学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問6
問題・正答・学習用解説
問題
日照・日射・採光に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は(3)です。昼光率は、室内のある点に届く天空光による照度を、屋外の遮る物がない場所の全天空照度で割った割合です。窓の外に建物や樹木があれば、窓から見える空が減り、室内へ入る光も変わります。室の中央であっても、その影響がなくなるわけではありません。
式は次のとおりです。
は昼光率%、は室内の点の照度、は屋外の全天空照度で、照度の単位はいずれもlxです。例えば lxのとき室内が100 lxなら昼光率は2%です。窓外の建物に空が遮られ、室内が50 lxに下がれば1%になります。白い建物が反射する光もあるため、遮蔽物の影響は単に暗くなるだけでなく、位置や表面の反射率にも左右されます。
「同じ室内点なら昼光率が一定」という説明は、窓の形、周囲の障害物、内装などの条件と、天空の輝度分布を固定して考える場合のことです。周囲に建物が建つなど光の経路自体が変化した条件まで、一定と扱うことはできません。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。昼光だけで最低限の明るさを確保したいなら、明るい晴れの日だけを基準にすると、暗い日に不足します。そこで比較的暗い条件を表す全天空照度5,000 lxを設計の目安とします。昼光率2%の点なら lxです。これはどんな時刻や天候でも屋外が5,000 lx以上になる保証ではありません。非常に暗い雷雲の下などでは下回るため、目的に応じて人工照明も組み合わせます。
選択肢2
(2)適当です。頂側窓は、建物の高い部分に設ける、鉛直またはそれに近い窓です。天井面に寝かせる天窓とは向きが違います。日本のような北半球の中緯度で北側へ向けると、南面の窓ほど強い直射日光の影響を受けず、天空からの拡散光を取り入れやすくなります。そのため作業場や展示空間などで安定した採光に役立ちます。北側でも季節や早朝・夕方には直射が入り得るので、常に完全無変動という意味ではありません。
選択肢3
(3)不適当です。室内中央に届く光にも、窓から直接入る天空光、屋外の建物や地面で反射した光、室内の壁や天井で反射した光が含まれます。外の建築物や樹木はこれらの量を変えるので、昼光率も変わります。「窓際だけが遮蔽物の影響を受ける」と考えてはいけません。教室の窓の外に別棟が建つと、中央の机まで暗くなることを想像すると、窓から離れていても外部条件が関係する理由が分かります。
選択肢4
(4)適当です。天空日射は、太陽光が大気中で散乱され、空の各方向から地表に届く成分です。大気透過率が大きい、つまり空気が透明なほど、途中で散乱されずに太陽から直接届く割合が増えます。そのため一般的な比較では水平面天空日射量は小さくなる方向です。これを全天日射量も必ず減ると読み替えてはいけません。全天日射は直達成分と天空成分の合計なので、散乱分の減少と直達分の増加を分けて考えます。
周辺知識
日照、日射、採光は似ていますが、見ているものが異なります。日照は直射日光が当たることやその時間、日射は太陽からの放射エネルギー、採光は室内に自然光を取り入れて見やすさを確保することです。日射の強さは、見え方に関係する照度はlxで表します。同じ窓でも、冬の受熱に有効か、机が明るいか、まぶしくないかは別々に検討します。
昼光率は直射日光を除く天空光に着目するので、室内の一点に直射が当たる一時的な明るさをそのまま設計の基準にしません。また、同じ窓面積でも窓が高い位置にあると室内の奥へ光が届きやすく、天井や壁が明るい仕上げなら反射光を利用できます。
ただし照度を大きくするだけで良い採光とは限りません。窓際だけが極端に明るいと、室内との輝度差でまぶしさが生じ、画面も見づらくなります。窓外の障害物、窓の高さ、方位、内装の反射率を合わせて考え、必要な明るさを室内にどう分配するかが採光計画です。