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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問15

問題・正答・学習用解説

問題

排水通気設備の通気方式に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    各個通気方式は、各衛生器具のトラップごとに取り出した通気管を通気横枝管に接続し、その端部を通気立て管等に接続する方式であり、自己サイホン作用の防止に有効である。
  2. (2)
    ループ通気方式は、2 個以上のトラップを保護するために用いられる方式であり、ループ通気管を排水横枝管に接続される最高位の衛生器具のあふれ縁よりも高く立ち上げて、通気立て管にその端部を接続する。
  3. (3)
    伸頂通気方式は、通気立て管を設けず、排水立て管の頂上に設置した伸頂通気管を用いて通気を行う方式であり、一般に、各個通気方式やループ通気方式に比べて許容流量値が大きい。
  4. (4)
    通気弁方式は、通気管端部に通気弁を設置する方式であり、通気弁は、通気管内が負圧になると弁が開いて空気を吸引し、排水負荷がないときや通気管内が正圧になるときは弁が閉じる機構を有している。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は(3)です。伸頂通気方式は、排水立て管を上へ延ばして空気の出入口を設ける比較的簡単な方式ですが、一般に各個通気やループ通気より許容流量が大きいわけではありません。別の通気経路が少ないため、排水によって生じる管内の圧力変動を抑える能力が限られ、一般的な比較では許容流量は小さくなります。
排水管を水が流れると、その周囲の空気も引きずられたり押されたりします。管内が負圧になると器具のトラップにたまった水が吸い出され、正圧になると押し戻されることがあります。この封水が失われると、下水の臭気などが室内へ入る経路ができてしまいます。通気は、水を排出するだけでなく、この圧力を適切な範囲に保つための空気の道です。
各個通気は器具ごとに、ループ通気は複数器具の排水横枝管に通気経路を設け、器具近くの圧力変動を緩和します。伸頂通気では頂部まで空気を通すため、その経路の抵抗や排水の影響を受けます。配管が簡単であることと、より大量の排水に対応できることを同一視しないようにしましょう。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。各個通気は、それぞれの器具のトラップ近くから通気管を取り出す方式です。器具から一度に排水すると、流れの勢いでトラップの水まで後へ引っ張られる自己サイホン作用が起こり得ます。近くから空気を補給できれば負圧が大きくなりにくく、封水を保護できます。ストローで水を吸うときに途中から空気が入ると吸い上げが弱まるのと似た面がありますが、実際の管では流量と通気抵抗を含めて設計します。

選択肢2

(2)適当です。ループ通気は、複数の器具が接続する排水横枝管に通気管を設け、まとめてトラップを保護します。通気管を器具のあふれ縁より高く立ち上げてから通気立て管へつなぐのは、排水があふれる状況でも汚水が通気経路へ流入しにくくするためです。あふれ縁は、洗面器などに水がたまったとき外へこぼれる縁の高さです。単に器具の排水口より上であればよいのではなく、最高位の器具を基準にします。

選択肢3

(3)不適当です。伸頂通気は排水立て管の頂部を開放する通気経路に頼るため、器具近くに別の空気の道を設ける方式より圧力変動を抑える余裕が小さく、一般に許容流量は小さくなります。「管が太くまっすぐ上まで通じるから大量に流せる」とだけ考えてはいけません。流下する水が空気の動きにも影響するからです。特殊継手を使う排水システムなどは別途性能に基づいて扱い、一般方式の比較に無条件で混ぜません。

選択肢4

(4)適当です。通気弁は、管内が負圧になったとき外の空気を吸い入れる弁です。排水がなく圧力差がないときや、管内が正圧になったときは閉じ、臭気を外へ出しにくくします。したがって負圧の緩和には役立ちますが、正圧の空気を外へ逃がす出口にはなりません。負圧と正圧の両方を同じように解消する装置だと覚えると誤りです。設置する管路でどちらの圧力が生じるかと、点検できる位置かを確認します。

周辺知識

トラップは、曲がった排水経路などに水を残し、その水で空気の通路をふさぐ装置です。この残った水が封水です。便所や流しの臭気を防ぐために重要ですが、排水の圧力変動以外にも、長期間使わないことによる蒸発などで減る場合があります。通気管があればすべての封水切れを防げるわけではありません。
自己サイホン作用は、その器具自身の排水によって封水が引かれる現象です。他の器具の大量排水で管内が負圧になり、影響を受ける場合もあります。さらに下層部などで空気が圧縮されると、封水を室内側へ押す作用も生じます。だから排水管は水だけが流れる管ではなく、水と空気が一緒に動く系として考えます。
通気の方式選定では、保護する器具数、排水流量、管径、横管の長さや立て管の高さ、配管スペースなどを比較します。空気の道を増やすと圧力を安定させやすくなりますが、配管や工事は増えます。簡単な方式を選べばよいのでも、複雑にすれば必ずよいのでもなく、予定した排水負荷で封水を守れることを確認するのが目的です。