学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問10
問題・正答・学習用解説
問題
建築設備等に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は2です。発熱量6kW以下のこんろと有効な窓を条件に換気設備を省ける例外は、住宅の調理室についてのものです。本問は事務所の調理室なので、この例外をそのまま使えません。
こんろで燃料を燃やすと、室内の酸素を消費し、燃焼によって生じる気体などが発生します。換気が不足すれば空気が汚れ、不完全な燃焼による一酸化炭素などの危険もあります。このため、室内に一定の燃焼器具を設ける場合には、空気を安全に入れ替えるための換気設備が必要です。
『密閉式燃焼器具』は、燃焼に使う空気や燃焼排ガスを、室内の空気から切り離して給排気する方式です。本問はそのような器具ではないと指定されています。したがって、発熱量と窓の条件だけでなく、住宅の調理室という用途条件まで満たすかを確認しなければなりません。6kWという数値は例外の一条件であり、全ての調理室に共通する免除基準ではありません。正しくは、本問の事務所の調理室では、有効な開口部があっても所定の換気設備を設ける必要があります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。高さ31mを超える建築物では、原則として消防活動のための非常用昇降機を設けます。ただし、31mを超える部分の全てが建築設備の機械室である場合は、法令で定める例外に該当します。本肢は上部の全てが機械室という条件を満たしています。屋上付近に空調や給水などを動かす機械室だけがある状態と、上部に多数の人が使う客室や事務室がある状態では使われ方が違います。『一部に機械室がある』だけでは足りず、31mを超える部分が全て該当することを読み取ります。
選択肢2
(2)不適当です。住宅の調理室には、発熱量の合計が6kW以下で、換気上有効な開口部を設けるなどの条件により、所定の換気設備を省ける例外があります。しかし、本肢の建物は事務所であり、この住宅の用途条件を満たしません。数値の6kWと窓の存在が合っていても、例外は使えないので設備が必要です。料理する部屋であることは共通でも、法律が例外として挙げた範囲まで同じとは限りません。器具の方式・発熱量・部屋の用途をまとめて確認する必要があります。
選択肢3
(3)適当です。エレベーター乗場の床先は、乗場側の床の端で、かごの床先はかご側の床の端です。この間の隙間が大きいと、足や運搬物が落ち込む危険があるため、通常は水平距離を4cm以下にします。ただし、乗用・寝台用以外で、安全上支障がないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いる場合には例外があります。本肢は対象用途と構造方法の二つを満たすので、4cmを超えることができます。全てのエレベーターで隙間を広げてよいという説明ではありません。
選択肢4
(4)適当です。冷却塔は、空調で集めた熱を屋外へ放出する設備です。地階を除く階数が11以上の建物の屋上に設けるものは、原則として主要部分を不燃材料で造ります。高い位置にある設備が燃える危険を抑えるためです。ただし、国土交通大臣が定めた防火上支障のない構造方法による場合は、その原則以外の材料を使用できる扱いがあります。本肢はこの条件を明記しているので適当です。単に性能が良さそうな材料なら自由に選べるのではなく、指定された構造方法であることが根拠です。
周辺知識
建築設備の規定には、原則と、条件を限定した例外がよく登場します。原則は多くの建物で安全を得やすい方法を示し、例外は別の安全な方法や限定された使い方を認めるものです。例外を読むときは、『対象の建物や設備』『数値条件』『特別な構造方法』の全てをそろえる必要があります。どれか一つが合うだけでは使えません。
本問の換気では、窓を開けて空気を入れ替えることと、燃焼器具に必要な給排気を確実に行う設備とは同じではありません。また、住宅の調理室の例外と事務所の調理室の扱いも違います。発熱量は単位時間に器具が出す熱の量で、kWはその大きさを表す単位です。数字が小さいかどうかだけでなく、室内の空気を使って燃える方式なのかも確認します。
昇降機の隙間や屋上冷却塔では、指定の安全な構造方法による例外が使われています。これは試験で数値を無視してよいという意味ではなく、『原則値+例外の対象+例外の根拠』をセットで覚えるということです。令和2年度の本問では、用途条件が足りない換気の肢と、例外条件がそろっている他の肢を対比すると、判断の違いが明確になります。