学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問3
問題・正答・学習用解説
問題
室内の湿り空気に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。ただし、対象とする湿り空気は1 気圧とし、また、室内は無風状態とする。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。相対湿度を保ったまま空気の温度を上げるには、加熱に加えて加湿が必要です。除湿すると、保ちたい相対湿度からさらに遠ざかります。相対湿度は、水蒸気が実際にどれだけあるかだけでなく、その温度で飽和する水蒸気圧に対する割合です。温度が高いほど飽和水蒸気圧が大きくなるため、同じ割合を保つには実際の水蒸気も増やす必要があります。
相対湿度は、次の式で表せます。
が実際の水蒸気分圧、が温度での飽和水蒸気圧です。例えば20℃の飽和水蒸気圧を約2.34 kPaとすると、50%の空気は約1.17 kPaです。30℃では飽和値が約4.24 kPaなので、50%にするには約2.12 kPaが必要になります。温度だけを上げてもこの水蒸気は供給されません。冬の室内が暖房で乾燥しやすいことを思い浮かべ、相対湿度を維持する操作が「加熱と加湿」であると結び付けましょう。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。相対湿度50%は、水蒸気が一定の重さだけあるという意味ではありません。その温度の飽和状態の半分という意味です。例えば1立方メートル中の飽和水蒸気量は20℃で約17.3 g、30℃で約30.4 gなので、50%ならそれぞれ約8.7 g、約15.2 gです。同じ50%でも暖かい方に多くの水蒸気が含まれます。相対湿度という割合と、単位体積当たりの水蒸気の質量を区別する必要があります。
選択肢2
(2)適当です。露点温度は、その空気を水蒸気量を変えずに冷やしたとき、飽和して結露が始まる温度です。同じ乾球温度で相対湿度が低い空気は、水蒸気分圧が低いので、より低い温度まで冷やさないと飽和しません。したがって露点温度も低くなります。乾いた冬の空気では少し冷たい窓に水滴が付かず、加湿した部屋では同じ窓に結露する、と考えると分かります。窓の温度だけで結露の有無は決まりません。
選択肢3
(3)適当です。乾球温度は普通の温度計が示す温度です。湿球温度は、湿らせた感温部から水が蒸発するときの冷却を利用して得る温度で、乾いた空気ほど乾球温度との差が大きくなります。気圧と測定条件が分かれば、この二つから湿り空気線図や関係式で水蒸気分圧と相対湿度を求められます。問題の1気圧という指定はその状態を定める条件です。室内の無風と、温度計の測定に必要な条件も区別します。
選択肢4
(4)不適当です。温度を上げると飽和水蒸気圧が増えるので、水蒸気を足さない加熱では相対湿度が下がります。さらに除湿すれば分子側の実際の水蒸気分圧も減り、相対湿度は一層下がります。一定にしたいなら、水蒸気を供給して分子も増やす必要があります。「暑くすると蒸し暑くなるから除湿する」と感覚だけで判断してはいけません。温度上昇と湿度一定という二つの指定を同時に満たす操作は加熱と加湿です。
周辺知識
湿り空気は、乾いた空気と気体の水が混ざったものです。見える白い湯気は細かい液体の水滴で、水蒸気自体は目に見えません。水蒸気分圧は混合気体の圧力のうち水蒸気が担当する部分で、乾燥空気の圧力とは分けて扱います。
湿度には複数の尺度があります。相対湿度は飽和に対する割合、絶対湿度は建築の空気調和では一般に乾燥空気1 kg当たりの水蒸気質量を指します。日常の気象説明で使われる1立方メートル当たりの水蒸気量とは単位が違います。「湿度が同じ」と言われたら、どの尺度かを確かめましょう。
結露対策では、窓の表面温度を露点より高く保つか、室内の水蒸気を減らして露点を下げます。例えば窓を断熱する対策と、換気で水蒸気を排出する対策は、結露を抑える仕組みが異なります。暖房は室温を上げますが、水蒸気を必ず除去する装置ではありません。本問のように温度、水蒸気量、相対湿度、露点を一つずつ分けると、暖房・加湿・除湿の効果を説明できます。