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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問19

問題・正答・学習用解説

問題

建築設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    一般的な事務所ビルの執務空間における天井放射冷房は、潜熱処理を主な目的として用いられる。
  2. (2)
    一部のコージェネレーションシステムでは、常用発電設備と消防法や建築基準法で定める非常用発電設備との兼用が可能な機種があり、スペースの有効利用やメンテナンスコストの削減等に効果がある。
  3. (3)
    常用エレベーターは、利用者の人命確保と閉込めの回避を最優先するために、一般に、災害時における利用は想定されていない。
  4. (4)
    非常用エレベーターを複数台設置する必要がある場合は、避難上及び消火上、有効な間隔を保って配置する。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は(1)です。天井放射冷房の主な役割は、室内や人体から熱を受け取り温度を下げる顕熱処理です。水蒸気を除去する潜熱処理を主目的とする方式ではありません。天井のパネルへ冷水を流すと、室内の暖かい物体や人体から放射で熱を受け、空気との対流でも熱を受け取ります。一方、空気中の水分を取り除くには、別の除湿の仕組みが必要です。
空調機の冷却コイルでは、表面を露点温度より低くして水蒸気を凝縮させ、排水することで除湿できます。しかし天井パネルで同じことが起きると、天井に水滴が付き、落下や汚損の原因になります。そのため一般的な放射冷房はパネルを露点より低くしすぎず、外気処理機などで湿度を管理して結露を防ぎます。
「冷たい面なら除湿できる」という物理的な可能性と、「建物設備としてそれを目的に安全に運用する」ということを区別します。天井放射冷房では、温度を扱う系統と水分を扱う系統を分担させることが重要です。顕熱と潜熱の役割を逆にした記述が不適当になります。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)不適当です。天井放射冷房は、冷たい天井面が室内から熱を受け取ることで、主として顕熱を処理します。潜熱処理は空気中の水蒸気を除く仕事で、一般に外気処理機などで行います。天井面を露点以下にして除湿しようとすると、パネルに結露して水滴が落ちるおそれがあります。したがって放射冷房は除湿装置の代わりと考えず、室内湿度に応じて冷水温度を調整し、別系統の除湿と組み合わせます。

選択肢2

(2)適当です。コージェネレーションは普段から発電し、その排熱も給湯や空調へ利用する仕組みです。そのうち必要な防災性能を備えた機種では、常用と非常用の発電を兼ねることができ、設備の重複や保守の負担を減らせる場合があります。ただし普通の常用発電機ならすべて兼用できるわけではありません。非常時の起動、燃料の確保、防災負荷への供給や保護など、非常用として求められる条件を満たす構成が前提です。

選択肢3

(3)適当です。常用エレベーターは通常の移動を担うもので、一般に火災や地震の最中に避難輸送を続ける前提ではありません。停電、煙や水の侵入、機器の損傷などが起きると、途中で停止して閉じ込められる危険があるからです。災害時の制御は、利用者を安全な階で降ろすなど人命確保と閉込め回避を優先します。日常で便利な移動経路と、災害時に利用を当てにできる避難経路とは分けて計画します。

選択肢4

(4)適当です。非常用エレベーターを複数台必要とする建物では、有効な間隔を保って配置し、避難や消防活動に役立てます。全部を一か所へ集中すると、その場所への接近が困難になったとき、複数台があっても活動しにくくなります。離れた部分へ消防隊が到達しやすいよう、建物の平面と階段などとの関係を考えます。ただし離せば離すほどよいという意味ではなく、乗降ロビーの防火・防煙や活動経路も含めた有効な配置が必要です。

周辺知識

顕熱は温度変化として現れる熱、潜熱は水の蒸発や凝縮など状態変化に関係する熱です。人は体表から熱を放射・対流で放出するとともに、汗や呼吸の水分が蒸発することでも熱を失います。そのため室内の空調負荷には温度と湿気の両方が含まれます。温度計の数字だけを合わせても、湿度が高ければ快適にならないことがあります。
放射空調は大きな風を吹かずに熱をやり取りできる利点がありますが、換気まで不要になるわけではありません。人が吐く二酸化炭素などを排出する外気の供給は別に必要です。温度調整、除湿、換気の三つの仕事を、どの機器が分担するかを整理します。
本問の防災設備も、普段の用途と非常時の役割を分ける点で共通しています。常用発電と非常用発電は条件を満たせば兼用でき、常用エレベーターは一般に避難輸送を当てにしません。「普段動いているから非常時にも使える」とは限らず、必要な性能と制御が備わっているかで判断します。設備の名前だけでなく、どの状況で何を担うかを理解することが大切です。