学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問11
問題・正答・学習用解説
問題
COP(成績係数)等、空気調和設備に使用される熱源のエネルギー効率に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。遠心冷凍機は、冷媒を圧縮する仕事によって、冷水から取り出した熱を冷却水側へ移します。冷水出口温度を必要以上に低くすると、より低温の場所から熱をくみ上げる必要があり、圧縮機の負担が増えます。逆に冷水出口温度を高くできれば、熱を移す温度差が小さくなり、一般にCOPは高くなります。
COPは、得られた冷却能力を投入したエネルギーの速さで割った値です。例えば100 kWの冷却に20 kWの電力を使えばCOPは5、同じ冷却を16 kWで行えれば6.25です。値が大きい方が、少ない入力で同じ熱を移せます。冷凍機は電気をすべて冷たさへ変えているのではなく、電気を使って熱を移動させるため、COPが1を超えてもエネルギー保存に反しません。
ただし出口温度は自由に高くできるわけではありません。室内を十分冷やせるか、空調機で必要な除湿ができるかを満たす範囲で調整します。機器単体の効率改善と、建物の空調目的を達成できる条件とを両方確認することが重要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。井水の温度は外気ほど季節で大きく変わらないため、夏は暑い外気より冷たい水へ熱を捨てられ、冬は寒い外気より暖かい水から熱を取り出せます。熱を移す温度差が小さくなるので、一般に空気熱源よりCOPが高くなります。ただし井戸から水をくみ上げるポンプの電力や水処理も必要です。ヒートポンプ本体のCOPが高いことだけで、井水利用システム全体の年間消費が必ず小さいと断定しないようにします。
選択肢2
(2)適当です。定格条件は、決められた温度や能力で機器の性能を比較する条件です。しかし建物では、夏のピーク以外は必要な冷房能力が最大能力より小さい時間が多くあります。この部分負荷で効率が良いかが年間消費に大きく影響します。例えば最大能力の半分で長時間運転する建物なら、その条件のCOPも重要です。最大時の数字だけで選ばず、建物の負荷の出方と機器の性能曲線を対応させて評価します。
選択肢3
(3)適当です。水蓄熱槽は、あらかじめ冷水などに熱的なエネルギーを蓄え、必要な時に使う設備です。負荷の小さい時間帯にも熱源をまとまった能力で運転でき、頻繁な発停や非効率な小負荷運転を減らせる場合があります。ポンプなどの補機も含めて適切に運転すれば、システムの効率改善につながります。ただし槽からの熱損失や追加の搬送動力もあるので、槽を設けるだけで必ず省エネルギーになるという意味ではありません。
選択肢4
(4)不適当です。冷水出口温度を上げると、冷媒が蒸発して熱を受け取る側の温度も高くでき、熱を捨てる側までの温度差が小さくなります。そのため圧縮機が必要とする仕事が減り、一般にCOPは上がります。記述はこの方向が逆です。冷房だから水は低温ほど優れている、と考えないようにしましょう。必要な室温と湿度を確保したうえで、過剰に冷たい水を作らないことが省エネルギーの基本になります。
周辺知識
冷凍機の中では、冷媒が低温側で蒸発して熱を受け取り、圧縮機によって高い圧力と温度になり、高温側で凝縮して熱を放出します。低い所の水を高い所へポンプでくみ上げる例と同様に、温度の隔たりが大きいほど負担が増えると考えられます。ただし実際の冷凍サイクルは相変化と圧縮を伴うので、水の高さだけの例で細部まで表せるわけではありません。
省エネルギーでは評価の範囲も大切です。冷凍機のCOPが良くても、冷水を大量に送るポンプや冷却塔のファンが多くの電力を使えば、システム全体の効率は低下します。冷水の往きと戻りの温度差を確保して流量を減らす、必要に応じてポンプの回転数を下げる、といった搬送側の工夫も関係します。
また蓄熱による電力のピーク低減と、年間のエネルギー削減は同じではありません。昼の電力を夜へ移せばピークは下がりますが、損失が大きければ総量が増える可能性もあります。機器単体、補機を含むシステム、年間運用という三つの範囲を分けて比較しましょう。