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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問11

問題・正答・学習用解説

問題

建築物の構造計算に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    鉄筋コンクリート造の建築物において、保有水平耐力計算によって安全性を確かめる場合、構造耐力上主要な部分である柱の主筋の断面積の和は、コンクリートの断面積の0.8%以上としなくてもよい。
  2. (2)
    鉄骨造の建築物において、許容応力度等計算によって安全性を確かめる場合、国土交通大臣が定める場合においては、構造耐力上主要な部分である構造部材の変形又は振動によって建築物の使用上の支障が起こらないことを所定の方法によって確かめなければならない。
  3. (3)
    建築物の実況によらないで、基礎の垂直荷重による圧縮力を計算する場合、事務室で、基礎のささえる床の数が7のときは、床の積載荷重として採用する数値を1,300N/m²とすることができる。
  4. (4)
    鉄骨造の建築物において、限界耐力計算によって安全性を確かめる場合、柱以外の構造耐力上主要な部分である鋼材の圧縮材の有効細長比は、250以下としなければならない。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は4です。限界耐力計算によって安全性を確かめる場合、鋼材の圧縮材の有効細長比を250以下とする仕様規定は、適用除外になります。計算方法を指定しているのに、別の仕様基準を必ず守るものとしている点が誤りです。
圧縮材は、両端から押される力を受ける部材です。細長い棒を押すと、材料そのものが押しつぶされる前に横へ曲がることがあります。これを座屈といいます。有効細長比は、部材の長さ、断面の形、端の支え方から、座屈しやすい細長さを表す指標です。
一般の仕様規定では、圧縮材が過度に細長くならないよう限度を設けます。一方、限界耐力計算は、建物に生じる揺れや変形と耐えられる限界を考慮して安全性を確かめる計算方法で、法令が列挙する一部の仕様規定に代えることができます。(4)の細長比規定は、その省略対象です。ただし、座屈を無視してよいわけではありません。細い部材を用いるなら、その部材を含めた建物が安全であることを、採用した計算方法で確かめます。『数値の仕様を守る方法』と『計算で安全を確かめる方法』の関係を読み取る問題です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。柱の主筋は、鉄筋コンクリート柱の長さ方向に入れる主要な鉄筋です。通常の仕様規定では、その断面積合計をコンクリート断面積の0.8%以上とする基準がありますが、保有水平耐力計算で安全性を確かめる場合には、この仕様規定を適用しない扱いがあります。保有水平耐力は、大きな地震の横向きの力に対して建物が持つ抵抗能力です。鉄筋をなくしてよいのではなく、計算上必要な強さを確保したうえで、画一的な0.8%の規定によらない設計ができるという意味です。

選択肢2

(2)適当です。許容応力度等計算では、材料に生じる応力度が許容値以内かだけでなく、法令が求める変形や振動による使用上の支障も確認します。応力度は、部材の断面の単位面積当たりに生じる力です。例えば、床が壊れない強さを持っていても、人が歩くたびに大きく揺れたり、梁が大きくたわんで建具が開かなくなったりすれば、建物は使いにくくなります。倒壊しないことだけを安全確認の全てとせず、日常の使用に支障がないことも調べるという記述です。

選択肢3

(3)適当です。事務室の積載荷重は、床そのものを設計する場合と、柱・基礎を設計する場合で法令の値が異なります。基礎の計算に用いる基本値は1,800N/m2\displaystyle \mathrm{N}/\mathrm{m}^{2}です。支える床が7の場合には、所定の低減係数0.7を用いることができるので、1,800×0.7=1,260\displaystyle 1{,}800\times0.7=1{,}260 N/m2\displaystyle \mathrm{N}/\mathrm{m}^{2}となります。本肢の1,300N/m2\displaystyle \mathrm{N}/\mathrm{m}^{2}はこの値以上なので採用できます。全ての階に最大の人や家具の荷重が同時に載るとは限らないための低減ですが、用途や支える床数の条件を満たして使います。

選択肢4

(4)不適当です。柱以外の鋼材の圧縮材について、有効細長比250以下という一般の仕様規定はあります。しかし本肢は限界耐力計算を採用しており、その方法では当該仕様規定を省略できるため、『250以下としなければならない』と限定できません。細長比は座屈のしやすさに関係する数値で、250という数字だけを覚えると計算方法による適用除外を落とします。省略できるのは特定の仕様規定であって、部材の座屈や建物全体の安全を検討しなくてよいという意味ではありません。

周辺知識

構造計算は、建物にどんな力がかかり、柱・梁・壁などがそれに耐えられるかを調べる作業です。人や家具の重さが積載荷重、建物自身の重さが固定荷重です。重さ以外にも、風や地震、雪、土や水の圧力などを考えます。力の種類によって方向や続く時間が違うので、一つの数字だけで安全を判断できません。
建物には、材料の量や寸法を定める仕様規定と、力や変形を計算する規定があります。仕様は一定の安全な造り方を具体的に示します。より詳しい構造計算を行う場合には、その結果に基づいて一部の仕様を省略できることがあります。ただし、省略範囲は計算方法ごとに違い、全ての材料の品質や耐久性の規定がなくなるわけではありません。
許容応力度は、部材に生じてもよい応力度の限度です。保有水平耐力計算では大地震時の抵抗能力、限界耐力計算では耐力や変形の限界と揺れの関係を調べます。名称に『計算』が共通していても同じ手続ではないため、本問では各肢の計算方法を最初に囲むとよいでしょう。荷重の低減でも、床・柱・基礎のどれを計算しているかを確認してから係数を選びます。