学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問9
問題・正答・学習用解説
問題
防火・避難に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。ただし、居室については、内装の「制限を受ける窓その他の開口部を有しない居室」には該当しないものとする。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は3です。共同住宅の特別避難階段について、15階以上の階に必要な階段室とバルコニー又は付室の面積を、居室面積の8%としている点が誤りです。本問の共同住宅には3%を用います。
特別避難階段は、階段室へ火や煙が入りにくくした避難経路です。高層階では大勢の人が一度に階段へ集まり、地上までの移動にも時間がかかります。そのため15階以上の各階などでは、階段室と、その前にある付室・バルコニーを合わせた面積にも最低値があります。単に階段の段だけが確保されていればよいわけではありません。
この割合は用途ごとに異なります。劇場などや物品販売店舗などの居室には8%を用い、その他の居室には3%を用います。共同住宅は後者です。例えば、対象階の共同住宅の居室面積合計が1,000m²なら、必要な合計面積は次のとおりです。
8%なら80m²となります。この数値は理解のための例ですが、用途を取り違えると計算結果が大きく変わることが分かります。本肢の20階建てという条件だけでは8%を選べません。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。自動車車庫は、車両などがあり、火災時の危険を考慮する必要のある用途です。用途に供する部分の壁・天井の内側の仕上げには、準不燃材料又は規定された同等の方法による材料の組合せが必要です。平家であることや、屋内を人が常時生活する部屋として使わないことだけでは、内装制限をなくせません。準不燃材料は、定められた加熱条件で10分間、燃え広がり等を抑える性能を確認した材料です。本問にはスプリンクラー等がないため、その設備による別の扱いを想定せず判定します。
選択肢2
(2)適当です。非常用照明は、通常の照明が停電したときも避難路の明るさを確保する設備です。ただし、法令上、採光上有効に直接外気へ開放された廊下・階段には設置を省ける扱いがあります。本肢は5階の住戸から地上へ通じる廊下・階段が、その開放条件を満たすと明記しています。単に窓が一つある屋内廊下や、外部に見えても囲まれた通路と同じではありません。階数だけで必要と決めず、問題が与える開放性の条件を適用するため、この記述は適当です。
選択肢3
(3)不適当です。階段室と付室又はバルコニーの面積割合は、15階以上という階数条件のほか、居室の用途によって選びます。劇場や物品販売店舗などは8%、それ以外の居室は3%です。本問は共同住宅なので、居室面積に掛けるのはです。住戸が多い高層建物だからという理由で、店舗などに用いるへ変更しません。階数条件を満たすことと、どの用途の割合を使うかは二段階の判断です。数字を選ぶ前に『共同住宅』という用途を確認しましょう。
選択肢4
(4)適当です。非常用進入口は、消防隊が屋外から建物へ入るための入口です。所定の条件を満たす窓が十分な間隔であれば、専用の進入口の代わりにできる扱いがあります。本肢の窓は幅75cm以上・高さ1.2m以上で、外から入るのを妨げる格子等がなく、外壁の長さ10m以内ごとに設けています。さらに、道又は道につながる幅4m以上の通路等に面する条件もあります。窓の寸法だけでなく、消防隊が外から近づいて実際に通れることまで満たすため、省略が認められます。
周辺知識
火災時に必要な設備を、利用する人の行動に沿って並べてみましょう。内装制限は火や煙の急な広がりを抑え、非常用照明は停電しても足元や通路を見えるようにし、特別避難階段は地上まで逃げる経路を守ります。非常用進入口は、主に消防隊が外から建物へ入って救助や消火をするためのものです。住民が逃げる設備と、消防隊が入る設備を区別すると、名称の似た規定も理解しやすくなります。
特別避難階段の付室は、廊下と階段室の間に置く前室です。煙が階段へ入るのを抑えるほか、人が階段へ移る際の空間にもなります。階段幅は人が通る流れの大きさ、階段室と付室等の合計面積は確保する空間の広さです。同じ階段に関する数値でも、幅と面積を混ぜてはいけません。
本問のような複数制度の問題では、各肢が何を省略又は要求しているかを先に読みます。材料の性能、通路の開放性、用途別面積割合、消防用窓の寸法は、それぞれ違う判定です。共同住宅という用途の条件を店舗へ置き換えない、窓の寸法だけを見て外部からの接近条件を落とさないなど、数値と対象を一組で扱うことが重要です。