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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問8

問題・正答・学習用解説

問題

防火・避難に関する次の記述のうち、建築基準法に適合しないものはどれか。ただし、避難階は地上1階とし、屋上広場はないものとする。

選択肢

  1. (1)
    主要構造部を準耐火構造としたバルコニーのない建築物において、当該建築物が全館避難安全性能を有するものであることについて全館避難安全検証法により確かめたので、特別避難階段の階段室には、その付室に面する部分以外に屋内に面して開口部を設けることとした。
  2. (2)
    主要構造部を耐火構造とした地上8階建て、延べ面積10,000m²の物品販売業を営む店舗において、最上階が階避難安全性能を有するものであることについて階避難安全検証法により確かめたので、最上階に、屋内と特別避難階段の階段室とを連絡するバルコニー及び付室のいずれも設けなかった。
  3. (3)
    主要構造部を耐火構造とした地上5階建て、延べ面積5,000m²の事務所において、最上階が階避難安全性能を有するものであることについて階避難安全検証法により確かめたので、最上階に排煙設備を設けなかった。
  4. (4)
    各階を物品販売業を営む店舗の用途に供する地上4階建ての建築物(各階の床面積が600m²)において、各階における避難階段の幅の合計を3.6mとした。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は1です。全館避難安全検証を行っても、特別避難階段の階段室に、付室などに面する部分以外から屋内へ直接つながる開口部を設ける制限は残ります。
避難安全検証は、建物の使い方や人数、出口の幅、煙の広がり方などから、火災時に安全に逃げられることを所定の方法で確かめる制度です。一定の検証を行えば、通常の寸法や設備を指定する規定の一部を適用しないことができます。ただし、適用しない規定は法令で列挙されており、『安全を計算したから防火・避難の規定が全て不要』という制度ではありません。
特別避難階段は、上階などから地上へ逃げる重要な経路で、階段室へ煙を入りにくくする構造が求められます。付室は屋内と階段室の間に設ける前室です。本肢のように付室を経由しない屋内側の開口を設けると、そこから直接階段室へ煙が入る経路が生じます。この開口部の制限は全館避難安全検証による適用除外に含まれていないため、検証済みであることを理由に設けることはできません。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)は不適合です。施行令第123条第3項には、特別避難階段の階段室に、バルコニー・付室に面する部分以外の屋内側開口部を設けないという規定があります。この規定は、全館避難安全検証を行ったときの適用除外の一覧に含まれていません。本肢はバルコニーがないので、付室に面する部分以外へ屋内開口を設けることはできません。検証制度で省ける構造の規定があることと、直接煙が入り得る開口を自由に増やせることは、分けて判断する必要があります。

選択肢2

(2)は適合します。階避難安全検証によりその階の安全性能を確かめた場合、屋内と特別避難階段をバルコニー又は付室を通じて連絡することを求める所定の規定は、適用除外の対象です。本肢は8階建て店舗の最上階について、その条件を満たしたと明記しています。したがって、当該階でバルコニーと付室を設けなかったという点は、この適用除外で扱えます。これは設置を要求する特定の条項の扱いであり、残る開口部制限などを含め、階段の全ての構造を自由にできるという意味ではありません。

選択肢3

(3)は適合します。排煙設備は、火災の煙を屋外へ排出し、人が避難できる空間を保つ設備です。通常は用途や面積などから設置を判断しますが、階避難安全検証により当該階の避難安全性能を確かめた場合には、所定の排煙設備の仕様規定を適用しない扱いがあります。本肢は最上階についてその条件を満たしています。煙を危険でないと決め付けるのではなく、煙が避難に支障を生じる前に人が逃げられることを別の方法で確認している、という点が省略の根拠です。

選択肢4

(4)は適合します。店舗では、多数の人を階段へ流すため、必要な階段幅の合計を面積に応じて決めます。原則の割合は、対象となる階の床面積100m²につき60cmです。本問は各階とも600m²なので、600100×0.60=3.6 m\displaystyle \frac{600}{100}\times0.60=3.6\,\mathrm{m}となり、本肢の合計幅と一致します。全階の面積を単純に合算するのではなく、法令で指定する上階側の最大面積などを用いる規定です。本問は各階同じ面積なので、どの対象階でも600m²を使って確認できます。

周辺知識

建物の安全を確かめる方法には、寸法や材料などを具体的に指定する方法と、必要な安全性能があるかを計算などで確かめる方法があります。前者なら『廊下を一定幅以上にする』『所定の排煙設備を設ける』などの形で設計できます。後者は、建物ごとの人数や出口配置なども考慮し、人が安全に避難できるかを確認します。どちらも安全を得るための方法であり、計算を行う方が無条件に自由になるわけではありません。
階避難安全検証は、その階から直通階段などへ逃げる安全を確かめます。全館避難安全検証は、建物にいる人が地上まで逃げる安全を扱います。調べる範囲が違うため、適用しないことができる規定の範囲も異なります。問題文の『階』と『全館』を見落とすと、別の一覧を使うことになります。
特例を読むときは、①何を検証したか、②どの階・建物が対象か、③省略したい規定が一覧に含まれるか、の順に確認します。本問の付室の設置、階段室の開口、排煙設備は関連する設備ですが、同じ一つの規定ではありません。一覧にある設置規定を省けても、一覧にない構造上の制限は守る必要があります。