学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問4
問題・正答・学習用解説
問題
図- 1 のA~Dに示すような熱性能(熱容量と断熱性能)を有する建築物について、室内空間の暖房開始前から暖房停止後までの室温変動を、図- 2 のイ~ニとして模式的に示している。A~Dとイ~ニとの組合せとして、最も適当なものは、次のうちどれか。ただし、A~Dの室形状・暖房時間・発熱量は同一であり、AとC、BとDの断熱性能は同一であるものとする。
| A | B | C | D | |
|---|---|---|---|---|
| 1. | ハ | ロ | ニ | イ |
| 2. | ハ | イ | ニ | ロ |
| 3. | ニ | イ | ハ | ロ |
| 4. | ニ | ロ | ハ | イ |
選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)で、、、、です。図は「熱容量」と「断熱性能」という二つの性質を分けて読む問題です。熱容量が小さい建物は、同じ熱を加えたとき温度が早く上がります。熱容量が大きい建物は、壁などを温めるのにも多くの熱が必要で、室温の上昇が緩やかです。一方、断熱性能が高ければ、加えた熱が外へ逃げにくく、より大きな温度上昇につながります。
まずAとCは同じ低い断熱性能です。その中で熱容量が小さいAは、急に上がって低めの高さで落ち着くハ、大きいCは緩やかで上昇も小さいニに対応します。次にBとDは高い断熱性能です。熱容量が小さいBが素早く高くなるイ、大きいDがゆっくり高くなるロです。暖房停止後も、容量の小さいA・Bは早く変化し、容量の大きいC・Dは蓄えた熱を放出しながら緩やかに変化しています。最高温度だけを見るのではなく、立上がりと停止後の曲線の形も組み合わせて判断します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。とは合っていますが、BとDが逆です。Bは高断熱でも熱容量が小さいので、壁などに大量の熱を蓄えるまで待つ必要がなく、室温が素早く上がるイです。Dは同じ高断熱でも熱容量が大きく、温まる過程が緩やかなロになります。高断熱という共通点だけでは二つを区別できません。断熱は逃げる熱、熱容量は温度上昇に必要な熱を左右する、と分けて読み取ります。
選択肢2
(2)適当です。低断熱のA・Cには温度上昇が小さいハ・ニを、高断熱のB・Dには大きいイ・ロを対応させます。そのうえで、A・Bは小熱容量なので急な立上がり、C・Dは大熱容量なので緩やかな立上がりを選びます。すると、、、になります。停止後の冷え方もこの組合せと整合します。図の二つの条件を順に適用すれば、四つの曲線を印象だけで覚える必要はありません。
選択肢3
(3)不適当です。とは合っていますが、AとCの対応が逆です。AとCは断熱性能が同じなので、両者の違いは熱容量に注目します。容量が小さいAは、同じ暖房の熱で温度が早く上がるハです。容量が大きいCは、より多くの熱を受け取らないと温度が上がらず、ニになります。「コンクリートのように重い材料は暖かさを蓄える」ことと、「暖房開始直後から早く暖まる」ことは同じではありません。
選択肢4
(4)不適当です。AとC、BとDの双方で熱容量による立上がりの違いを逆にしています。小熱容量のA・Bが緩やかなニ・ロに、大熱容量のC・Dが急なハ・イに対応してしまいます。熱容量は、温度を1 K上げるために必要な熱量なので、大きいほど同じ暖房能力に対して温度変化が遅くなります。保温しやすさだけで判断せず、暖房開始直後に投入熱が空気や壁の温度上昇へどう使われるかを考えます。
周辺知識
建物を単純化すると、暖房の熱は「建物に蓄えられる分」と「外へ逃げる分」に分かれます。室温を、外気温を、暖房能力を、熱容量を、熱の逃げやすさをとすると、次の式で表せます。
左辺は蓄熱の速さ、右辺は暖房からの供給と放熱の差です。式を解かなくても、同じ差し引きの熱に対してが大きければ温度変化が遅いと読めます。
十分長く暖房して温度が落ち着くと、蓄熱の増加は止まり、になります。したがって定常時の温度差はで、断熱を良くしてを小さくするほど大きくなります。ただし本問は暖房時間が限られており、大熱容量の建物がその温度に達するとは限りません。
小鍋と大鍋の温まり方が違うのは熱容量の違い、鍋を保温材で包んで熱を逃がしにくくするのは断熱の効果です。この例は両者の区別に役立ちますが、実際の建物では日射や換気、家具も室温変動へ影響します。