。増築面積400m²は、基準時延べ面積800m²の半分です。この規模では、増築後の構造方法が耐久性等関係規定と所定の構造基準に適合することなどを条件とする緩和の範囲に入ります。耐久性等関係規定は、建物が長く安全に働くための材料や構造の基本条件に関する規定です。(1)の小規模増築と条件が異なり、単に危険性を増やさないだけではありません。面積比が半分以内であることと、追加の安全条件を満たすことを一緒に確認するため、本肢は適当です。

選択肢3

(3)適当です。既存部分の規制緩和を受けるには、その建物が本当に既存不適格であることや、どの時点のどの規定が適用されなくなったのかを確認できる資料が必要です。そのため、建築確認の申請には、基準時と建物の状況などを明示した既存不適格調書を添えます。調書はこれらの事実を整理した書類です。古い建物というだけでは、当初から違反していたのか、その後の改正で合わなくなったのか判断できません。制度の前提を資料で確認するための手続と理解しましょう。

選択肢4

(4)適当です。主要構造部である柱の過半を修繕する行為は、大規模の修繕に当たります。ただし、本問の既存不適格建築物では、構造耐力上の危険性を増大させない修繕であることを条件として、現行の構造耐力規定を適用しない緩和が使えます。例えば、傷んだ部分を補修することと、支える力を弱めるような変更とは同じではありません。大規模という名称だけで既存部分全てに現行規定を適用するのでも、どんな修繕でも免除するのでもなく、修繕後の危険性を確認します。

周辺知識

既存不適格と違反建築物は分けて理解する必要があります。既存不適格は、当初は適法だったものが法改正や区域指定の変更などで新しい基準に合わなくなった状態です。最初から守るべき基準に違反していた建物を、古くなったから既存不適格と呼べるわけではありません。緩和はこの制度上の前提を満たす建物について検討します。
基準時は、当該規定がその建物に適用されない扱いとなった基準の時点です。増築の規模を判定するときには、この時点の延べ面積を用います。現在の面積や今回増築した後の面積へ勝手に置き換えると、割合の計算が変わってしまいます。問題文に基準時800m²とあれば、それを割合計算の出発点として固定します。
緩和には段階があり、増築の影響が小さい場合と大きい場合では求める条件も異なります。本問の小規模の範囲は『割合による40m²』と『固定の50m²』を比べた小さい方です。二つの上限を両方満たすと考えても同じ結果になります。また、構造耐力の緩和が使えても、避難・防火など別の規定まで当然に省略できるとは限りません。どの不適合に対する、どの工事の緩和かを限定して読むことが重要です。