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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問20

問題・正答・学習用解説

問題

環境・設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    建築物の「eマーク(省エネ基準適合認定マーク)」は、建築物が建築物の省エネルギー基準に適合していることについて、所管行政庁から認定を受けたことを示すものである。
  2. (2)
    LEED(Leadership in Energy & Environmental Design)は、建築物や敷地等に関する環境性能評価システムの一つであり、取得したポイントの合計によって4 段階の認証レベルが決まる。
  3. (3)
    建築物の省エネルギー基準における年間熱負荷係数(PAL*:パルスター)は、その値が小さいほど建築物の外皮の熱性能が高いと判断される。
  4. (4)
    一般的な事務所ビルのライフサイクルCO2\displaystyle CO_{2}においては、「運用段階のCO2\displaystyle CO_{2}排出量の占める割合」より「設計・建設段階及び廃棄段階のCO2\displaystyle CO_{2}排出量の占める割合」のほうが大きい。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は(4)です。出題時の一般的な事務所ビルでは、長年にわたる空調、照明、給湯などの運用によるCO2\displaystyle \mathrm{CO_2}排出が、設計・建設や廃棄の段階より大きな割合を占めるのが一般的です。建設時はコンクリートや鉄鋼の製造、運搬、工事で一度に多くの排出がありますが、運用時には毎年の排出が数十年にわたって積み重なります。
例えば理解のために、建設・廃棄などの合計を2,000 t、運用を毎年100 tと仮定すると、50年の運用は100×50=5,000\displaystyle 100\times50=5{,}000 tです。合計7,000 tのうち運用が約71%になります。この数字は本問の建物の実測値ではなく、年ごとの量と一生分の量を比べる仕組みを示す例です。
ただし、すべての建物でこの割合が固定されるわけではありません。高い省エネルギー性能、電力の低炭素化、短い使用年数などで運用分が小さくなると、材料製造や建設などの割合は相対的に大きくなります。本問では「一般的な事務所ビル」という出題条件で大小を判断し、運用削減と建設段階の削減の両方が必要だと理解します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。出題時のeマークは、建物が省エネルギー基準に適合すると所管行政庁から認定を受けたことを示す表示です。建物の所有者が申請し、認定された建物やその広告などに表示する仕組みでした。自分で省エネだと思えば自由に付けられる一般的な環境マークではありません。また基準への適合を示すことと、省エネ性能が何段階でどれほど優れるかを評価することは別です。制度改正後の表示とは分け、令和2年度の制度として理解します。

選択肢2

(2)適当です。LEEDは建物や敷地の環境性能を複数の分野から評価する仕組みです。必要な前提条件を満たしたうえでポイントを取得し、その合計に応じてCertified、Silver、Gold、Platinumの4段階の認証レベルが決まります。エネルギーだけでなく、水、材料、室内環境なども扱うのが特徴です。単一の省エネ計算値だけで順位を付ける制度ではありません。点数の基準や評価対象は適用する版や評価システムも確認します。

選択肢3

(3)適当です。PAL*は、外壁や窓などの外皮の影響を受けやすい建物周辺部の年間熱負荷を、対象床面積当たりで表す指標です。熱負荷は、室内条件を保つために空調で取り除いたり加えたりする必要がある熱の量です。同じ評価条件なら値が小さいほど外皮による空調負担が小さく、熱性能が高いと判断します。電気代や冷凍機の効率そのものを表す値ではなく、外皮が生じさせる負担の指標である点を区別します。

選択肢4

(4)不適当です。一般的な事務所では、建物を長く使う間の空調や照明などによる排出が積み重なり、運用段階が大きな割合を占めます。建設が大工事だから必ず建設段階が最大、と見た目で判断しないようにします。比較には運用一年分ではなく、評価する使用期間全体を含めます。ただし高性能な建物などでは比率が変わり得るため、運用以外が常に無視できるという結論にはなりません。設問は一般的な大小関係を逆にした点が誤りです。

周辺知識

ライフサイクルとは、資材の調達や製造、建設、使用、修繕・更新、解体・処理までの一生です。その全体の環境負荷を評価するのがライフサイクルアセスメントで、二酸化炭素などの排出に着目したものがライフサイクルカーボンです。建物の使用中に電気を節約するだけでなく、材料を長く使う、交換回数を減らす、製造時の排出が小さい材料を選ぶことも関係します。
比率を見る際は、分母にも注意します。運用排出を半減させると、建設時の排出量が変わらなくても、その割合は上がります。建設の割合が高くなったから建設の実排出が増えた、とは限りません。総量と内訳の割合を分けて比較します。
また、基準適合の表示、複数分野の総合評価、外皮の熱負荷指標、一生分の排出量は、それぞれ評価の対象が違います。eマーク、LEED、PAL*、ライフサイクルCO2\displaystyle \mathrm{CO_2}を同じ「環境性能の点数」として混ぜないことが重要です。何を対象に、どの期間と条件で、何の単位で測るのかを確認すれば、評価結果が示す範囲と限界を説明できます。