学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅲ(法規) 問7
問題・正答・学習用解説
問題
避難施設等に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。ただし、いずれの建築物も各階を当該用途に供するものとし、避難階は地上1階とする。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は2です。15階の共同住宅の居室では、本問の準不燃材料による仕上げをしても、直通階段までの歩行距離を60mまで延ばすことはできません。上限は50mです。
直通階段は、避難階や地上までつながる階段です。歩行距離は、図面上の直線距離ではなく、部屋や廊下を実際に歩く経路の長さをいいます。火や煙が広がる前に階段へ到達できるよう、この距離に上限を設けています。
本問のような耐火構造の共同住宅の居室は、通常の基準が50mです。居室と主な避難通路の壁・天井を準不燃材料で仕上げた場合は、一般には10mを加える緩和があります。しかし、この加算は15階以上の階には適用されません。15階以上でこの内装条件も満たさない場合には、通常値から10mを減じる扱いがありますが、本問は条件を満たすため50mを維持します。したがって『』とすることが誤りです。高層階では地上までの避難が長くなることも踏まえ、普通の階と同じ加算を使わないと理解しましょう。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。物品販売店舗は、建物に不慣れな客が大勢集まる用途です。店舗部分の床面積合計が1,500m²を超え、避難階以外の階に売場があれば、原則として二以上の直通階段を設けます。本問は延べ3,000m²で各階が売場なので、2階から二つ以上必要です。一方の階段が煙などで使えなくなっても、別の経路から逃げられるようにします。2階建てで高さが低いことや、骨組が耐火構造であることだけでは、大人数が避難する経路の数を一つに減らせません。
選択肢2
(2)不適当です。耐火構造の共同住宅では基準の歩行距離は50mです。室内と主な避難経路を準不燃材料で仕上げると、通常階では10mを加える緩和がありますが、15階以上にはこの加算を使えません。本問は15階なので、準不燃材料の仕上げをした場合の上限は50mです。内装を燃え広がりにくくしたことは有効でも、どの階でも無条件に10m延長できるわけではありません。材料の条件だけで判断せず、階数による例外を最後まで確認する必要があります。
選択肢3
(3)適当です。各階の住戸の居室面積は、1戸60m²が4戸なのでです。耐火構造の共同住宅について二以上の直通階段が必要となる居室面積の基準は200m²超であり、240m²はこれを超えます。したがって4階にも二つ以上必要です。バルコニーがあると適用できる別の例外もありますが、それを全ての用途・面積の条件へ広げることはできません。本問では共同住宅としての200m²超の条件に該当するため、有効なバルコニーだけでは代用できません。
選択肢4
(4)適当です。メゾネットは、一つの住戸が内部階段で複数の階につながる形式です。本肢は二つの階にまたがる住戸で、共用廊下へ出る出入口が片方の階だけにあります。出入口のない階の人は、まず住戸内の階段を通って出口のある階へ移動し、その後に直通階段へ向かいます。この形式には、出入口のない階から直通階段までの歩行距離を40m以下とする特例があります。住戸の出口までで計算を止めず、その先の共用部も含めて直通階段まで追うことが重要です。
周辺知識
避難の規定では、階段の『数』『そこまでの距離』『階段そのものの構造』を分けて考えます。二つの階段があっても両方へ非常に遠ければ安全とはいえず、近くに階段があっても火や煙から守られていなければ使えなくなるおそれがあります。一つの条件を満たしたから、他の条件も不要になるわけではありません。
歩行距離は、居室の各部分から、家具や壁を無視して直線で結ぶのではなく、通常の通行経路に沿って測ります。共同住宅の住戸なら、居室から住戸内の廊下、住戸の出口、共用廊下を経て直通階段へ至る流れを追います。吹抜けやメゾネットでは、上下の移動も含む経路を見落とさないことが大切です。
二方向へ逃げられる計画にも、どの建物で二つの階段を要求するかという用途・面積の条件があります。多数の客が使う店舗、住民が眠る共同住宅など、それぞれの使われ方に応じて対象面積が違います。本問では店舗全体の3,000m²と、共同住宅の一つの階の居室240m²は別の基準に使っています。『建物全体』『その階』『一住戸』のどの面積を尋ねているか、数字の横に言葉を添えて整理すると誤りを防げます。